静 個撮

Shyrock作



第6話「シズヤード」

(ルールって、この人たち、私をどうするつもりなのかしら? 私、玩具じゃないよぉ……)

 三好は慣れた口調で司会を演じ、場を仕切っている。
 目隠しをされているため状況を把握できない静は、おのずと三好の言葉に耳を集中させていた。

「今夜は皆さんにビリヤードを楽しんでいただこうと思っています」
「なに? ビリヤードだって? 俺たちはゲームをしに来たんじゃないぞ」
「ビリヤードならこんな秘密クラブでなくても、巷に出ればできるじゃないか」

 不満の声が三好に注がれる。
 しかし三好は平然とした表情で言葉を続けた。

「まあまあ、皆さん。話を最後まで聞いてください。ビリヤードは四つ球のコンチネンタル式ではなく、六ヵ所の穴を用いるポケットビリヤードで行ないます。ただし、ビリヤードと言ってもただのビリヤードではありません。あえて名前を付けるなら『シズヤード』とでも呼べばよいでしょうか」
「シズヤード……? なんだ? それは」
「今日のゲストの静と関係あるのか?」
「はい、もちろんです。大いに関係があります。でなければ皆様から高い会費を頂戴する意味がありませんからね。ふふふ」

 三好は自信たっぷりによどみなく語りつづける。

「ルールですがとても簡単です。皆様には1回だけ球を突いてもらいます。白球(手玉)を突いて、1番ボールを当てるのは普通のルールと全く変わりません」
「ふむふむ、なるほど。それで?」

 男たちは興味深げに三好の言葉に耳を傾けている。

「でもここから先が違います。普通なら6箇所あるポケットに1番を含むいずれかの的球(まとだま)を入れると得点になるのですが、今回は入れる必要がありません」
「はて……? ポケットビリヤードなのに、ポケットに入れないとはどういうことかな?」
「標的はポケットではなくて、ここにいる静ちゃんになります」
「なんだって?」
「ほほう~、面白そうじゃないか」
「それはどういうことかね?」
「まもなく静ちゃんは大開脚でビリヤード台上に座ります。そして股間から1センチ離れた場所にバイブレーターがセットされます。皆様は通常のビリヤードと同じように、キューで白球を打ち、1番球を当ててください。そして1番球もしくは他の的球で、静ちゃんの股間にセットされたバイブを当てていただくだけでOKです。バイブレーターはボールが当たると静ちゃんの大切な箇所に密着し、自動的にスイッチが作動する仕掛けになっています。最も大きな数字をバイブに当てた方が優勝です。その次に大きな番号の方が準優勝となります。上位2名には、後ほどお楽しみのイベントが待っています。静ちゃんをより多く感じさせた方が優勝ということになるわけです」

 次の瞬間、男たちからは歓声が上がったが、一方で三好の説明を聞いていた静は血相を変えて抗議した。

「冗談じゃないわぁ! 私を玩具にしないで! いやよぉ~! やめてぇ~!」
「ふふふ、それは無理な注文だね。あまり騒ぐと口も塞ぐことになるがいいかな?」
「……」
「ふふふ、ではビリヤード台まで移動してもらおうか」

 三好は静の自由を奪っている拘束具を解きにかかった。しかしアイマスクは依然装着されたままだ。
 手足の拘束を解かれた静ではあったが、簡易ベッドの上で呆然としている。

「ねぇ、ここはどこなの?」
「そうか、静ちゃんはずっとオネンネしてたから分からなくて当然だよね。ここは来月取り壊し予定の古びたビルの地下なんだよ。ここにいるある会員さんが実はこのビルのオーナーさんでね、解体工事まで誰も近づかないからということで場所を提供してもらったんだよ。だから静ちゃんが大声を出しても外に漏れることはないので、とても安全な場所なんだよ」
「そ、そんなことろに私を……! ここは市内なの!?」
「おおっと、それは言えないね。それより皆さんがお待ちだ。ぼちぼち支度をしてもらおうか」
「いやっ!」

 簡易ベッドから静を下ろそうと三好が静の腕をつかんだとき、静は猛然と振り払った。

「ふうむ、反抗的な態度だと損をするよ。今の静ちゃんは拒否なんてできる立場じゃないんだよ。さあ……」

 口調は穏やかだが、言葉の奥に静を威圧する鋭利な刃物のようなものがある。
 三好の手を借りてようやくベッドから下りた静に、アシスタントの山根が果物ナイフを持って近づいて来た。
 そして静の頬にナイフをペタペタと宛がいながらささやく。

「静さん、これがなんだか分かるわね? そう、ナイフよ。うふふ、そんなにビビらなくてもいいのよ。あなたに危害を加えるつもりはないからね。今から洋服を脱いでもらうのでちょっとの間だけじっとしててね。動くと怪我をするわよ、いいわね」
 
 衣を切り裂く音がする。
 静の悲鳴がとどろいた。

「きゃぁ~~~!」

 静が着ていた半袖のニットは、山根の果物ナイスで胸の辺りから真下に向かって一気に切り裂かれた。
 哀れな布切れと化したニットの衣服が床にパラリと落ちる。
 目前に現われたのは、量感のある乳房を包みこむ白のハーフカップブラジャーであった。
 スリムな体型からは想像もできないほどに見事な乳房。
 場内からは思わず称賛する声と野卑な歓声が飛び交った。

 静は顔を紅潮させうつむいていた。
 かすかに震えているのが分かる。
 山根は冷ややかな微笑を浮かべて、ミニのプリーツスカートに果物ナイフを宛がった。




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