Shyrock 作

官能小説『ありさの面接』




野々宮ありさ




第1話「3701号室」

 午後7時、ありさ(20歳)は心をときめかせ、ヒ〇トンホテルの3701号室に向かっていた。
 真っ白なニット、真っ白なスカート、そして洋服に合わせて真っ白なハイヒールと言ういでたちで。
 ありさの身長は162cmだが、ヒールのせいで170cmは優に超えていた。
 37階でエレベーターを降りて、長い廊下を歩く。
 静寂の中、廊下に響くヒールの足音が心地よく感じられた。

 ありさは車井俊介とメールを始めてかれこれ半年が経つ。
 車井は芸能プロデューサーであるかたわら趣味で官能小説を書いていた。
 そんな車井の官能小説に魅せられて、いつしか毎日のようにサイトに通うようになっていた。 
 そして刺激的な小説を読むたびに、「うわぁ、すごい」と胸を弾ませた。
 小説のヒロインを自分を置き換えて、時々ショーツの中を弄ることもあった。
 びっしょり濡れてしまったショーツを、入浴まで待てずに穿き替えることも度々あった。

 恋愛や仕事の悩み事も相談することも多々あり、メールを交わす頻度も日増しに増えていった。
 ただ車井の仕事の繁忙期は、数日メールが来ないこともあった。

 ある日、車井がありさ写真を欲しいと言ってきた。
 ありさは雑誌モデルをしていたこともあって、自撮り画像ではなく雑誌掲載時に使用されなかった画像から数枚選んだ。
 CMやリースポジ用に使われなかった写真といっても、著作権が事務所にあるので事務所の了解を得て送ることにした。
 ありさが送った写真は車井を大いに喜ばせ、早速サイトで紹介された。
 ブログ経験がないありさにとって、雑誌以外で自身の画像が公開されるのは初めてであった。
 ありさは掲載されたことを歓喜し感動すら覚えた。

 そんな折り車井がありさに会いたいと言ってきた。
 とは言っても交際目的ではなかった。
 ありさが常々メールに「将来女優になりたい」と夢を語っていたため、車井が一度面接をしたいと言ってきたのだ。
 ありさの胸はときめいた。
 千載一遇のチャンスである。もしかしたら夢が実現するかも知れない。
 しかしその反面「そんなに甘くはないだろうな」と夢路をさまようことなく足元をしっかり見つめていた。
 結果が駄目であってもチャレンジするべきであろう。
 
 ありさは車井に面接してもらえることを心から感謝した。
 車井としても、半年間ありさとメールを交わしてみて、外見の美しさ可愛さはもとより、天真爛漫で物怖じしない性格、それに個性的なキャラクターは芸能界向きだと感じていた。
 もちろん車井自身の個人的な感情としても、ありさに「一度会ってみたい女性」と思っていたことは確かであった。
 ふたりの想いが結果的に『面接』と言う形で、まもなく実現しようとしていた。

◇◇◇

 一歩一歩と車井が待つ部屋に近づいていく。
 ありさは、胸の高鳴りと震えを押さえることができなかった。

(ドキドキするなあ。どんな人なんだろう。エッチで面白い人、それに大人の男……興味あるなあ)

 ホテルの一室で会う……というシチュエーションも、ありさにとってはスリリングでありとても刺激的であった。

(もしかしたらエッチしちゃうことになるかも。でも面接だからそんなことにはならないかな?)

 この期に及んで葛藤があった。
 だけど、ためらいではない。

(エッチな男なんていっぱいといる。でも車井さんはどこか違うんだ。私に何かを期待させるものを持っている。それって何だろう……?よく分からないけど、とにかく会いたい。会ってどんな人かこの目で確かめてみたい……)

 3701号室の前に立ち、ありさは大きく息を吸い込むと、意を決したようにドアをノックした。
 するとまもなくドアが開き、黒いニットの男性が「いらっしゃい」と微笑みかけた。
 
(うわっ、いい感じの人!)

 想像していたより若くてハンサムだったので、ありさに緊張が走った。

「ありさちゃんだね?」
「はい、野々宮ありさです……」
「どうぞ、中に入って」

 背は高くもなく低くもなく175センチぐらいだろうか。
 メールではクールな印象を持っていたが、会ってみると温かな印象を受けたありさであった。
 次の瞬間、ありさは直感的に「この人なら大丈夫」という安心感のようなものが芽生え、ためらうことなく部屋の中へと足を踏み入れた。
 部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、ありさはラグジュアリーな空間に特別な時間のはじまりを感じた。
 三面にとられた窓から新宿中央公園の緑を望むことができる。
 部屋は豪華なイタリア製のウォールラックやテーブルなど、ハイセンスで温かみのあるウッド調の家具が配されており、窓際にはリーディングチェアがさりげなく置かれていた。

「よく来たね」
「やっと車井さんに会えた!面接って言ってたからどこか会議室のような所だと思っていたの」
「ここなら落着いて話ができると思ってね」
「面接のためにこんな素敵な部屋を予約してくれるなんて!すごく嬉しい!」

 窓際のテーブルには、ありさのために用意された豪華な食器が並べられている。
 しばらくすると、タイミングを計ったかのようにウェイターがルームサービスを運んできた。

「えっ、私のために!?」
「そうだよ~」
「面接なのにこんなご馳走を用意してくれるなんて」
「面接といってもありさちゃんは特別だからね」
「そうなの?嬉しいなあ~」
「さあ、食べようか」



第2話「映画初出演は赤ふんで」

 ありさはカトラリーを使う手をしばしば止めて、話に夢中になっていた。
 恋愛のこと、仕事のこと、そして将来の夢……それらを熱心に語った。
 車井はにこやかな表情でありさの話を聞き取り、聞き終わった後一つ一つ丁寧に答えた。
 ときおり傾ける白ワインのせいでありさの頬がほのかに紅く染まっていく。

「ところでありさちゃん。君は本当に魅力的な子だね」
「そんなぁ……面と向かってそんなこと言われると照れちゃいます」
「いまさら敬語を使わなくていいよ。いつもどおりため口でいいから」
「は~い」
「メールやSNSとは勝手が違うかな?さて、じゃあ早速本題に入るとしようか。次に企画している映画にぜひありさちゃんに出演してもらいたいんだよ」
「きゃあ~、本当に? すごく嬉しいな~。でも今から面接……なんでしょ?」
「うん、ありさちゃんと半年間メールをしていたから、だいたい君のことは分かっているつもりだけど、やはり君の素顔が見たくてね」
「こんな私だけど出演できそう?」
「うん、きっといけると思うよ」
「嬉しいな~」
「でもね、最初ということもあって端役(はやく)なんだ。それでも構わないかな?」
「全然構わないよ~、出演できるだけで幸せ!本当に嬉しいな~。ねぇ、どんな映画なの?」
「うん、主役は沢谷エリカさんなんだ。昭和15年頃を舞台にした作品なんだけど、ちょっとエッチな場面があるんだ。大丈夫かな?」
「えっ?エッチな場面……? うん、出演できるなら何でもやってみたい! ぜひ、ぜひ出演させてください。ちょっとくらいエッチな場面でも私きっとやってみせます!」
「おお、それはよかった。ぜひありさちゃんにお願いしたい。脚本に出てくる女性って君と瓜二つなんだよ。脚本を読んでありさちゃんが浮かんだぐらいだよ」
「そんなに似てるんだ! ありさすっごく幸せ~! 今夜、車井さんに私を捧げる~!」
「そんな嬉しいことをいうのか~!? でも仕事の話が先だよ。そっちの話はまた後で」
「きゃぁ~!ありさ、後から車井さんにエッチされてしまうの~? うれしい~!」
「おいおい、仕事、仕事。今回、ありさちゃんにとって一番大変なのはセリフよりもセックスシーンなんだ。それもふつうのベッドシーンとかじゃないんだ……」
「ええ!? ふつうのエッチじゃないってこと?」
「うん、昭和15年頃の話で、君は海女さん役で憲兵に捕まって拷問にかけられるシーンに出演するんだ……服は全部脱がされて……」
「全裸ってこと?」
「いや、全裸じゃない。でも、赤ふん姿で責められるんだ」
「赤ふん? 赤ふんってなあに?」
「赤ふんって知らない? 赤いふんどしのことなんだよ。ふんどしを見たことないかな?」
「白いふんどし姿の男の人ならお祭りで見たことあるけど……恥ずかしいなあ……で、赤ふん締めてどんなことをされるの?」
「彼氏に思想的な疑いがかかって、ありさちゃんは赤ふん姿で憲兵に拷問を受けるんだ。もちろん演技の上のことだけどね。どうかな? 気が進まなければ無理することないよ。次の作品まで待つこともできるから」
「赤ふんってパンツ姿よりもエロい感じだなあ……パンツじゃだめなの?」
「うん、海女さんだからねえ……」

 ありさはしばらく考え込んでいたが、まもなく沈黙を破るようにきっぱりと言い放った。

「分かりました! ぜひ私を使ってください! 何でもチャレンジしなくっちゃね~!」
「おお!引き受けてくれるか! それはよかった! ぜひ頼むよ。かなり大胆さが要求される役柄だけど、その分、注目を浴びること間違いなしだよ。演技次第で、もしかしたら一躍スターダムにのし上るかも知れないからね」
「うん!私がんばる!でもひとつだけ心配なことが……」
「心配なこと?」
「本当に相手の男優さんとエッチしなくてもいいのね?」
「もちろんだよ、AVじゃないんだから。ただしセックスはしないけど、赤ふんの上から憲兵役の男優さんに指でいじられるシーンがあるんだ。だけど、その場面がどうしても嫌なら、今回は見送ってもいいんだよ。次回またチャンスがあると思うので」
「車井さん……私、やります。どんな女優さんでも最初は体当たり演技を経験しているもの……」
「えらい!よく言った、ありさちゃん。あ、食事が冷めちゃうから食べながら話をしようか」
「うん!話に夢中になって食べるのを忘れてたよ~」

 野々宮ありさ……20歳。ハッとするような大人の色香を漂わせながらも、時折垣間見える子供っぽい無邪気さがとても初々しい。
 もしかしたら、このアンバランスさがありさの魅力の一つなのかも知れない、と車井は思った。






第3話「ふんどし締めると女の子は」

 食事中はありさが現在填まっているインスタグラムの話題で盛りあがっていた。

「ありさちゃんのインスタ見たけど結構自然体で撮ってるね」
「うん、し始めた頃はインスタ映えを意識してたし、ときどき盛ったりしたけど、ある時からふつうに撮りたくなっちゃったの」
「そりゃ毎日『映え』な物ばかり撮ってると、だんだんネタも尽きてくるからね」
「そうそう。それにランチだって『映え』ばかり狙っていると高くついちゃって。コンビニ弁当で済ませたいときもあるしね」
「そりゃそうだ。僕だって忙しいときはコンビニでおにぎりって場合もある」
「車井さんがコンビニのおにぎり? 信じれないな~、もっと贅沢してると思ってた」
「贅沢なんかしてないよ。今日はありさちゃんが来るから奮発したけど、ふだんはもっと質素だぞ~」
「えっ、そうなの? 私のために……? 嬉しいな~、ありがとう、車井さん」
「どういたしまして。ところで映画の話題に戻るけど」
「はい!」

 ありさは待ってましたとばかり、爛々と瞳を輝かせて声高らかに返事をした。

「ありさちゃん、もし良かったら、今から赤ふんどしを締める練習をしてみない?」
「きゃっ! 赤ふんどしを? 持ってきてるの?」
「うん、撮影まであまり時間がないので、今から練習しておいた方がいいかなって思って、一応持ってきたんだ。でもここで締めるのが嫌だったら無理しなくていいよ」
「わ~い! 締める~! ありさ、締めてみる~! だって撮影のときに初めて締めるって不安だもの。ほかの人たちにも見られるんだったら、真っ先に車井さんに見せたいもの……」
「ありさちゃん、君っていじらしいことをいう子だね……」

 自分を慕ってくれるありさの健気な言葉に、車井は心を打たれた。
 ためらっても不思議ではないふんどし姿を、快諾してくれたありさの勇気が嬉しかった。
 男性も30代になれば、下着姿の女性を見ることなど別に珍しいことではなくなるが、さすがに赤ふんどし姿の女性を見る機会は一度もなかった。
 今日ありさが目の前でふんどし姿になる。
 車井の心は少年のように小躍りした。

 車井から映画デビューの話を聞かされたありさは、天にも昇るような歓喜で満たされた。

「車井さん、来る途中少し汗をかいたので、少しシャワーを浴びてきていいかな?」
「うん、いいよ」

◇◇◇

 ありさはシャワーを浴びると、身体にバスタオルを巻きつけて車井の前にはにかみながら現われた。

「でもやっぱり恥ずかしいな……」
「あれ? ありさちゃん、いつもブログに大胆なことを書いているのに、どうして恥ずかしがるの? オナして寝ようとか書いているくせに」
「だって目の前に車井さんがいるんだもん……」

 ネットでは大胆なありさだが、憧れの男を前にしてさすがにシリアスになっている。

「じゃあ、僕は目を閉じてようか?」
「でも車井さんが見てくれないと意味がないし……」

 うじうじと悩むありさに、車井が驚くべき手段に出た。

「まるでロダンの考える人というか、バスタオル姿の考える美少女だね。じゃあそのバスタオル取っちゃおうか~!」

 車井はありさに巻いているバスタオルを強引に剥いでしまった。

「や~~~~~ん!エッチ~~~~~!」

 ありさは生まれたままの姿に剥かれてしまったが、あまりに突然のことで口を開けて呆然としている。
 目前に現れたのはロダンの『考える人』ではなく、古代ギリシャのミロのヴィーナスのような美しい裸体であった。

「ほう、何と美々しい(びびしい)……」
「美々しい?」
「君の裸を見てすぐに思いついた言葉だよ。『可愛い』や『美しい』じゃなくて、『美々しい』。『美』の文字を2回繰り返すほどすごくきれいで、「美しい」のさらに上をいく美しさ。華やかで、きらびやかで、目が眩むほどのオーラを放ってる……」
「褒め過ぎだよ~、車井さん。でも嬉しいな~」
「これほどきれいな女の子にふんどし締めれるとはなんてラッキーなんだろう」
「ドキドキしてきたよ~」

 車井は和柄の箱から真赤な絹製の『赤ふんどし』を取り出した。

「へえ~、これが赤ふんどしなんだあ」

 広げるとT字型になっていて、細い横紐と長方形の布でできている。
 ありさは興味津々といった様子で見つめている。

「さあ、ありさちゃん、早速ふんどしを締めてみようか」
「う、うん……」

 微笑んではいるが、どことなく緊張しているのが分かる。
 車井はふんどしの紐と布が引っ付いている箇所をありさの尻にあてた。布を股の下からくぐらせて、股間の方に持っていく。布の上から紐を蝶々結びで結ぶ。股間が布でしっかりと隠れるように布を整える。そして布を上からかぶせれば完成だ。

「はい、できあがり~!」

 着用中、ありさは一言も話さずずっと車井の動作を見つめていた。
 しかし着け終ると、急に軽口が飛び出した。

「穿き心地がパンツと全然違うね~。お股がちょっと気持ちが悪いよ~」
「そりゃそうさ。ふんどしは元々昔の男性の下着。それを女性が着ける訳だから、大事な所に布が食込んで結構刺激すると思うよ。どれ、もっと食込ませてあげようかな?」
「や~ん、やだよ~」

 車井はそうつぶやくと前垂れの布をグイッと下に引っ張った。前垂れの布を引っ張ると当然股間に布が食い込む。

「あっ、あっ、やめてよ~!そんなことしたらアソコに食い込んじゃうよ~!」
「どこに食込んで来たって?」
「そんなこと恥ずかしくて言えないよ~」
「ダメダメ、言わなくちゃ」
「ありさのね、アソコ……」
「アソコじゃ分からないよ。はっきりと言わなくちゃ」
「もう!車井さん、エッチなんだから~。ありさのね……わ・れ・め……」
「どれどれ、どれだけ食込んでいるのか、ちょっと調べてみようかな?」
「ぃやあん、見ないでよ~」

 車井は立位のまま、ありさの足を少し開かせて、前垂れの布をまくりあげ股間周辺を覗き込んだ。
 想像していたとおり、布がよじれて割れ目に食込み大陰唇が少しはみ出ている。

「女の子がふんどしを締めると想像以上に食込むものだね。このまま水に浸かったらもっと布が締めつけると思うよ」
「やだよ~、そんなの~、痛いもん!車井さんってもしかしたらドS?」
「いやいや、僕はSじゃなくてノーマルだよ。今度撮影するシーンは、この格好でありさちゃんが両手を縛られて天井から吊るされるんだ。その上、片足を椅子に乗せてすごいことをされる」
「ええっ?それってまるでSMじゃないの!やだな~」
「嫌だったら出演は辞退できるけど」
「やだ!出たいも~ん」



第4話「ありさのつややかな声」

「じゃあ練習しなくちゃ。僕はSじゃないから縛ったりはしないので安心して」
「じゃあMなの?」
「SじゃなかったらどうしてMってことになるの? 僕はノーマルだよ」
「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ、ありさと同じだね」
「ありさちゃんはちょいMだと思ってた」
「小説のヒロインだとちょっとだけ虐められてみたいけど、リアルに虐められるのはやっぱり嫌だな」
「ふうむ、小説だったらどんな女の子にもなれるからね」
「うん、違う所に別の自分がいるみたいですごく楽しいよ」
「小説だけじゃなくてリアルにも楽しまなくちゃ。じゃあ、片足をこの椅子においてごらん」

 車井は窓際のリーディングチェアに片足を乗せるよう指示をする。
 ふんどし姿のありさは言われるがままに右足をリーディングチェアに乗せた。

「少しだけ足を開こうか」
「は、はい……」

 ありさはふんどし姿を見られていると思うと、恥ずかしくて顔が火照ってしまう。
 リーディングチェアに乗せた足は緊張でガチガチになっている。急に口数も減ってしまった。

「緊張しなくていいよ」
「でも、やっぱり緊張しちゃうよぉ……」
「撮影のリハーサルだと思えばいいんだから」
「うん……」
「ありさちゃん、きれいな太腿しているね」

 肉体の一部であっても、褒められると顔が熱くなる。
 憧れの男性に見られていると思うだけで、赤ふんどしの向こうでグチュッと何かが溢れた。
 恥ずかしくなって思わず足を閉じようとするが、いち早く車井が太腿に唇を寄せた。

「きれいな太腿ってそれだけで宝だね」
「あぁ、恥ずかしい……」

 太腿に唇を這わせる車井。

「くすぐったいよぉ……」
「逃げないで」

 太腿の内側は実は隠された性感帯の宝庫なのだ。
 そんなことなど知るはずもないありさは、込み上げてくる快感にただ戸惑うばかりである。
 ありさの下半身を抱きしめて、腰や尻へも愛撫を施す。
 白い肌を車井の唇が容赦なく舐めまわす。

「しゃ、車井さん……あっ、ああ、そんなことぅ……あん……感じちゃう……」

 太腿への愛撫をきっかけに、ありさの情欲の炎がめらめらと燃えはじめたようだ。
 車井はふんどしの前垂れの布をめくりあげ、こんもりと盛り上がった恥肉部分に指を伸ばした。
 赤い布に包まれてはいるが、その向こうには濡れそぼった花園が妖しく息づいている。

「あうっ……あっ……そこは……ああっ……いや……うっ……」

 ありさは敏感な箇所を攻められ、思わずバランスを崩しそうになる。
 車井のたくましい肩を支えにして、辛うじて立っている。
 指は執拗にふんどしの中心部をまさぐっている。
 ときにはやさしく羽根のように、ときには激しく寄せる荒波のように。

「ああっ……車井さん……そこすごく感じるよぉ……ああ、どうしよう~……」
「ほう、じゃあ中がどうなっているか、調べてみようかな?」

 車井は前褌(まえみつ)の横合いから指を一本こじ入れた。
 指は、すでに潤沢に潤っている泉に達した。

「あぁぁぁん……あぁどうしよう……今、車井さんに触られているんだ……ああっ、そこをむちゃくちゃにかき回して欲しい……」
「かき回すのは後のお楽しみに置いといて、ありさちゃんのオマメはどんな大きさかな?ちょっと調べてみるね」
「いやぁ……」

 指は少しだけ這い上がり、露出している箇所の中で最も鋭敏な秘豆に触れた。
 コリコリとした突起物が親指と人さし指に挟まれる。

「あっ、そこは……! 車井さん……私、何か、何か変……ああん、何かへん……ああんっ……!やだぁ……!」
「かなり感じて来たようだね。じゃあ、もっと気持ちいいことしてあげようか?」

 車井はありさを軽々と抱き上げベッドへと運んだ。
 ベッドに仰向けに寝かせると、すでに感じ始めているありさの赤ふんの前垂れの布をめくりあげ、前褌をゆるめた。
 薄っすらとした草むらが露出した。美しい桜貝を彷彿させるような亀裂のはざまがすでにきらりと輝きを発している。
 甘ったるいありさの香りが匂い立つ。

 車井は草むらをかき分けて、秘豆を舌の先端で舐めた。

「あぁん……!」

 左右に、そして前後へと、軽快に舌を往来させる。
 まもなく部屋中にありさの泣き叫ぶような声が響きわたった。



第5話「ポルチオ一輪挿し」

 ペチャペチャと猫がミルクを飲むときのような音が、ありさの羞恥心を一段と高める。

(恥ずかしい……大好きな人に女のコの最も恥ずかしい場所を舐められている……)

 かねてより憧れて慕っていた人にすべてを預けてる。映画が口実だということは分かってる。それでも構わない。大好きな人に愛されるなら理由なんていらない。
 そのときすでにありさの脳裏からボーイフレンドの存在などすっかり消えてしまっていた。
 今はかつて味わったことのないほどの刺激的な痺れが、ありさの身体を支配している。
 ふんどしを緩めて愛撫を続ける車井に対して、ありさはちょっぴり意地悪をいってみたくなった。

「あんあん……ねえ、映画でこんなのことするの? ふんどしの上からじゃなかったの……?」
「撮影本番より過激なことをしておけば、俳優との撮影本番が楽に感じるだろう? だからあえて激しいことをしてるんだ」
「ふぅん……そうなんだ……」

 誰が聞いても詭弁だと分かる理由だが、ありさはあえて聞き返さなかった。
 ありさにとって撮影と異なっていてもまったく構わなかったのだから。

(もうだめ……早く挿れて欲しい……)

 ありさは心の中で挿入をせがんだ。
 その気持ちがポロリと言葉となってしまった。

「車井さん……早く……い、いれて……」

 車井はありさの言葉が聞こえなかったふりをして、丹念に舌と唇で愛撫を続けている。

(早く、早く、早く挿れて欲しいのに……)

 ありさはもう一度懇願した。

「お願い……いれて……」

 まもなくふんどしは解かれ、硬直した肉柱がデリケートな部分に触れてきた。

(うわぁ……ついに入ってくる!)

 ところが、陰唇のはざまに肉柱をあてがい擦ってはくるが、なかなか進入してこない。
 
(どうしてすぐに挿れてくれないの……?)

「車井さん……いれてよぉ……」
「そんなあわてなくても」

 そうつぶやくと再び花弁の上で肉柱をクニュクニュと往復させる。

「欲しい……」
「美味しいものはゆっくりと食べると一段と美味しくなるんだよ」
「いじわるぅ……もう我慢できないよぉ……」
「仕方のない子だな」

 まもなく太い感触が花弁の中心部を貫いた。

「ああっ……!」

 硬いモノが奥へと奥へと入っていく。

(グッチョグッチョグッチョ……)

 粘着性のある水音が聞こえてくる。
 
「恥ずかしい……」

 顔を赤めるありさ。
 時には水音が潤滑剤の役割を果す。

 足を上げたり下げたり、様々な姿で攻められるありさ。
 挿入したままゆっくりと上体を起こされ、車井の膝の上で体勢を立て直す。
 しばし座位で攻め立てられると、肉柱を挿入したままありさは仰向けにされた。
 挿入角度を徐々に変化させながらありさを攻め立てると、ありさは切なげな声を漏らせた。

 まもなく車井はありさの腰をしっかりと抱え込んでグイグイとブリッジを始めた。
 花弁に食込んだ太い肉柱はさらに奥へと食い込んでいき、ポルチオ附近へと到達した。
 ポルチオは膣の最深部に位置しており、肉柱での攻撃不可能と言われている。
 それでもポルチオの攻め方を心得た車井ならば攻略は朝飯前であった。
 というのも、女性が中イキすると、最奥の性感帯がペニスでも刺激可能な手前までおりてくるからだ。
 直接的に肉柱で突くことはできなくても、奥を突くことによってその刺激がポルチオ性感帯に届き、ありさは感じたことのない深いオーガズムに陶酔することができる。
 すでに中イキしているありさを、ポルチオ絶頂へと導くのに時間は要しなかった。
 桃源郷をさまようありさのポルチオを目がけてピストンを開始する。
 奥に当てるよう腰を深く突き出す。
 車井は挿入したまま回転技を駆使しぐりぐりと奥をえぐるように動かせる。
 振動がポルチオに伝わって、ありさは深い陶酔に酔いしれていった。

「あああ~~~!!す、すごい……!すごすぎるぅ~~~!いやぁ~~~~~!」

 車井はブリッジをしたまま腰をエレベーターのように上げたり下げたりし始めた。
 ピストンだけではなく回転技を加えながら。
 これにはありさもたまらず、ついには泣き叫んだ。

「あっ……はぁ……んっ……んっ……しゃ、車井さ~ん……ああん……あっ、あぁん……イ、イッちゃうよ~!」

 ありさは車井の上で踊り子のように髪を振り乱し激しく腰を振った。
 少し遅れて車井の白い液体がありさの最奥めがけてしっかりと注ぎ込まれた。

(ドックンドックンドックン……)

「ごめんね、中出ししちゃった。もしできちゃったら、ありさちゃんをお嫁さんにするから心配しないでね」
「車井さん……」

◇◇◇

「ねえ、車井さん、今日の赤ふんのストーリーってどこからどこまで映画で撮るの?」

車井は笑いながら語った。

「うん、赤ふんどしを締めて出演するのはホント。憲兵に捕まって地下牢に閉じ込められるのもホント。でもね、その後が違うんだ。憲兵に拷問される寸前に主役が乗込んで来てありさちゃんは助かるんだよ、本当は」
「ええ~!?うそ~~!ってことは、赤ふんどしでエッチなことなんてされないんだね!」
「うん、そうだよ。最初に言ったようにこの映画はAVじゃないからね。ふんどしの擦りシーンなんてある訳ないじゃん」
「ってことは……ぎゃあ!車井さんにだまされた~~~!」
「ありさちゃんをだましたのは事実だ。でも僕は君を抱きたかったんだ。だから後半は僕の身勝手な妄想ストーリーだよ」
「私だって車井さんが好きだから、エッチすることは望んでいたんだけど、まさか演技の練習とかいってエッチしちゃうなんて……いけない人……」
「でもその方が刺激があってだろう?」
「そういわれてみればそうかも。まあ、いいよ、大好きな車井さんとエッチができたんだもん」
「詐欺罪で訴えないでね」
「うん、だいじょうぶ。でもこの後冷たくしたら訴えるかもしれないよ」
「おお、こわ……」
「ねえ」
「なに?」
「もう1回しよ?赤ふん締めて」
「赤ふんが気に入ったの? エッチするのはいいけど、少しだけ休憩させてくれ~」
「うん、分かった。嬉しいな~今夜は車井さんとお泊りできる~♪ 夜景眺めようかな~♪」

 美しい夜景をバスタオル1枚巻かないで大きな窓から眺めるありさ。
 高速道路のナトリウム灯やビルのネオンがキラキラと輝き、ロマンティックな夜を演出する。
 白いヌードと夜景が見事なハーモニーを奏でてる。
 車井は「夜はこれから」と心でつぶやき、大きく深呼吸した。













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