Shyrock作






前編

 陽が西に傾く頃、僕たちは城崎温泉に到着した。
 東西に街を横切る大谿(おおたに)川には石造りの太鼓橋がいくつも架かり、せせらぎの音や、河岸のしだれ柳が温泉情緒をかきたてる。
 城崎温泉の歴史は千四百年前に遡る。
 コウノトリが足の傷をいやしたという伝説を持つ鴻の湯。
 ほかに御所の湯、柳湯、まんだら湯、地蔵湯、一の湯と元々外湯は六つであったが、近年さとの湯が誕生した。
 もちろん旅館内にも立派な大浴場があるのだが、銭湯感覚でこれらの外湯に足を運ぶ人が非常に多いようだ。

 一九〇九年に山陰本線が通るまで、交通の便に恵まれたとはいえないが、平安時代にはすでに貴顕の来訪記録がある。
 その後も上田秋成、柳田国男、有島武郎、島崎藤村、志賀直哉、司馬遼太郎……と数多くの文人たちが足を運んでいる。

 僕たちは到着後すぐに外湯を巡ることにした。
 ところがまるでカラスの行水のうような早風呂の僕は、どの湯でも静香より早く出るため温泉の外で待ちぼうけ。
 静香は濡れた髪を拭きながら出て来た。

「待たせてごめんね」

 浴衣に丹前姿の彼女に近づくと、ぷうんと甘い湯の香りが鼻孔を刺激する。
 七つの風呂すべてを巡る予定だったが、静香の芳香のせいでにわかに良からぬ衝動にかられてしまう。
 でもあまりズバリ言うのも気が引けたので、ちょっぴり嘘をついてしまった。

「ねえ、まだ3軒目なんだけど、残りの風呂は明日にしようよ。ちょっとのぼせたもので」
「それはいけないわ。うん、じゃあ旅館に戻ろうか」

 カラン、コロン、カラン、コロン……

『カラコロと 下駄を鳴らして 湯の街を』

 なんて下手な一句が浮かぶ。
 本来ならばうるさく感じるはずの下駄の音なのに、この街ではやけに似つかわしいから不思議だ。
 歩きながらチラチラと浴衣姿の静香に流し目を送る。

「私の顔に何かついてるの?」
「何もついてないけど」
「じゃあどうしてそんなに見るのよ?何か恥ずかしくなるよ~」

 心が逸る。
 一刻も早く旅館に戻って浴衣を脱がしたい。
 静香を畳に押し倒してあられもない姿にしてみたい。
 そんな光景を想像していると、何やら身体の芯が疼き出した。

 今度は静香が僕を見つめた。
 もしかしたら僕の考えていることを、静香は感じ取っているのかも知れない。
 その証拠に何だか静香の瞳もほのかに潤んでいる。

 思い切って静香に尋ねてみることにした。

「ねえ静香。今、エッチなこと考えてなかった?」
「もう、シャイったらあ。やだ~、そんなあ……」

 否定しようとしない。
 静香は心を見透かされた恥ずかしさからか照れ笑いした。

「やっぱり。顔が赤くなってるよ。でもね、これからもっと赤面することをしてあげるからね」
「もう、シャイったらあ」

 障子をいっぱいに開けば、春の夜風が心地よくふたりを包み込む。
 川のせせらぎを背にしながら静香を抱きしめて……
 この後の行動を思い描いてみたものの、表通りではまだ温泉客が行き交い、川向かいの旅館でも窓辺に人影がうごめく。
 こちらから見えているということは、向うからも見ていると考えてよいだろう。
 やむをえず障子を閉めて、照明を消して……

 静香を膝に乗せるとそっとくちづけをした。
 洗い髪のいい香りが心をくすぐり、男の本能を蘇らせてくれる。
 浴衣の胸の合わせ目から指を差し込みふくよかな胸をまさぐる。
 乳首をつまむと静香はぴくりと身体を震わせた。
 くちづけが濃厚になっていくに連れ、乳首が硬くなっていく。

 浴衣の裾から手を差し伸べると、さわさわと春草が触れる。
 浴衣も含め和装は本来下着をつけないのが正装とされているが、現実に下穿きを着用していないとドキリとしてしまう。

「うわっ……ノーパンじゃないの」
「やん、恥ずかしいから言わないで……」

 割れ目を指でなぞってみると、わずかだがすでに潤っているのが分かる。
 指を往復させていると次第に水音が聞こえてきた。
 何だか楽しくなってきて、わざと静香の耳にも音が聞こえるように強く擦ってみる。

「いや…恥ずかしいからそんないじり方をしちゃ嫌……」

 横座りで僕の膝に腰を掛けている静香は、身体を捩って甘えていくる。
 指が肉豆を探し当てると、静香は身体をびくつかせる。

「あぁん、そこは……」

 縦に擦ったり、横に擦ったり、円を描いたり、あるいは摘まんでみたり、とあらゆる方法で肉豆を攻め立てる。
 すぐさま静香は反応し身体を小さく波打たせる。
 時折甘い声を奏でるたりもする。

 いきおい畳に押し倒し、浴衣の裾をめくり上げ、春草に顔を埋めてみた。
 反射的に脚を閉じようとするが僕は腕をこじ入れ決して閉じさせない。
 こそぐように谷間を這い回る舌。
 溢れ出る蜜はいくら吸っても枯渇しない泉のようにすぐに湧き出てくる。
 わざと品のない音を立てて吸ってみた。

「あんっ…恥ずかしいよ~……ああっ……」


後編

 右手の指で渓谷を開き、左手の中指をズブリと突き立てた。
 第一関節まで埋没したところで肉襞を擦ってみる。

「ああ~!そこはぁ……!」

 静香が小さく反応する。

 指のピストン速度を上げていく。
 埋没部から早くも湿った音がこぼれる。

 指をグルグルと旋回させてみた。

「そ、そんなことぉ……」

 静香は指の回転に合わせて腰を小刻みに揺らせている。

「あぁん……シャイのが欲しい……」

 静香が肉棒を催促する。
 僕もすでに限界だ。焦らすだけの余裕がない。
 浴衣の裾をさらに捲り上げ、下半身を完全に剥き出しにする。
 両足をグイと開き、大腿部を持ち上げ、M字方に抱え込む。
 硬くなったイチブツはいとも簡単に静香の中に収まってしまった。

 狭い肉襞をこじ開けるように押し進む。
 静香は耐え切れないのか、ときおり瞳を閉じて胱惚の声を漏らす。
 しびれるような陶酔を味わっているのだろうか。
 
 腰の動きが次第にリズミカルになっていく。
 ピストンに加え回転を加えてみる。
 静香の声が一段と大きくなった。
 蜜つぼを掻き回される女の愉悦とはいかなるものか。
 男である僕にはその歓びは知るよしもない。

 僕自身の気持ちがかなり高まってしまったが、発射させるにはまだ早過ぎる。
 そっと静香を抱き起こし、向い合った格好で膝に座らせる。
 お互い両腕を背中へと回し、静香の細い脚が僕の腰に宿り木のように絡まっている。
 
 僕のイチブツはいつもよりずっと硬く大きく変化していた。
 それは異常なほどの存在感を示し、自分の性器ではないように思えた。
 イチブツを下から突き上げてみる。
 ズシンズシンと重戦車の放射のよう。

 静香は長い髪を振り乱し身悶えする。
 魂をとろかすような甘美な思いに浸っているのだろうか。
 吐息もかなり荒くなっている。

 挿入したまま僕が仰向けになった。
 体位は自然に座位から騎乗位へと移行し、静香は女騎手になった。
 女騎手は腰を前後に揺すったり上下動させたりする。
 僕は静香の動きに合わせ下から突き上げる。
 腰を支えてやり、リフトアップして一気に落とす。
 少し乱暴だがこれは効く。
 落下の瞬間、静香は大きく反応する。

「あぁんっ!」

 僕のエンジンもいよいよ全開だ。
 静香を腹に乗せたままブリッジし激しくこね回す。
 まるでねじ回しのように。
 これには静香もたまらず激しく喘ぎ出す。

「もう~、もう~、もうダメ~……イク、イク、イク、ああん、いっちゃう~~~~~~~!」

 女がイキそうな時、男は畳み掛けるように激しく動くのがセオリー。
 回転速度をトップギアに切り替える。

「ダメ、ダメ、ダメ、あああああ~~~っ!!シャイ~~~!好きよ~~~!ああ~~~~~~ん!」

 静香は我を忘れあらん限りの声を張り上げる。
 隣に聞こえるかも知れないと、気遣う余裕はまったく無さそうだ。
 でも人のことは言えない。
 僕もその時、静香の膣奥めがけて白い弾丸を発射してしまったもので、思わず大声をあげてしまった。
 頭が真っ白になり、一瞬何も見えなくなる。
 僕にしがみつき官能の波間を漂っている静香。
 僕も無意識で静香を抱きしめていた。

 静香の額に汗が滲んでいる。
 指で額の汗を拭いてやりそっとささやく。

「静香……好きだよ」
「シャイ……私も大好きよ」

 その時、窓辺の障子の向うから、温泉街を闊歩する男たちの笑い声が聞こえた。
 外湯の行き帰りだろうか、それとも宴会が終わって自由に散策を楽しんでいるのだろうか。
 声のせいで夢の空間から現実の世界へと戻されてしまった気がした。
 ふと掛け時計に目を向けた。

「まだこんな時間だったのか?」

 時計の針が9時を指している。

「そうね。エッチしてたら時間を忘れてしまうね」
「まったくだね。あぁ、喉が渇いたな~。ビール飲もうかな?それともウーロン茶にする?」
「う~ん、そうね。スタミナドリンクがいいかも~。まだ頑張らなくちゃならないし」
「でへへ、でもそんな気の利いたものたぶん冷蔵庫に無いよ」

 そういいながら冷蔵庫を覗くとあるではないか。

「あれ?へえ~、マムシドリンクがあるよ!」
「飲も、飲も~」
「おい、おい。ちょっとぐらい休憩させてよ。ほんと、静香はエッチなんだから~」
「まあ、シャイだってかなりスケベーじゃん」
「こいつ~!」

 静香の額を軽く小突いてやった。
 次の瞬間、静香を抱き寄せて、熱いくちづけを交わした。

 いつのまにか人通りが途絶えたのか、喧騒が消え静寂が訪れていた。
 大谿川のせせらぎがいだき合う僕たちの耳に心地よく入って来た。








浴衣の似合う街

城崎はふだんから浴衣を着て街を歩くことができる街なんです。
着て歩いてみると、心が落ち着いてすぐに馴染んでしまうから不思議です。
そんな城崎にはユニークな「ゆかた憲章」と言うのがあります。

一、ゆかたにあらざれば、装いにあらず。
一、ゆかたを以て尊しとなす。
一、ゆかたを温ねて、新しきを知る。
一、ゆかた姿、一日にして良き想い出を宿す。
一、ゆかたは、豊かな心を育む。

機会があれば、こんな湯の町城崎へ、あなたも一度訪れてみられてはいかがですか?
きっと「風流」に出会えると思いますよ。















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