第四話 図らずも車井が握る筆により、快楽の扉が開かれてしまった。 処女であるしずか姫が受ける羞恥心は相当なものであった。 かつて乳母以外に見せたことのない肉体を男性に見られている。 いや、見られるだけならまだしも、恥部を筆先でいじられている。 考えるだけでしずか姫は身体が熱くなった。 実際貝の合わせ目からはとろりとした透明の液体がじわりじわりと滲み出ていた。 車井の手は間断なく動く。 ただ一点を見つめ、まるで画伯が絵画を描くが如く、熱心にしずか姫の肉体に字を描いた。 字と言っても単純に「十字」か「○」や「□」を描く程度であった。 しずか姫にはそれだけで充分効果があった。 「あぁ……もう……わらわはもう……」 「姫、気持ちようござるか?神代の昔から伝わるこの名筆はすでに姫の蜜液でぐっしょり濡れてござる。そろそろ字が書けますぞ。いかがなさるか」 「ここでやめるということか……意地が悪いのう……嫌じゃ……しばし続けよ……ああっ、よい具合じゃ……」 「そうは行きませぬ。筆は文をしたためるためのもの。無理をしてでも文を書いていただかねば困りまする」 「分かっておるわ。今しばし、今しばしで良い。続けのじゃ」 「これは困った姫君でござるのう。いた仕方ござりませぬ。かくなる上はこの車井めが筆とともに極楽までお供つかまつる!いざ!」 「ん?ごくらく……?」 車井は姫貝の合わせ目に指を宛がい強引にこじ開け、すでに露に濡れそぼる美肉に筆を挿し進めた。 「おおっ!車井、そ、そこも……そこもいいぞ」 筆は貝の合わせ目に沿って「一」の文字を描いた。 何度も何度も繰返し「一」がなぞられる。 「あっ、あっ、あっ、しゃ、車井、そこじゃ、そこじゃ、あああ、わらわはもう堪らぬわ」 筆攻めが始まって数分経過した頃、 「姫、されどお手紙を書かない訳にも行きますまい。ぼちぼちとご支度を」 「う、嘘つきめ、さきほどそちは極楽までお供すると申したではないか。然らばそちが書け。わらわの貝の水を使ってそちが書けばよい」 「承知いたした!」 「まことか……!?」 「では、ご免!」 さきほどからの筆攻めに呼吸を乱すしずか姫ではあったが、車井はしずか姫の言葉をつなぎ合わせ手紙にしたためた。 硯にはしずか姫の貴重な清水が光り輝いている。 合わせ目から滲み出る清水は手紙をしたためるには十分過ぎる量であった。 十行ほどの短い手紙を書き終わった頃、美しい姫貝が墨のせいで黒く汚れていた。 「車井、ご苦労であったぞ。文はちゃんと書き終えたが、わらわの秘所が真っ黒になってしまったぞ。おっほっほ~」 しずか姫は自身の股間を覗きながら大笑いした。 「さようでござりますな。姫、もしよろしければ今日の清水筆を記念に残しませぬか」 「記念に残す?いかがいたすつもりか?」 「姫は『魚拓』というものをご存知か?魚の表面に墨などを塗り、和紙や布をその上にかぶせて魚の形をすり写すことでござります。漁師が驚くほど大きな魚を得たときに記念に残すことがござります」 「ふむ、それは相分かったが、わらわとその魚拓とやらは如何な関係があるというのじゃ?」 「姫の秘所にたっぷりと墨を塗り、この和紙を当てるのでござります。さすれば、姫の秘所の形がくっきりと写り、末永く記念となりまする」 「おお!それはよき考えじゃ。すぐにいたせい」 「承知つかまつった」 姫は仰向けに寝転び、裾を大きくまくりあげ、雪のように白い肌を再びあらわにした。 車井は姫貝に筆を滑らせ黒く塗り始める。 戦国の世に昼のひなたからこれほど大胆に振る舞う姫君も珍しい。 眉目秀麗ゆえによけいに艶やかに映る。 車井は筆の下で痴態を晒すしずか姫によこしまな感情がふつふつと湧き立っていた。 (これはまずい。いくら何でも姫にこのような感情を抱いてはならぬのに……) 抑えても抑えきれない強い感情。 いくら理性で抑えようとしても、下半身の異変を抑えることは難しかった。 (姫にはできる限り分からぬよう振る舞おう) 自分にそう言い聞かせようとするのだが、姫貝に筆を走らせるたびに、姫は小刻みに反応しその光景を見た車井は苦しさに耐えていた。 時折身をよじる色っぽいしずか姫だが、車井は作業中それを黙殺して墨を塗り続けた。 ようやく墨塗り作業は終了したので伸ばし和紙に手を伸ばした。 和紙を左右に広げ、しずか姫の秘所にそっと宛がった。 和紙は真っ黒に塗られてしまった姫貝にぴったり張り付けた。 「あっ……」 和紙にしっかりと墨が付くように張り付けた紙の真上を指で丁寧に擦る。 「くすぐったいぞ……」 「しばしの辛抱にござる」 姫のふっくらとした柔らかな大陰唇の感触が心地よく指に伝わってくる。 (おお、三国一の美女と誉れ高きしずか姫の秘所をそれがしが触っておる。天下広しと言えども、これほど幸運な男子はいようか……) 車井は歓びに心が蕩ける想いであった。 紙はゆっくりと秘所から離れた。 広げた紙にはまるで唇のような模様がくっきりとそして黒々と浮かび上がっている。 見ようによっては『似たり貝』のようにも見える。 「できたか?」 「姫、美しく転写ができ申した」 前頁/次頁 |