ホテルの玄関で靴を脱ぎながら、奈々子がポツリとつぶやいた。

「あの……Ｓｈｙ、ごめんね。アレ……始まっちゃったぁ……シャワーを浴びるて来るわ」
「ああ、そうなんだ。うん、ゆっくりと入ってきて｣

　僕はネクタイを緩めソファに腰を下ろすとテレビのリモコンスイッチを押した。
　テレビ画面は、暴漢にライフルを股間に突きつけられて、泣きべそをかきながらショーツを下ろすＡＶ女優の顔を映し出していた。
　画面をぼんやりと眺めながら、シャワーを浴びている奈々子の裸体に想いを馳せていた。
　僕の上になったり、下になったりして喘ぐ姿を。
　そんな妄想は、画面に映し出されたＡＶよりもずっとリアルで刺激的だ。
　妄想を膨らますだけで股間までが膨らんでしまって、パンツの中が痛いほど突っ張ってる。
　いっしょに入浴したいけど、生理中は奈々子が嫌がるだろうと思いわざとずらした。
　奈々子が風呂から出てきたら入れ替わりに入るつもりだ。

　奈々子に続いてシャワーを浴びた僕は、薄明かりの中で彼女のシルエットを見つめた。
　バスタオルを身体に巻きつけた姿で、ベッドに腰を掛けて僕を待っている。
　風呂上りにバスタオル一枚の姿は、下着姿とはまた違ったセクシーさがある。
　他愛ない会話の後、熱いキスを交わした。
　風呂上りのよい香りが僕を刺激する。

　抱き寄せてキスを求める。
　舌と舌を絡め合って愛を確かめ合う。
　キスをしていると気持ちがどんどんと昂ぶっていく。
　下半身の一部が重量感を増してきた。
　背中と乳房への愛撫を入念に行う。
　秘部へは指はオーケーだが生理中ということもありクンニは拒絶された。

　愛撫が一段落したころ、奈々子は「次は私の番よ」とばかり僕の股間に顔をうずめた。
　竿の先端を丁寧に舐めながら、ときおり上目遣いでこちらを見つめる。
　早く咥えて欲しいのに、なかなか咥えてくれない。
　女性も男性と同様に焦らすのが好きなんだろうか。
　いや、奈々子のようなタイプは珍しくて、もしかしたら少数派なのかも知れない。
　僕の一番して欲しいことを解っているくせにわざと遅らせる。

「うっ、うっ……奈々子、もう我慢できないよ……先っぽを舐めてばかりいないでがぶっと咥えてよ……」

　奈々子はにっこり微笑むと、ようやく前髪を指でかきあげながら亀頭を咥えた。
　さきほどまでの丹念な舌使いとは違って、今度は大胆に激しくしゃぶり始めた。

（うぐっ……・極端っ……だけどいい……）

　カリの裏側がくすぐったくて、思わず情けない声を出してしまった。
　でも奈々子は止めようとしない。
　含み笑いを浮かべながら懸命にしゃぶっている。

　しばし中断させるためシクスナインへの移行を提案するが、聞く耳を持たない。
　やっぱり生理中にクンニされるのが嫌なのだろう。
　ようやくフェラチオは一段落したが、クンニノーの奈々子に対して指攻めを行なった。

　二人のボルテージがかなり上がった頃、僕は胡坐になり奈々子を膝に誘導した。

（ズリュン……グチョグチョ……）

　淫靡な音が静かな部屋に響き渡る。
　それは奈々子の蜜の音か、それとも女の月のモノが奏でる音か……。
　どちらかは知らないが、その水音がふたりの夜の前奏曲となった。
　僕の膝に深々と腰を沈めた奈々子はゆっくりと腰を前後にくねらせる。

（あっ……あぁっ……はふぅ……あぁん……）

　お互いが揺れているのではっきりと分からないが、一瞬奈々子の表情を垣間見た。
　こみ上げて来る快感に酔いしれる表情。
　見上げる首の角度は４５度。女性がひときわ美しく見える角度だ。
　花火を観に行った時ぐらいにしか見せてくれない角度だから、セックス時見れるのは彼氏の特権かも知れない。

「奈々子、きれいだね」
「あんあん……なぁに？急に……？」
「いやぁ、奈々子のエッチな顔、思わず見惚れてしまって……」
「恥ずかしいから見ないでよ」

　一言二言言葉を交わすと、再び意識が結合部へと移る。
　甘い吐息が僕の頬に吹きかかる。
　それも心地よい瞬間だ。
　艶めかしい奈々子の表情をうかがっていたが、やがて余裕がなくなってきた。
　発射が近い？

　ヌルリとした温かい粘膜が怒張したイチブツを包み込む。

「うん……？」

　と奈々子が漏らした。

「どうしたの？」
「ごめん……とうとう（出血が）始まったみたい……中止する？それともこのままいく？」
「もう止まらないよ」

　この会話の後、フィニッシュまで一言も交わすことはなかった。
　終了後、ベッドを見ると白いシーツに赤い染みができていた。
　僕は帰り際、フロントに内線電話し正直に事情を述べ謝った。

「すみません。シーツ汚しちゃいました。あの……アレの出血で……。シーツ代弁償しますので……」

　バツが悪くて上手に話せない。
　しかし要領を心得たフロント女性の対応はすばらしく、

「構いませんよ。そのままにしておいてください。代金は要りませんから」

　実に爽やかで感じの良い返事が返ってきた。
　こんな感じのよいホテルならまた利用したくなる。

　満ち足りた気分で駐車場に行くとクルマは入室時より増えていた。
　この時間からだと泊りの客だろう。
　僕はクラッチを踏み込んでギアを１速に入れゆっくりと車を発車させた。


完