惠はワンルームのマンションでシャワーを浴びていた。
 冬でも熱めのシャワーが心地いい。
 股間のあたりを洗っていてふと手を止めた。

(またできちゃったわ)

 ちょうど股の付け根あたりが赤くなっていた。
 少しかゆい。
 高校時代から冬になるとそのあたりが赤くなってしまう。
 ストッキングとショーツで蒸れて湿疹ができるのだ。
 とにかくかゆい。
 皮膚科に行けばすぐ治るのだが、それがなかなか勇気がいる。

 惠は初めてできたことを思い出した。
 十六歳の時だった。
 かゆくて我慢できずに勇気を持って保健室に相談に行ったのは、十二月の期末テストの頃だったように思う。
 少女の心の中では「悪い病気」もちらついた。
 勇気を保健の先生に言うと、笑われた。

「オナニーのせいじゃないわよ。新陳代謝が盛んだから湿疹ができるのよ」

 紹介された病院に行くと、セーラー服が目立った。
 四十代後半の院長は話を聞くと、

「スカート脱いでそこに寝てね。パンツはいいけど、ストッキングは脱いでね」

 覚悟はしていたが、事務的な口調が少しは救いがあった。
 ブラウス姿で横になった。
 院長は、

「力入れないで、脚を広げて」

 と言いながらショーツを引っ張って寄せた。
 思わず目をつぶった。
 耳まで熱くなった。
 無抵抗な子羊だった。
 秘密のアソコも見られていると思うと、オシッコを漏らしちゃいそうだった。

(これは診察なのよ)

 心の中で言った。
 でも、別の変化も感じた。

(濡れてきている)

「大したことないけど、もっと早く来ないとダメだよ」

 いつか触診は終わっていた。
 診察の後でトイレで確かめると、かなり濡れていた。

 湿疹が治っても触る癖は直らなかった。
 院長の低い声を想像すると感じてしまう。

(「見られる」のって快感なんだ)

 そのとき一つ大人になったと今は思う。
 今回は若い男性の医者のいるところに行こうと思う。























自作小説トップ

トップページ







inserted by FC2 system