今年春に社会人1年生となった花山めぐみは30分早めに出社すると、いつものようにパソコンの電源を入れた。
立ち上がる途中いちいちパスワードを聞いてくるのは少々わずらわしいが、会社のセキュリティ上仕方がない。
やっと画面が開くと、最初の操作はメールボックスの確認だ。
デスクトップのアイコンをクリックするとメールボックスが開く。
「うん…?」
ふと見ると知らない男性から1通のメールが届いていた。
めぐみは経理課なので営業職のように得意先からメールが来ることは先ず考えられない。
あったとしても銀行ぐらいのものだ。
(聞き慣れない名前だわ……誰だろう?)
めぐみは早速メールに目を通した。
『花岡さん、おはよう。この間はありがとう。社内で見る君も素敵だけど、シーツにくるまれた君は最高だね。それに君の大胆さには驚いたよ。まさかあんなことまでしてくれるとは思わなかったからもうビックリだったよ。君が引っ掻いた爪の跡がまだ少し痛いけど、嬉しい痛みだよ(笑)
ところで、あの時言ってた社内の女子トイレでスリルを味わってみたいって話、僕もぜひやってみたいんだ。愛しい君とスリリングなひとときを早く味わってみたいな~。この前の約束どおり、18時に11階の来賓用トイレで待っているよ』
(うわ~、なに?これ……間違いメールじゃないの……)
めぐみは唖然とした。
自分宛ではないメールを間違って開いてしまったのだ。
それも社内エッチの誘いではないか。
(わっ、これはすごい……大変なものを見てしまったわ……)
メールは外部のIDを使っている。
内容から言っても社内IDはやはり拙いのだろう。
受取人の花岡という女性は確かにいる。
事業開発部にいる女性だが、真面目な仕事ぶりからとてもそんなことをするとは思えない。
しかし男女のことは分からないものだ。
めぐみは、メールをそのまま返そうかと思った。
でも社内のLANで返すと自分が読んだことがばれてしまう。
その時ふとめぐみの心に好奇心が生まれた。
「18時」……どんな男なのか確かめてみたい。
個室に隠れていればきっと大丈夫だろう。
もしかしたら男女のすごい場面に遭遇するかも知れない。
想像を巡らせるだけで胸が高鳴る。
17時50分過ぎ、新入社員のめぐみは好奇心を胸いっぱいに膨らませて、来客用トイレへと向かって行った。
それが何者かの悪戯だとも知らないで……
完
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