中編/球 モデル選考会(3)






1~3話  4~6話   7~10話








第7話


「てのひらを床に着けてみてください」

球はさらに上半身を折り曲げた。
すらりとした長い脚の球にとってはきつい動作だが、しなるように上半身は折り曲げられ、てのひらがピタリと床にくっついた。 身体が柔軟であることが証明された。
しかしその反動もあった。
小さめのレオタードがさらに食い込んでしまい、恥ずかしい肉の形状が完全に浮き出てしまっている。
ここまでフィットしてしまうと全裸と変わらない。
いや、特定の部分が誇示されるから、全裸よりもエロティックかも知れない。
ギラギラとした視線が突き刺すのが分かる。

「身体は柔らかい方ですね」
「はい、そう思います」
「ではその姿勢のままで少し質問します」

(え~この姿勢のままで?きついなあ・・・)

「はい・・・」
「最近したセックスで行なった体位を憶えていますか?」
「え~!?」
「忘れましたか?」
「いいえ、憶えていますけど・・・」
「では、その時の体位を順番に答えてください」
「はい・・・」

(そんなことモデル審査と関係あるの~!?参ったなあ・・・)

「最初は正常位で・・・そして上に乗って、え~と騎乗位というのかな・・・それから、・・・バックで・・・最後はまた正常位だったと思います」
「そうですか。よく憶えていますね。それだけ彼氏を大事にしておられる証拠だと思います」

(そうなのかあ?)

「はい、結構です。では、こちらを向いて座ってください」
「座るのですか・・・?」

球は屈曲した姿勢を元に戻し、正面に向きなおした。
そして審査委員の指示するとおりに床に座った。

「膝はくっつけないで90度ほど開いてください」
「90度ですか・・・?はい・・・」

(どうして開脚にしなきゃいけないの?まったく、嫌らしいんだから)

2~30度であればごく自然な開脚といえるが、90度となると相当な大股開きといえる。
ましてや薄くてぴったりフィットしたレオタード姿で開脚はかなりの抵抗がある。
球は不満を感じながらも、両手を支えにしてゆっくりと脚を開き始めた。

(だめだわ・・・)

球は恥ずかしくて、50度ぐらいのところで止めてしまった。 審査委員から声が飛んできた。

「もっと開いてください」
「は・・・はい・・・」

球は声の方に目を走らせたが、直ぐに目を伏せて、さらに脚を広げた。

(やだなあ・・・もう・・・)

彼氏とセックスする時以外、男の面前でこれほど開脚することなんてあり得ない。
恥辱にまみれて身体全体が火のように熱くなっている。

「最初の質問で、あなたは性感帯を3箇所答えましたね」
「はい・・・」
「耳・・・乳首・・・クリトリス・・・」
「はい・・・」
「では今からその3箇所に触れてみてください」
「えっ!?」
「では先ず耳からお願いします」
「そ、そんなあ、そんなこと出来ないです」
「出来ませんか?」
「はい・・・」
「そうですか。出来ませんか・・・それは残念です・・・」

耳はまだ良いとして、他の箇所に触る姿を見ず知らずの男達の前で見せるなんてことはとても出来そうもない。
球は葛藤していた。

(ここまで来て断るのか。断れば先ず合格はあり得ないだろう。今まで辛い思いをしてがんばったことが全て水の泡じゃないか。がんばるんだ)

「分かりました・・・やります・・・」


第8話


球はしずかに肯いてそっと耳に触れた。

「耳の感じる部分を触ってみてください」

感じる箇所が耳のどの辺りかなどと考えたこともない。

(この辺かな?)

球は取り合えず耳たぶに触れてみた。

「どうですか?触ると感じますか?」

全然感じない。
同じ箇所に触れても感じる時と、感じない時がある。
特に耳はとても繊細な箇所であって、
愛する彼氏に、抱きしめられて・・・愛を囁かれて・・・そして触れられる(息を吹きかけられる)・・・
そんな状況になって初めて感じることの出来る箇所なのだ。
大勢の見知らぬ男達の見守る中、自分で触れても決して感じるはずはなかった。

「あんまり・・・」

審査委員は拍子抜けしたような表情に変わっている。
だがそこは年の功、1人の男が直ぐに事情を悟ったのか、球をフォローするかのように呟いた。

「そうですか。こんな大勢の前ですし、仕方ないですね」

すると隣の男も同様にうなずいた。

「緊張もあるしねえ」
「はい・・・」

間髪入れず次のリクエストが飛んできた。

「では次に、乳首、触ってもらえますか」
「はい・・・」

窮屈なレオタードだから当然乳首の位置は第三者の目にもはっきりと分かる。
よく見ると乳首だけではなく乳輪の形状までが浮き出てしまっていた。

球は乳首に触れた。

「はい、指で撫でてみましょうか」
「は、はい・・・」

球は人差し指で恐る恐る撫でてみた。
公衆の面前だが、乳首のかすかだが、感じるものがある。
耳とは少し違うようだ。

「ゆっくりと指を回して」
「はい・・・」

(くるんくるんくるん・・・)

「どうですか?少し感じますか?」
「・・・はい、少しだけ・・・」

「では最後です。クリトリスを乳首と同じように撫でてみてください」
「・・・」

球は困惑の表情を隠しきれない。

「・・・・・・」

指は恐る恐る股間へと伸びていった。
細く長い指、ブルー系のマニキュアが美しい光沢を見せている。


第9話


見知らぬ男達の前で、足を大きく開き、女の最も恥ずかしい箇所に触れる。
AV女優やストリップショーガールのようにそれを生業にしている女性ならともかく、ふつうの女性にとっては清水の舞台から飛び降りるほどの勇気がいる。
球は顔を紅潮させている。 瞳を閉じて、静かに指を近づけた。 突起したクリトリスの感触が指に伝わってきた。
だが指は動かずに止まったままだ。

催促の声が飛んできた。

「そこを撫でて」

球はあえて声のする方向から顔をそむけた。
顔を横に逸らして指をそっと動かした。

(ビクッ!)
(あっ・・・)

電流のようなものが身体を駆け抜けた。
やはり耳の性感帯とは桁が違う。
人が見ていようが見ていまいが関係なく感じてしまう。
軽く触れるだけで・・・。
これほど鋭敏な箇所は身体中探しても他には見当たらない。

球はできるだけ気を逸らそうと努めたが、軽く触れるだけでも感じてしまう。
感じないようにするのは不可能かも知れない。

躊躇する暇(いとま)など今の球にはない。

「指が止まってますよ。ちゃんと動かして」
「はい・・・」

(彼らは私にオナニーを強要しているんだわ。こんなことモデルの審査とは関係ないはずなのに・・・。いやらしいわ。でも、今更もう断れない・・・)

球は観念して指をゆっくりと動かし始めた。
彼氏がいる現在でも、たまに1人エッチをしたくなる時がある。
それはベッドであったり、風呂場であったり。
そんな恥ずかしい女のプライベートな行為を、今、人前で晒そうとしている。

球は恥辱に顔を紅潮させながらも、指先をゆっくりと動かした。

(あ・・・・・・あぁ・・・・・・あぁぁぁ・・・・・・)

次第に身体が熱くなっていく。

審査委員達からは咳払いすら聞こえていない。
艶めかしい女の生態を、息を潜めてじっと見守っている。

(あぁ、どうしよう・・・やだぁ、マジ感じてきたぁ・・・)

身体の奥から熱いものがじんわり溢れてくるような気がした。
薄いレオタードでしかも当て布がついていないのだから、隠そうとする方が所詮無理な注文だ。
熱いものが生地を通して表面に滲み出すのに、多くの時間を要しなかった。
それは直ぐに“染み”という形になって現われた。

触れる指の真下・・・
くっきりと縦に走った深い渓谷・・・
既に薄っすらと染みが浮き出てきている。

審査委員の中には眼鏡のフレームに触れ、前屈姿勢で球を凝視しているものもいる。

「もしかして触っているうちに感じてきたのではありませんか?もう少し下も触りたくなって来たとか」
「そ、そんなことありません・・・」
「そうですか。息がだんだん激しくなってきたように思うのですが・・・気のせいですかねえ?」
「そんなこと、決して・・・あっ・・・ありません・・・あっ・・・ああっ・・・はぁ・・・あっ・・・」
「それじゃ、こうしましょうか?いい声を出したら終わりってことに」
「そ、そんなぁ~・・・はぁ・・・」
「いいえ、いいんですよ。嫌ならあと10分間擦り続けてもらいますので」
「じゅ、10分!?そんなぁ~・・・」

あと10分痴態を演じ続けるか、それとも、今ここで嬌声を発して早く終わりにするか。
球にとってそれはどちらに転んでも辛い恥辱の選択であった。


第10話(最終回)


10分痴態を演じ続けるなんて耐えられない。
また、イキもしないのに演技で甘く切ない声なんて出したくはない。

(イク時の声をこんな人達に聞かせるのは絶対に嫌。好きな人の前でならどんな声でも出せるけど。私はAV女優じゃないもの・・・)

球は審査委員が要求するそのどちらも受けないことを決めた。
でもここでやめて帰ってしまうような真似もしたくない。

球は自分に素直になれて、しかもこの場を放棄しないある方法を思いついた。

(もう落ちたっていいわ。自分に素直になっちゃうんだから・・・)

「そのどちらもお断りします。でも1分間だけオナニーやります。すみませんが、時間を計っていかだけませんか?」

「ええっ!10分間もダメで、イキ声出すのも嫌だって!?その代わりに1分だけ演じるというのですか?そ、そんな・・・」
「それが受け入れていただけないなら、残念ですけど選考会はここで断念します」
「そんな勝手な!」

重村が血相を変えて慌てふためく中、上司らしき人物の声が飛んだ。

「重村君、いいじゃないか。彼女の好きなようにやらしてあげなさい」
「せ、専務・・・分かりました・・・。では上原さん、あなたの思うとおりやってみてください」
「ありがとうございます」

球は一旦立ち上がって礼を述べ、再び、先程の開脚姿勢に戻った。
球は審査委員から目線を避け、おもむろに指を恥部に忍ばせた。
重村は球の注文どおり、時計を見つめている。

「あ・・・・・・」

球の口から切ない声が漏れた。
もちろん演技ではない。
あくまで自然体なのだ。
そばで見ていれば演技であるかないかは大体察しがつく。

「あっ・・・・・・あぁ・・・・・・ああっ・・・・・・」

オーバーなほどの迫真の演技よりも、控えめであっても真実の喘ぎの方が人を惹きつけるものだ。

球は1分間自慰に没頭した。
決して絶頂に至ることはなかったが、その艶めかしい声は男を酔わせた。

「時間です。1分経ちました」
「・・・・・・」

球はぐったりと疲れ果てていた。

「ごくろうさまでした。では合否は後日お知らせしますので」
「ありがとうございました」

球は一礼してその場を立ち去った。

おそらく合格はないだろう。
それでも構わない。
自分に素直に生きていきていけばいいのだ。
球は大きく息をして、1階フロントを通り表通りに出て行った。

それから1週間後、球の元に1通の封書が届いた。

「合格通知書。上原球様。あなたをサマーキャンペーンモデルとして採用します。○月○日午後1時、撮影の打合せを行ないますので当社までお越しください。」

球は手紙を読み終えたあと、合格通知書をビリビリと破いてしまった。

「色々経験させてくれてありがとう。世の中、色々あるなあ・・・」












球ちゃんはOLさんとレースクィーンさんの両方をこなすスーパーガールです。
with G-P-z You's Photo Site~
当サイトでは以前から球ちゃんの愛称で呼んでいますが、モデル時は【川崎 優】さんで活躍されてます。














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