第5話

 そんなことを考えながらゆっくりと立上がり、目覚まし時計のストップボタンを押した。
 その瞬間、浩治はふと下半身に何やら違和感を感じた。

(!?)

 トランクスの中が乾いた糊がくっついたようにカサカサとしている。
 まるで射精したのに後を拭わずそのまま眠ってしまったときのように。

(夢精?まさか…そんな歳でもあるまいに……)

 浩治はテーブルのアンティックドールを見つめた。
 当然動かない。

(当たり前だよな……)

 やはりただの人形だ。

(じゃあ、昨夜のことは何だったんだ……)

 夢にしてはあまりにも生々し過ぎる。とても夢だったとは考えられない。
 浩治はアンティックドールを手にとり、もう一度眺めてみた。
 やはり別に何の変哲もないごく普通の人形だ。
 そのとき、ちらりとペチコートの白い裾が見えた。
 可愛いフリルが施されている。
 浩治は何気にペチコートの奥を覗きたくなった。
 スカートとその下のペチコートをめくると、純白のドロワースが見えた。
 昔の西欧の女性下着で現代のパンティとはデザインが全く異なる。
 ドロワースをよく見ると、浩治は何やら異変に気づいた。

(あれ…?)

 パンティで言うところのクロッチに当たる部分が、湿っていてかすかに変色している。

「そんなバカな……人形の股間が濡れるなんて……」

 浩治は悪趣味と知りつつも湿った部分に触れてみた。
 するとねっとりとした粘着性のある感触が指に伝わってきた。

「なぜ……?どうして人形の股間が湿るのだ?それに少し変色しているし……」

 浩治は大胆にも人形のドロワースを脱がせてみた。

「えっ!?うそ……!!」

 驚いたことに人形の股間にはまるで本物のようにくっきりと縦線が走っており、しかも露が滴っていた。
 無毛ではあるが人形の秘所は実に精巧にできている。
 まるで人間の女性の性器を間近で見ているようだ。
 浩治は顔が真っ青になり、手に持っていたアンティークドールを床に落としてしまった。

 ◇ ◇ ◇

 それから6日間は特に変わった事もなく穏やかに過ぎていった。
 そして7日目の夜、浩治に次の登板日が訪れた。
 試合が終わり帰りのバスに乗り込もうとしたとき、また例の女の子“球”が現れた。
 今日は花束を持っていて、前回と同様にバスに乗る直前浩治に手渡した。
 浩治は笑顔で花束を受け取った。

「先日可愛い人形をありがとう……」
「いいえ…私のこと憶えてくださってたんですか。とても嬉しいです……」

 時間がないため一言交わしただけで、浩治はバスに乗り込んだ。

 ◇ ◇ ◇

 その後登板する前夜になると、いつも例のアンティークドールが球に変身し彼のベッドへとやってきた。
 そしてめくるめく蜜のような夜を過ごした。
 不思議なことに球の現れた翌日の試合において、浩治は必ず勝利投手を掴んでいた。
 しかもそれらは全て完封勝利というおまけつきであった。

 ◇ ◇ ◇

 1ヵ月ほど過ぎた頃、浩治は試合終了後バスの車窓から外を見廻した。
 あの球という女の子が現れないかと。
 いつの頃からか彼女は球場へ顔を見せなくなってしまっていた。
 そればかりか、試合の前夜、アンティークドールが女性に変身し浩治と交わることもなくなった。

(彼女はいったい誰……?それにあのアンティークドールにはどんな謎が秘められているんだろう……?)

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kyu







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『with G-P-z You's Photo Site』
ふだんOLさんでありながら
休日はレースクイーンやキャンギャルを
こなすスーパーガール球ちゃん
(モデル時は『川崎 優』さん)










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