第1話

 アナウンサー「ガイアンツ対ワンダーズの試合はガイアンツが3対0とリードのまま9回を迎えましたが、下原投手の球威は全く衰えを見せず、すでに2人のバッターを三振に仕留め早くも2アウトとなりました。そして迎えるのはワンダーズ主砲の力山。これが最後のバッターとなるのでしょうか。
 カウント1ボール2ストライクから下原投手が振りかぶりました!速球が内角低めに投げ込まれ力山のバットは空を切りました!空振り!空振り三振です!完封です!完封勝利です!下原投手お見事!今年5回目の完封勝利をあげました!何と最後の1球は155キロを計測しました。恐るべし下原投手のスタミナそして制球力。それでは早速、ヒーローインタビューに移りたいと思います。吉野アナウンサー?準備ができましたか?」

 今シーズン早くも10勝をあげ投手部門のハーラーダービーのトップを走る下原浩治投手(24歳) 。
 試合が終了し帰りのバスに向う浩治に勝利を祝福する声援が飛び交い、多くのファンたちが争ってサインを求めた。
 そんな中混雑から少し離れてポツンとひとりの女の子がいた。すらりと背が高く愛くるしい顔立ちの少女であった。
 年齢はまだ18歳か19歳くらいであろうか。
 浩治は試合直後でもあり詰め掛けるファンへのサインは早めに切り上げバスへ乗り込もうとした時、ふとその女の子の姿が目に飛び込んできた。
 女の子はニッコリと微笑みながら、彼の元へと駈け寄ってきた。
 そして抱えていた人形を浩治に差し出した。おそらくファンとしてのプレゼントなのだろう。

「あのぅ……私、球(きゅう)と言うんですぅ。浩治さんの大ファンなんですぅ。今日は勝利おめでとうございます。この人形、受取ってもらえませんか?」

 浩治はファンからぬいぐるみをプレゼントされたことは度々あったが、アンティークドールをもらうのは初めてであった。

「うわぁ~、立派な人形だね。こんな高価なものもらっていいの?」
「ぜひ受け取ってください」
「そう?もらっていいの?じゃあ、遠慮なくいただきます。この人形を君だと思って大事にするからね」
「えっ!?私だと思ってくれるんですか?わぁ!とても感激です!私、すっごく嬉しいです~!」
「また球場に遊びに来てね。じゃあ、どうもありがとう!」

 他の選手がすべてバスに乗り込み浩治を残すのみとなってしまったため、球との会話もそこそこに急いでバスへと乗り込んでいった。
 最前列のシートがまだ空席だったので、浩治は最前列の窓側に腰をかけた。
 小脇に抱えていたアンティークドールがあまりにも目立って、浩治は周囲から何やら冷やかされているようだ。
 彼は照れくさそうにしながら何やら受け答えしているが、ガラス越しなので話の内容が全く分からない。

 浩治たちを乗せたバスはまもなく発車した。
 浩治は窓から多くのファンたちに手を振っている。そんな彼の目が一瞬球を捉えた。
 球は浩治の方をじっと見つめている。そしてにこやかな表情で手を振っている。
 バスが見えなくなるまで球はずっと手を振っていた。

 ◇ ◇ ◇

 マンションに戻った浩治はすぐに風呂場へと駆け込んだ。
 試合終了後、一応ロッカールームでシャワーを浴びたが、やはり自宅でゆっくりと湯に浸かって身体をほぐさないと芯から疲れが取れないのだ。


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ふだんOLさんでありながら
休日はレースクイーンやキャンギャルを
こなすスーパーガール球ちゃん
(モデル時は『川崎 優』さん)










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