第5話「緊縛された三人」

「イヴ、すまない……こんなことになるなんて……」
「気にしないで縛って。今、変に逆らうともえもえちゃんが危険だわ。あの男、冗談じゃなさそうだし。私のことは心配しないで」

 まさかこんな場所で恋人であるイヴを縛ることになるとは……
 衣服越しではあるが、イヴの柔肌に縄目がグイグイと食い込んでいくのが辛い。
 縄を掛ける俊介の指が歯痒さで小刻みに震えている。
 
 イヴの両手を柱の後ろ側に縛りつけた俊介に向かって、源蔵は休む間もなく次の指示を与えた。

「両手はしっかりと縛ったか? 次は足を縛れ。そこに青竹があるだろう? 両足を大きく広げさせて青竹に固定させろ!」
「くっ! な、なんということを……」

 指示に従わなければおそらく女性たちに危害が及ぶだろう。
 俊介は泣く泣くイヴの足を青竹に固定し始めた。
 右足を結わえ、そして左足も結わえ終えた。
 開脚した体勢からは今日イヴが着用しているベビーピンクのショーツがすっかり見えている。

「グッヒッヒ、実にいい眺めだ、パンティが丸見えだな」

 屈辱的な体勢で拘束され、見知らぬ男に浴びせられた台詞にただうつむくしかないイヴ。
 別に悪くもない俊介の口からから漏れる謝罪の言葉が虚しい。

「イヴ、許してくれ……」
「いいのよ」

 その時……

「きゃあ~~~っ!」

 俊介の背後でもえもえの悲鳴が聞こえた。
 振り返ってみると、源蔵がもえもえのトレッキングスカートの中に深々と手を差し込んでいるではないか。
 下着の中まで指をこじ入れているいるのか、スカートの前面が盛り上がりもぞもぞと蠢いている。
 もえもえは恐れおののき青リンゴのような初々しい身体を震わせている。

「お願いだ、その子はまだ16才なんだ。許してやってくれ」
「グッヒッヒ、それはできない相談だな。あまりガタガタと騒ぎ立てると斧でこの娘の割れ目を広げてやるぞ。グッヒッヒッヒ……」
「ううぐっ……何と恐ろしいことを……」

 威嚇だとは思うがその狂気じみた脅迫に、俊介としては沈黙せざるを得なかった。

「おい、小娘。このタオルであの小うるさい先生の口を塞いでやれ」
「そんなことはできま……」
「おおっと、俺に逆らっていいのか? できないというんだな?」

 俊介はもえもえに早くタオルで口を塞ぐよう促した。

「もえもえ、男のいうとおりにした方がいいよ。僕の口を塞いで……早く」
「しゃ、車野先生……は、はい……分かりました……」

 源蔵は薄汚れたタオルをもえもえに手渡した。
 警戒心の強い源蔵はもえもえから斧を放そうとしない。
 もえもえの後をまるで金魚の糞のようにしつこく着ききまとい、もえもえを厳しく監視する源蔵。

「車野先生、ごめんなさい……」

 もえもえはそうつぶやくと俊介の前で泣き崩れてしまった。

「泣かないで、もえもえ。気にしないで早く僕の口を塞いで」
「クスン……はい、車野先生……分かりました……」

 もえもえは手で涙を拭いながら、俊介の背後に回り込むと口にタオルをあてがった。

「車野先生、呼吸はできますか?」
「うぐ……う……ん」

 俊介は頭を縦に振る動作を見せる。

「車野先生……ごめんなさい……」

 源蔵が嫌味な微笑みを浮かべる。

「先生と生徒の愛情物語か? けっ、つまんねえ。ところで男先生よ、おまえの口は静かになったが、俺が斧を置いた瞬間に跳びかかってくるかも知れねえな。従順を装ってはいるが、その反抗的な眼付きだと何をやらかすか分からねえや。おまえも女先生と同じように縛った方が良さそうだな」

 源蔵はもえもえと俊介を斧をかざして追い立て、小屋の隅に連れていくと古びた戸板をイヴの目の前に運搬させた。
 戸板はかなり劣化しておりところどころが壊れ穴が開いている。

「おい、男先生よ。戸板の上で仰向けに寝てもらおうか」

 俊介は苦々しい表情で源蔵の指示に従った。
 今は源蔵の指示に従うよりほかに方法はないだろう。

 源蔵は仰向けに寝転んだ俊介を大の字にさせ縄で固定してしまった。
 さらにはもえもえの手首にも縄が巻かれる。

 その時、イヴが聞こえよがしにつぶやいた。

「ふん……卑怯な男ね。縛らないと何もできないんだから」
「何だと? もう一度言ってみろ!」

 言うが早いか源蔵の平手が飛んだ。

「うっ……!」

 イヴの表情が歪む。
 
「うぐうぐぐぐっ!」
「やめてっ! 早乙女先生を殴るのはやめてください!」

 もえもえはイヴのところに走り寄り身を挺してイヴを庇った。
 戸板に緊縛されている俊介は源蔵を睨みつけてもがいている。



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