本編はフィクションです









第6話

 俊介はリビングルームに入ると、テーブルにプレゼントのピアスとブーケを置いた。
 ふとテーブルを見ると1枚の写真が写真立てに入れて飾ってあった。
 それは今年の夏ふたりで湘南に遊びに行ったときに撮ったものであった。
 俊介は写真立てを手にとりじっと見つめた。

 ◇

 カフェでサンドイッチとアイスティーだけの簡単な昼食をとったイヴリンは、休憩もそこそこにCMの撮影現場へと向っていた。
 今は歌手として名を馳せたイヴリンだが、元々は女性雑誌『Dan Dam』の専属モデルだったこともあり、カメラを向けられることには慣れていた。

 今回の内容は来年春から発売される新しい飲料のCM撮影であった。
 通常CM撮影を行なう場合にはいつも専属のスタイリストが同行していた。
 彼女は今年35歳になる女性で、イヴリンの服飾や写真撮影の準備、手配等を担当し、現在のイヴリンにとっては欠かせない存在となっていた。
 ところが事務所から「緊急に打合わせしなければならない仕事があるので直ぐに戻ってきて欲しい」という連絡が入ったため、彼女は急遽帰ってしまった。
 やむを得ずイヴリンは単身撮影現場に赴いたが、幸い現場にはカメラマン以外に臨時のスタイリストが予め準備していた。

 さすがカメラ慣れしたイヴリンだけあってカメラマンの指示にもてきぱきとこなした。
 過去数々の撮影を経験していることもあって、CM撮影にもさしたる緊張感は見られなかった。
 カメラマンは初めて見る顔で、名前は風田速夫といった。
 長髪をポニーテールに束ね、サングラスを掛けていた。
 痩せぎすで顎には髭をたくわえ、独特の風貌を醸し出している。
 イヴリンは休憩時間中スタッフに尋ねてみた。

「ねえ、あの風田っていうカメラマン、見慣れない顔ね。あなたよく知ってるの?」

 カメラマンとは対照的によく太った恰幅のよい男が首を傾げながら答えた。

「いえ、実は僕も初めてなんですよ。何でも社長が当初予定していたカメラマンを強引に引っ込め、あの風田って男を急遽抜擢したって話なんです。何か事情でもあったのでしょうかね?」
「え?社長が…?」

 イヴリンの表情が急に険しくなった。
(あの嫌な社長の差し金なんだわ…。これは気をつけなくては…。)

「そうなんだ。ありがとう。さあ、それじゃわたし準備するね。」

 風田は寡黙でイヴリンを見つめる瞳には淫靡さが漂い、どことなく陰湿な感のある男であった。
 ただアシスタントが自分と同年代の若い女性であったことが、イヴリンにとってはわずかに救いであった。
 風田は気難しい男なのか、撮影中はスタッフですら気が散るから部屋を出て行って欲しいと要求した。
 スタッフはやむを得ず風田の意向に従った。

 イヴリンは手にドリンクを持ち、立ちポーズ、座りポーズといくつかのポーズをこなした。
 ところが風田と言う男は細かな動作に至るまで注文が多く、気に食わないとイヴリンの身体に触れて指導を行なった。
 セクハラともいえるような彼の動作にイヴリンは強い不快感を感じたが、もしかしたらそれが彼の仕事のスタイルかも知れないし、自分が我慢をすることによって良い写真が撮れるならばそれはそれで仕方がない、とイヴリンは考え堪えることにした。
 それにカメラマンとマンツーマンとはいっても、彼のそばには若い女性のアシスタントがいる。それもイヴリンを安心させる要因のひとつであった。
 ところが、風田がかなり露骨にイヴリンの胸や尻に触っても、アシスタントは全く無関心を装っていた。

 イヴリンにとっては不満な状況といえたが、撮影はそれなりに順調に進行した。
 既に相当な枚数を撮ったはずだ。
 始まってから1時間ほど過ぎた頃、風田がイヴリンにつぶやいた。

「イヴリンさん、もうちょっとだ。さあ、最後はドリンクをグッと飲むところを撮るから美味しそうな顔をしてね。」
「はい。」

 イヴリンはポーズを決めてドリンクを傾けた。
 風田はイヴリンの斜め45度の角度から屈んでシャッターを切った。

「う~ん…どうも思うように撮れないな。イヴリンさん、すまないけどもう1本飲んでくれるかな?」
「え?もう1本飲むんですか?お腹が膨れそう…。あ、いえ、分かりました。それじゃあ。」

 イヴリンが助手からドリンクを受取った時は、手回しよくドリンクの蓋は開封されていた。
 イヴリンは再びドリンクを飲み始めた。
 シャッターを切る音がスタジオ内に響く。

「はい、イヴリンさん、おつかれさま。それじゃ一旦休憩にしましょうか。この後、バックの景色を変えてもう一度撮りますので。あと1時間くらいで終わるからね。」
「は~い、おつかれさま~。」

 椅子に腰を掛けたイヴリンは突然睡魔に襲われた。
(どうしたんだろう?昨夜、そんなに夜更かしをしていないのに…。)
 つい出そうになる欠伸を手で押さえて我慢した。
(ああ、困った…すごく眠い…)
 視界がだんだん狭くなっていく。
 イヴリンは堪りかねてテーブルに肘をつきうとうとし始めた。
(ああ、いけない、寝ちゃいけない…仕事中なのに…)
 襲い来る睡魔にイヴリンはついに屈してしまった。
(ガクンッ!)


第7話

 急激な脱力感が全身を襲い、あえなくイヴリンはテーブルに顔を埋めて眠ってしまった。
 テーブルの冷ややかな感触も深い眠りに就いたイヴリンを眠りから呼び覚ますほどの効果は期待できなかった。

「あれれ?イヴリンさんは仕事中なのにオネンネか?困るんだよな~、まだ撮影終わってないのに。」

 風田が腰を屈めイヴリンを覗くようにしておどけた表情でつぶやいた。
 助手の美樹が微笑みながら風田に語り掛けた。

「うふふ、風田チーフ、うまく行きましたね。」
「本当だね。こんなにうまく行くとはね。ふっふっふ…可愛い寝顔をしているね。ふっふっふ…社長もぞっこん惚れるはずだよ、この美貌じゃ。」
「風田チーフ、そんな悠長なことを言っている場合じゃありませんわ。次の行動に移らなくては。」

 美樹は頬を緩ませイヴリンに見とれている風田に催促した。

「うん、そうだな。じゃあ、予定どおり君は撮影のスタッフにうまく説明しておいてくれ。僕は今からイヴリンをクルマに運び込むから。」
「分かりました。では。」

 風田はスタジオの裏側にある勝手口のドアを開いた。
 まだ6時前だと言うのに、外はすでに夕闇が訪れていた。
 風田は裏に停車中のワゴン車にイヴリンを抱きかかえるようにして乗せた。
 イヴリンがいくら華奢だとはいっても、眠っている人間をクルマに運び込むのは結構骨が折れる。
 イヴリンを後部座席に乗せた後、両手、両足をロープで固定し、さらには厳重に目隠しと猿ぐつわまで施した。


 その頃、助手の美樹は撮影スタッフに滑らかな口調で偽りの説明をしていた。

「イヴリンさんは風邪をこじらされたようです。頭痛を訴えておられるので今から風田チーフといっしょにが自宅まで送って参ります。撮影のほうはほぼ終わったのでCM製作には支障がありませんのでどうぞご安心ください。」
「いえいえ、風田さんやあなたに送っていただくのは筋違いというものです。僕たちがお送りしますので。」
「ありがとうございます。でもここは男性ばかりの皆様より私のような女性が1人いたほうが、イヴリンさんも安心されると思います。風邪薬のせいもあってすごく汗をかいておられ、胸元もはだけていますので。」
「え…そうなんですか…」

 美樹の言葉に撮影スタッフも返す言葉が見つからなかった。

「分かりました。僕たちも責任がありますのでイヴリンさんを自宅までお送りすべきところですが、そんな事情であればここはお任せいたします。では申し訳ありませんがイヴリンさんをどうぞよろしくお願いします。」
「はい、お任せください。では…。」


 美樹は撮影スタッフにそう告げると、すぐにスタジオ内に戻りドアを閉めてしまった。
 スタジオ内はすっかり人気が無くなっている。
 ステージを照らすスポットライトが対象物の無いまま空しく床を照らしていた。
 スタジオに残されていたものはイヴリンのバッグと飲み掛けのドリンクだけであった。

 美樹は今年28歳になる。鼻筋の通った美しい顔立ちの女性であったが、どこか冷たさが漂っていた。
 美樹はイヴリンの置き去りにしたバッグを持ちスタジオを出ていった。
 運転席には既に風田がハンドルを握って待機していた。
 美樹が後部座席に乗込むとクルマはすぐに発車した。


 クルマは高速道路を猛スピードで駆け抜けて、郊外のにあるとあるラブホテルへと入っていった。
 駐車場は部屋と一体型の立体駐車場で、部屋毎に駐車場が付いているため他のカップルと顔を合わせる心配が無かった。
 料金も室内の自動精算機に表示された額を帰りに投入すれば良いシステムになっている。

 風田たちはイヴリンを抱えたまま7階へと向かった。
 彼らが目指した部屋は701号室だったが、意外にも同室の前で立ち止まりドアをノックした。

「入れ。鍵は開いている。」

 室内から低い声が響いた。
 声の主は何と遠山プロダクションの代表遠山社長であった。

「ご苦労だったな。」

 ようやく目的の獲物を手中に収めた歓びからか、眼鏡の奥からキラリと淫靡な光を放ち微笑を浮かべた。
 大柄な恰幅のある体型で頭頂部が見事に禿げ上がっているのが彼の特徴だ。
 性格は蛇のように陰湿でねちっこく、そのずる賢さは業界でも悪名が轟いていた。

 風田と美樹は眠っているイヴリンを室内に運び込みベッドに寝かせた。

「さて、これで一応約束は果たしましたよ、社長。」
「うん、じゃあ…」

 遠山はポケットから銀行のロゴの入った封筒を差出し風田に渡した。
 封筒はそこそこ厚みがありずっしりとしている。
 風田は封筒を受取りにっこりと笑った。

「ありがとうございます。約束の金は確かにいただきましたよ。でも…」
「なんだ?まだ金が不足なのか?」
「いえいえ、イヴリンの運搬代金は今貰いましたけど…。でもね、分かっておられるとは思いますが社長がやったことは誘拐・監禁になるんですよね。まあ俺たちもその片棒を担いだわけですが。しかもこれからの社長の行動次第では強姦罪っておまけが付くかも知れませんねえ。がっはっはっは~!」
「くっ…君は一体何をいいたいんだね?私をゆする気か?あといくら欲しいんだね!?」
「まあまあ、そう早合点するんじゃないっすよ。もっと金をくれなんて誰も言ってませんよ。」
「じゃあ、何が目的なんだ」
「社長って勘が鈍いですね。えへへへ、そこでオネンネしているイヴリンさんですよ。」
「ぬぬっ?な、なんだと!?イヴリンをどうしようと言うのだ!?」


第8話

「社長がこれからしようとしていることを手伝わせてくれるだけでいいんですよ。」
「な、なに~~!?お前はイヴリンを抱こうと思ってるのか!?」
「そりゃあ当然ですよ。イヴリンと言えば同様にモデル出身の亜里奈と並んで男たちの憧れじゃないですか。抱きたくない男なんて先ずいないと思いますよ。でも…」
「でも?」
「でも目的はもっと別のところにあるんですけどね。」
「なんだと?」
「社長は憶えていますよね?このイヴリンが上京したあとオーディションを受けて1位で合格した時の事を。」
「そりゃあ憶えているさ。イヴリンは当時から際立っていたからね。美貌、プロポーションは群を抜いていたしそれに歌も目立って上手かったしね。滅多にいない逸材だと思ったよ。」
「さすがによく憶えていますね。ところでその時2位になった子も憶えていますかね?」
「いや…忘れたよ。記憶にないね。」
「ふっふっふ、やっぱりそうですか。憶えてなくても仕方がないですけどね。だって7年も前のことですしね。当時イヴリンが17歳、そしてここにいる美樹が21歳だった・・・」
「な、なんだって!?ま、まさか、あの時の2位の子がその女性だったというのか!?」
「そういうことですよ。イヴリンの華々しいデビューに比べると、この美樹は実に影が薄かった。モデルとしても歌手としても結局成功しなかった。その後、オレのところへカメラマンになりたいっていって来ましてね。今はオレの助手を立派に務めぼちぼちやってます。もちろんオレの下の方の助手でもありますけどね。ははは~。」

 風田が美樹についての経緯を語り終えると、タイミングを計ったかのように美樹がぺこりとお辞儀をした。

「社長、その節は大変お世話になりました。イヴリンがいなければ恐らく私が1位になっていたでしょう。今頃、押しも押されもしない不動の位置を築けていたと思います。でも、彼女がいたせいで良い曲も与えてもらえなかったし、全く芽の出ないまま歌手生命も断念しなければなりませんでした。全てこのイヴリンのせいで・・・。だから、せめてイヴリンにはお返しをしなければ気がすまないんですよ。」
「なんだって?ということは復讐するということか!?それはだめだ!イヴリンは我がプロダクションの大事な商品だ。断じて君たちに手を出させる訳にはいかないよ!」

 血相を変えて拒む遠山社長に風田がすごんでみせた。

「そんな強気なことをいってもいいんですかね?社長さん。あんたは1人の女性を誘拐したんですよ。バレてもいいんですね?せっかく築き上げてきた今の地位がもったいないと思うんですけどねえ。」
「くっ、このワルが…。よし分かった、仕方がない。お前たちの好きなようにしろ。ただしイヴリンに絶対に傷だけはつけるなよ。」
「ふふふ、分かってますよ。オレも美樹もそんなにバカじゃありませんからね。」



 午後9時、俊介は真っ暗の部屋で電気も点けないでじっとイヴリンを待っていた。
 約束の8時はもうとうに過ぎてしまっている。イヴリンはいったいどうしたのだろう。
 今まで俊介との約束を一度も破ったことがない。
 よほどの急用ができたのだろう。
 それとも撮影が予定通りうまく運ばず何度も撮り直しをしているのだろうか。
 俊介はスタジオに電話をかけてみた。
 しかし電話口には誰も出ず、留守を告げる無機的なアナウンスだけが流れていた。
 俊介は妙な胸騒ぎがした。



 天井からピンと張り詰めたロープが1本垂れ下がっており、その下にはひとりの美女が両手を縛られ吊るされていた。
 しかも両足は閉じられないように青竹に足首を括りつけられ、強制的に約50センチの開脚姿勢を強いられていた。
 それは美女が少林寺拳法の有段者であることを、身を持って思い知らされた男の防衛本能がそうさせたのだろう。
 2人の男と1人の女が獲物を仕留めた狩人のように、満足そうな表情で緊縛された美女を見つめていた。

「それにしても見事な身体をしているじゃないか。見ているだけでよだれが出そうになってくるよ」
「こんなことをしていったい私をどうしようと言うの?早く縄を解いて!」
「素直に私に抱かれていればいいものを、私に逆らうからこんなことになってしまったんだよ。まあ身から出た錆ってことだ。悪く思わんでくれ。ふっふっふ…」

 遠山が舌なめずりをしながら、身動きの取れないイヴリンに囁いた。
 イヴリンが身に着けていた衣服はほとんど剥ぎ取られ、下半身にわずかにTバック1枚のみを残していた。
(あの時飲んだドリンクに睡眠薬が入ってたんだわ…ああ、しまった…)
とイヴリンは深く後悔をしたがすでに後の祭であった。
 遠山は自分の顎を擦りながらにやにやと嫌らしい笑みを浮かべている。
 風田がイヴリンを見つめながらつぶやいた。

「社長のおっしゃるとおりほんとに見事な身体をしてますね。着衣でもある程度分かったけど、脱いだら更に凄い。社長がいかにイヴリンにご執心か、今よく分かりましたよ」
「ふふふ、そうかね」

 流れるように美しいボディライン、お椀型をした胸の双丘、見事にくびれた細いウェスト、カモシカのように引締まった大腿部。さらに透き通るように白い肌、そしてその肌の木目の細かさ…持ち前の美貌は言うに及ばないが、肉体そのものもいずれのパーツをとっても超弩級といえた。
 見る男たち全てを悩殺するだけの素晴らしいボディの持ち主であることは、誰しも否定できなかった。
 それゆえに同じ女性である美樹としては、非の打ち所のない美貌を持つイヴリンに対して嫉妬の念を抱いたとしても不思議ではなかった。


第9話

「ふん、何よ。ちょっときれいで人気者だからっていい気になってんじゃないの?イヴリンちゃん。」

 美樹が鼻で笑いながら横合いから割って入り、イヴリンの乳首を摘みギュッと捻じ上げた。

「い、痛い!」

 イヴリンは小さなうめき声を漏らし、ショートボブの髪を振り乱した。
 髪は茶髪というよりむしろ紅色といった方がぴったりくる。

「おい、美樹、やめろ。イヴリンに傷を付けてはいかん!」

 乱暴に振舞う美樹を見かねて遠山の叱声が飛んだ。

「ふん、いいのよ、これぐらい。この女、乳首を捻られたぐらいじゃへこたれないわ。」
「いいからやめろ!」
「はい、分かりました。」

 美樹のふてくされた様子に苦笑いを浮かべていた遠山が、突然何か閃いたようで美樹にぽつりとつぶやいた。

「そうそう、美樹君、ちょっと君に手伝ってもらいたいんだがね。」
「私が社長のお手伝いを?どんなことをすればいいのですか?」
「うん、君は女だから当然同性の性感の壷は知り尽くしているな?」
「知り尽くしていると言えるかどうかは分かりませんけど、私もそれなりの経験はありますので大体は分かっているつもりですが…。で、何をすれば?」
「ふむ、このイヴリンの感じそうな場所を愛撫してやってくれるかね。ああ、それから風田君、君は写真を頼むよ。専門だし。」

 美樹は微笑を浮かべ頷いたが、風田は不満な表情を露骨に見せた。

「チェッ、何だよ。俺は写真だけですかぁ。面白くないね~。」
「まあまあ、そう怒るなよ。美味しいところは後から君にも分けてあげるから。それとね、その写真は特別の意味を持つんだ。今は言えないけどね。」
「へっ、どうせ、撮った写真でイヴリンをゆすってヤリ続けようって言う魂胆じゃないの?図星でしょうが?」
「その辺は君の想像に任せるとしよう。とにかく今は言えない。じゃあ直ぐに写真の準備を掛かってくれ。」
「分かりましたよ。」

 風田は一眼レフを手馴れた手つきで準備に取り掛かった。一眼レフはコンパクトデジカメと違って操作ボタンがボディ上面部についていることが多いので、各種のモード、数値設定はカメラを三脚に載せるより前に済ませておかなければならない。一通り設定が終わると三脚を広げて床に立て雲台にカメラを載せて付属のネジでしっかりと固定する。さらに三脚の高さを調節すれば準備完了だ。
 美樹はニヤニヤと意味ありげな笑みを浮かべながらイヴリンのそばに詰め寄った。

「イヴリンちゃん、喜んで。私が殿方に喜んでもらえる身体にしてあげるからね。うふ…」
「何をする気なの!?や、やめて!」

 美樹は直ぐにイヴリンの胸元に触れた。
 整った形状の美しい乳房が同じ女性の手によって揉み解されていく。
 イヴリンは美樹の指から逃れようともがいてはみたが、身体が僅かに動くだけで美樹の愛撫から逃れることはかなわなかった。
 遠山たちは固唾を飲んで様子を見守っている。

 まもなくカメラを構えていた風田がシャッターを切りながら遠山につぶやいた。

「社長、それにしてもイヴリンのおっぱい、めちゃくちゃきれいですね。この胸でどれだけの男を喜ばせてきたのでしょうかね。イヒヒヒヒヒ…」
「うん、確かに美しい。乳首もきれいなピンク色をしているし、肌の弾力性も申し分無さそうだ。これは楽しみだよ。ふふふ…」

 美樹はイヴリンの双乳をゆっくりと揉み始めた。

「くっ…ううっ…」

 イヴリンの乳房は適度な硬さを残し、型崩れすることなく、の同性である美樹の掌で揉みしだかれていく。

「うふふ、いくら感じないようにしようとしても無駄だわ。私の手に掛かればパンティの中が洪水になるのは時間の問題よ。だってレズの経験があるから女の壷は知り尽くしているわ。うふ。」

 指先で桜色の乳首を摘み上げると、イヴリンの身体がビクンと波打った。

「あっ…や、やめて…」

 イヴリンは同性に責められるおぞましさに脅えながらも、意外なことに身体は微かではあるが反応を示していた。
 ふたりの様子を見つめていた遠山はその反応を見逃さなかった。

「女性に責められても感じるとはね。イヴリン、君にはレズっ気もあるようだね。はっはっは~。乳首がツンと勃起しているじゃないか。よし、私も手伝ってやろう。」

 イヴリンの艶めかしい肉体を目の当りに見せつけられた遠山は、早くも男としての本能がふつふつと滾り始めていた。
 美樹はよく心得たもので、遠山に場所を譲り自身はイヴリンの背後に回った。
 憎きイヴリンがこの脂ぎった古狸のような遠山にいかにいたぶられるのか。想像するだけで痺れるような加虐的な快感が美樹の心を支配した。

 遠山は美樹に対しイヴリンの背中に愛撫するよう促し、自身は乳房にむしゃぶりついた。
 故意に卑猥な音を高らかに立てて愉悦に浸っている。
 イヴリンは遠山の稚拙で下品な態度に顔をしかめた。
 乳房への愛撫は美樹のような繊細なものではなく、実に無遠慮で自分本位なものであった。
 揉んでは舐めまわし揉んでは舐めまわし…それを幾度となく繰返した。

(うう…うううぅ…や、やめてぇ…)

「はっはっは…私は君が事務所に来た当初からずっと目をつけてた。いつかチャンスが訪れたらモノにしてやろうと思ってたのさ。ところが君は芸能界を席捲するほどのスターダムに上り詰めてしまった。まあ嬉しい誤算ではあったがね。業界人としては人気スターに成長してしまった君と妙なスキャンダルだけは避けたかったし、全く手が出せなくなってしまったんだよ。だって妙なスキャンダルは人気スター・人気モデルにとっては致命傷だからね。それは長い間この世界に君臨してきた私だから痛いほど分かっているのさ。ところが先日、君は彼氏との噂が発覚してしまった……だから仮に今回、君とのことが発覚したとしてもマスコミは大して興味を示さないだろうからね。つまり私個人にとって今回は絶好のチャンスなんだよ。分かるかね?ふふふふふ。このチャンスは逃さないからね。ぐっふっふ。」


第10話

 イヴリンは魔手から逃れようと身体をくねらせ懸命にもがいてみせた。
 遠山は柔肌の感触を楽しむようにゆっくりと乳房を揉みながら、さらには乳頭をも責め立てる。

「ひぃぃぃ……やめて、お願いだから……」
「じゃあこっちはどうかな?」

 遠山は乳房への責めを美樹に譲り、自らは閉じることのできない股間へとその手を伸ばした。
 薄い布切れの上に指を宛がうと、凹みを確かめるかのようにゆっくりと指を動かせてみせた。

「や、やめてっ……お願いです……」
「今さらそれは無理な注文だねえ」

 指の動きが滑らかさを増していく。

「あっ、やめてっ……け、けだもの!やめて~~~!」
「けだものってか?ははは、それじゃご期待通りけだものになってやるか」

 遠山はにやりと笑うと本格的に指を律動させた。
 最初イヴリンの口から突いて出るのは拒絶の言葉ばかりであったが、そこは悲しい女の性と言うべきか、遠山の円熟した指さばきの前に、頬はうっすらと赤みが差しやがて悩ましげな喘ぎ声へと変わっていった。

「うふ、イヴリンったら、社長の愛撫にもうトロトロになってしまってるじゃないの。社長のことが大好きなのね。いやらしいわ、パンティに染みまで浮かべちゃって。すごくスケベな子ね~、やだわ、ほんとに。」

 美樹がにやりと微笑を浮かべた。

「ほう、そうなのか?それならもっと気持ちよくしてやるとするか。美樹、それじゃちょっと手伝ってくれないか。君はイヴリンの後に廻ってパンティを上に引っ張り上げてくれ。私は前から上に引っ張り上げる。つまりパンティのシーソーゲームってわけだ。わっはっはっは~!」
「うふふ、すごく面白そう。」

 遠山はTバックのクロッチ部分を細くねじり上げ、グイグイと上に引っ張り上げた。
 Tバックのクロッチは通常のパンティよりも狭いためまるで紐のように変化し、亀裂にきつく食い込んでいく。
 美樹も負けじとTバックを後方から引っ張り上げる。
 さらには引っ張り上げた布地をねじり、遠山の動きと合わせるように脚の付け根の合わせ目に食い込ませていく。

「ううっ・・・」
「どう?イヴリンちゃん。気持ちいいでしょ~?」

 美樹がわざと意地悪な質問を浴びせる。

「うううっ……い、痛いっ……や、やめて……」

 イヴリンは髪を振り乱して必死に恥辱に耐えている。

「わっはっは!これは面白いぞ~。」

 Tバックはすでに秘部を包む役割を果たさず、イヴリンの敏感な部分にぐいぐいと食込んで行く。
 ついには小陰唇がわずかにはみ出し卑猥さを醸し出していた。


 風田はイヴリンに接近し、決定的写真を狙うパパラッチのごとく、瞳を輝かせズームアップでシャッターを炊きまくっている。

「ほほほ、イヴリンちゃん、いい眺めだわ。Tバックが完全に食込んじゃってるじゃないの。気持ちいいでしょ?もっと擦って欲しいの?」

 遠山と美樹はまるでシーソーのように、前後からクロッチの引っ張り合いをしている。

「あ、熱い!やめて、いやぁ~そんなことやめて~!」

 イヴリンは摩擦による熱さに耐えかねて、悲痛な表情で訴えている。

「イヴリン、しっかりと泣けばいい。この部屋は他のホテルと違ってしっかりと防音が施されているんだ。少々大声で叫んだって隣に聞こえない構造になっていてね。君のそのよく通る声を持ってしても無駄だね。ふふふふふ」

 風田は傍若無人な彼らの行動を撮り続けていたが、見ているうちに自身も興奮して来たのか、唾をごくんと呑み込んだ。

「すげえな~。社長、もういいでしょ?イヴリンのその最後の1枚、取っ払ってくださいよ。しっかりとカメラに収めたいし。」
「ははは、そうだな。よし、それじゃいよいよ全部ひん剥くとするか。」
「や、やめて~!いやっ!やめて~、それだけは許して~!」

 遠山はイヴリンのTバックの端に指を掛けると、ゆっくりと楽しむように引きおろした。
 イヴリンは腰を揺すって必至の抵抗を試みる。

 まもなく薄っすらとした股間の翳りが姿を現した。
 Tバックはイヴリンの腰からずり下がり太股辺りで止められた。

 股間の奥にひっそりと息づく秘裂が覆うものものを失い、ついに剥き出しにされてしまった。
 遠山は屈み込んでその秘密の構造を確かめている。

「見ないで、お願い……いやぁ……」

 慎ましやかな秘裂は鮮やかな紅色を呈していて、肌の白さとの懸隔がこの上なく淫靡な雰囲気を醸し出していた。

「ふっふっふ…イヴリン、君はここの色素がすごく薄いね。まるで年端もいかない少女のようだよ。だけどこの愛らしい蕾で何本のソーセージを咥えたのかな?ふっふっふ……」
「い、いやらしいことをいうのはやめて!」

 イヴリンは遠山を激しく睨みつけた。

「ほほう、相変わらず元気がいいね。だけどその元気がどこまで続くかな?」

 遠山は目を細め舌なめずりをしながら、繊細な粘膜に指を伸ばした。
 イヴリンはおぞましい感触に思わず声を張り上げてしまった。



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