チル 流れ星



Shyrock作










7 チルとチルチル

 それにしても自分が城から急にいなくなって、きっと父母もきっと心配しているだろうと少し気掛かりになった。
 だけど、今、すごく楽しい。
 シャロックといい、妹のマリアンヌといい、気さくですごく良い人たちだ。
 城には無い暖かさを彼らは持っている。
 ここにずっととどまることは無理とは分かっていても、少しでも長く居たいと思った。

「ねえ、マリアンヌちゃん、ケーキの作り方教えて? 私も作りたいな~」
「うん、いいよ~。あれ? お姉ちゃん、作ったことないの?」
「へへ、実は初めてなんだ。教えてね?」
「うん、これを絞ってね、そうそう、それから……」

 二人はケーキ作りに励んだ。

 夕方になってシャロックが仕事から戻り、賑やかなパーティーが催された。
 チルも赤葡萄酒を少し飲みすぎて、顔が赤く火照っている。

「シャロック、マリアンヌ、ごめんね。先に休ませてもらうわ」

 ふらつきながら部屋に向かうチルを、シャロックは肩を貸した。
 チルはとくに着替えもしないで、そのままベッドに横になった。

「さあ、マリアンヌ、夜も更けたしそろそろ寝るとするか」
「うん、そうだね、お兄ちゃん。今日は良かったね。すごく楽しいバースデイパーティーだった」
「うん、ありがとう、マリアンヌ、楽しかったよ」
「それじゃ、お兄ちゃん、お休み~」
「お休み」

 シャロックはチルの様子が気になり、眠る前に様子を見に行った。

「チルチル、だいじょうぶか?ふだん、そんなに飲まないのだろう?」
「ふぅふぅ……だ、大丈夫よ……あんなに飲んだの初めてなの」
「ねえ、チルチル、ひとつだけ聞いてもいい?」
「うん、なに?」
「もしも違ってたら、怒らないでね。チルチルは本当は、トゥルース城のお姫様じゃないの?」
「違うわ!私はある男爵の娘です。わけあって家を飛び出して来たの」

 チルはムキになってシャロックに言った。

「そうか……すまない。実はね、今日妙な噂を聞いてね。トゥルース城の姫君が突然消えて、手分けして探しているそうなんだ。それで見掛けたら連絡をしろろと……。それにちょうど一年前に、お城のパーティーに招待され、その時遠目に見たお姫様と何となく似ているような気がしたもので」
「だから、違うってぇ~。私はチルチルよ。チル姫様のことなんて知りません」



前頁/次頁












作品表紙
自作小説トップ
トップページ




inserted by FC2 system