『綾 長安人中伝(ちょうあん じんちゅうでん)』
(2頁)

Shyrock作

人中とは「武将の中の武将」を意味します
本編は三国志の二次作品となっております


球ちゃんが当小説用に描いてくれたイラストです




第11話

 綾は牛車の中で、瞳を鋭く吊り上げ短刀を構えた。
 まさか帰宅の途上で素性も知らない暴漢に襲われ、全員壊滅の危機に瀕することになるとは・・・。
 無念ではあるが、これもまた天が与え給うた運命なのかも知れない。
 それならばせめて散り際だけでも豪傑呂布の恋人らしく、取り乱すことなく立派な最後を遂げようと思った。

 その矢先、どこからか命令を下す甲高い声が綾の耳に入った。
 ふと見ると黄色い戦旗のなびく下で、吊り目でどじょう髭の男が戦扇を振っていた。
 どうも一味の大将格のようだ。

「残る敵はたった1人だ!向こう側の兵は牛車に乗っている女をさらうのだ!いいか!決して傷はつけるな!」

「おお~!」
「承知~!」
「女をひっ捕らえろ~!」

「あ、綾様っ!!」

 林寧は焦った。
 だが自分に切り掛かってくる敵を倒すことで精一杯だ。

 一団は牛車の扉をこじ開け、綾を引きずり出そうとした。
 綾は持っていた短剣で侵入してきた男の胸板をグサリと突き刺した。

「ぎゃあ~~~!」

 不用意に綾に近づいた男が仰向けに倒れた。

「おのれ~!この女が!」
「おい!女に傷をつけるなよ!」
「分かっておるわ!ひっ捕らえてくれるわ~!」

 綾の繰り出す短剣をかわした男は、綾の腕を掴んだ。

「は、放して!」
「でへへへ、気の強い女だぜ。俺を突き刺しのはちょっと無理だぜ。さあ、牛車から出ろ」

 男は強引に綾を牛車から引きづり降ろした。
 必死に抵抗を見せる綾に数人の男が素手で襲い掛かった。

 敵を倒しながら綾の様子に神経尖らしていた林寧は、ついに堪りかねて
 裏側に回り込もうとした。
 つまり敵に背を見せたわけである。
 その瞬間、1人の男が繰り出した槍が林寧の背中を捉えた。

「ぐわ~~~っ!」

 さらに数本の剣が林寧を襲った。

「げっ!うぐぐっ・・・む、無念・・・あ・・・綾様ぁ~・・・」

「り、林寧!林寧~~~!!死んじゃだめよ~~~!!」

 綾の耳に林寧の叫ぶ声が届いた。

「どうして~!?どうしてなの~!?」「うるせえんだよ!」
「大人しくしな!」
「どうしてこんな酷いことをするのよ!!」

 綾は涙声で辺りの男たちに訴えた。



第12話

 綾が持っていた短剣はいつのまにか払い落とされ、四方から屈強な男たちに取り押さえられていた。

「いやあ~~~~~!!は、離して~~~~~!!」
「もう観念しな。もうお前を守ってくれる奴なんて誰もいないんだぜ」
「そうそう、皆、あの世におさらばしたんだ。諦めるんだ」
「いや~~~~~!!助けて~~~~~!!」
「大人しくしねえと痛い目を見るぜ」

 男たちはなおも暴れる綾を荒縄で後手に縛り上げ、綾が乗っていた牛車に押し込んだ。
 綾は横倒しにされ、両脚首もしっかりと縛り上げられ、さらには口に猿ぐつわまで噛まされてしまった。
 1人の男が御者を務め、まもなく牛車はゴトリと動き始めた。

 綾たちが去った後には、生々しい戦の痕跡が残っていた。
 奮闘空しく露と散っていった林寧たちの遺体と、その数倍にも及ぶ敵方の骸(むくろ)が葬られることもなく、藪を通り抜ける風に晒されていた。

 綾を乗せた牛車を中心に男たちは速足で南の方角に歩を進めた。
 隊列の先頭には先程戦扇を振っていた男が馬に跨っている。
 その横を歩く男がニコニコ顔で馬の男に語りかけた。

「地公(ちこう)将軍、作戦は見事に成功しましたなあ」
「全くだ」
「でもまさか、我々の別働隊が村を襲い、呂布の目をそちらに向けさせ、その間隙を縫って呂布の恋人を連れ去るとは、さすがに地公将軍ですなあ。あの馬鹿の呂布とは大違いです」
「はっはっは~、あんな馬鹿呂布と比べられては心外だ」
「あ、これはご無礼を」
「いや、それにしても、あの呂布は単細胞な男だ。分かりやすい」
「ははあ、仰せの通りで」
「確かに滅法強く、剣を持たせばこの国で奴に敵うものがいないかも知れない。しかし、奴には大きな弱点がある。実に単純な性格であることとと、もうひとつは女だ」
「女好きということですか?」
「少し違う」
「と申しますと?」



第13話

「女好きと言うのは、特定の女だけではなくて、女全般に興味を示す男の事を言う」
「ふむ、なるほど。左様ですか」
「呂布は違う。奴は豪傑である上に美男子でもあることから、多くの女にたいそう評判が良いが、自身は一本気な男のようだ。惚れた女以外に興味を示さない」
「つまりなんですな。ここに捕らえた綾以外には手を出さないということですなあ?」
「そういうことだ。宮中の美女からも言い寄られたが、まったく動じなかったと聞く。それほどにこの綾に執心しているというわけだ」
「相当ですなあ」
「うん、おそらく女と言えば、この綾以外眼中にないと思われる」
「なるほど、読めましたぞ。だからこそ、この綾をひっ捕らえ、呂布を誘(おび)き寄せる算段ですな?」
「ふふふ、まあ、簡単に言えばそういうことだ」
「だがそうやすやすと来ますかな?」
「来る。奴は必ずやって来る」

 地公将軍こと張宝は、不敵な笑みを浮かべた。

「楽しみですなあ~」
「全くだ。わっはっはっはっは~~~!」
「はっはっはっ~~~。呂布の慌てた顔が早く見たいものですなあ~」
「必ず見れるさ。わっはっはっはっは~~~!」


 一方、村襲撃の賊を殲滅して凱旋の途に着いていた呂布は愛馬“赤兎馬(せきとば)”に跨り、配下の者達と語らいながらゆっくりと進軍していた。
 自分達が戦闘の間、まさか綾達の身に不幸が襲っていたとは呂布を肇め誰一人想像もしていなかった。

 しかし・・・。

(プツン)

「ん・・・!?」

 呂布の冠っていた兜の顎紐がどういう訳か突然プツリと切れてしまったのだ。
 周りにいた武将が呂布に声を掛けた。

「将軍、どうなさったのですか?」
「うん、兜の紐が切れたのだ。昨夜、紐を取り替えたばかりだと言うのに」
「おそらく今日の激しい戦で傷んでいたのでしょう」
「激しい戦?馬鹿を言え。俺は1人の敵とも剣を合わしてないぞ。今日の敵は野盗のようなうじ虫どもだったし、お前達が簡単に片付けてしまったではないか」
「確かに将軍は指揮を執っておられただけだったですなあ」
「だろう?なのに紐が切れるとはおかしいではないか」
「たまたまそう言うこともあるのではないでしょうか。まあ、あんまり気になされないように」
「うん」



第14話

 綾は窓がなく光の届かない暗い牢獄で、両手を後手に縛られうずくまっていた。
 連れ去られる途中、張宝達の会話を小耳に挟み、彼らが自分を誘拐した目的を凡そ察知することができた。
 宿敵呂布をおびき寄せるために自分を捕えたのだと。
 呂布の性格から考えて、恋人の綾を助けるために血眼になって探し、必ずこちらに向かって来ると・・・。

(きっと何か罠を仕掛けてるんだわ・・・大変だわ・・・どうしよう・・・)

(ガタン!)

 綾が呂布への想いに耽っている時、突然、牢獄の扉が開き看守らしき男が遠慮なくズカズカと入って来た。

「おい、夕飯だ」

 看守は粗末な皿に盛られた食事を綾の前に差し出した。
 皿はよく見ると数箇所欠けている。

「・・・・・・」

 綾は口を真一文字に結わえ、目を吊り上げて看守を睨みつけ、その後顔を背けてしまった。

「なんだ、その態度は。飯いらないのか?」
「・・・・・・」
「両手を縛られてて不自由だから、俺が食わせてやろうと思ってたのに、そうかい、そうかい、いいだろう。じゃあ、そのまま飢え死にしちまいな」
「・・・・・・」

 綾は看守に視線を合わそうとしなかった。
 床を見つめたまま、無言の抵抗を示した。

「じゃあここに置いといてやるから、食いたくなったら這いつくばって食いな。わっはっはっはっは~」
「・・・・・・」

 侮辱の言葉に綾は初めて看守の方を見やり、ぐっと睨み返した。
 まもなく高笑いを残し、看守は牢獄を出て行った。

(バタン)

 空腹ではある。
 だけど食べる気にはなれない。
 それよりも水が欲しい。
 喉が渇いた。
 それと便所はどこにあるのだろうか。
 綾は緊張のあまり微かな尿意を催し始めていた。
 暗い牢獄内をよく見ると、隅の方に便所らしき蓋がある。



第15話

 尿意は気になりだすと一層拍車が掛かるものだ。
 綾はこの際、やむを得ず用を足そうと考えた。
 ところが両手を後手に縛られているため、手で蓋を外すことが出来ない。
 綾は脚を使って蓋をどうにか外した。
 不快な香りが漂ってきた。
 綾は顔を顰めながらも目的を果たそうと考えた。
 しかし下半身を包む衣類が邪魔をして簡単には用を足せない。

 その時であった。
 扉のある方向からカチャリと音がした。
 誰かが牢獄の鍵を開けたようである。
 まもなく3人の男達がズカズカと入って来た。
 張宝とその手下であった。

「おお、これはこれは。用を足そうとしているところであったか」

 張宝は綾を見据えニタリと笑った。

「両手を拘束されていて、何かと不便だろう?何なら手下どもに手伝わせようか?」

 綾は張宝をキッと睨みつけ毅然と断った。

「結構です」
「ははははは、そう意地を張るものではないわ。我慢してもそう長くは持つまい。素直に従うほうが楽だぞ」
「いいえ、結構です」
「ははは、なかなか強情だなあ。それはそうと、お前にひとつ聞きたいことがある」
「・・・?」
「今や董卓の勢いは凄まじい」
「・・・・・・」
「漢王朝を援護するためと欺き、王朝に入り込み実権を奪い取り、都では我が物顔に振舞っておる。自分に歯向かうものは殺害し、正義の名の元に我々を滅ぼそうと企んでおる」
「そんなこと、私は関係ありません」
「ふふふ、確かにそうかも。しかし・・・」
「・・・?」
「その董卓には呂布という天下無敵の将軍がついておる。奴がいるがために、董卓軍は今やこの国最強の軍隊となっておる。今、この国で奴らに勝てるものはおそらくいまい」
「・・・・・・」
「このまま奴らを放置すると、我々黄巾もおそらく滅ぼされるだろう」
「・・・・・・」



第16話

 綾は張宝の蛇のような視線から目を逸らしながらも、彼の言葉から黄巾賊の思惑を確かめようとしていた。

「董卓がこうまで威張ってられるのは何故だか分かるか?綾」
「し、知りません。そんなこと私が知ってるはずが無いでしょう?」
「ふふふ、そうかな?衰退したと言っても王朝は王朝だ。その王朝が勅命を下す時には『玉印』というものが押される」
「・・・・・・」
「その玉印を今持っておるのは董卓だ。つまりヤツの命令は王朝の命令と同じなのだ。その董卓がついに我々黄巾討伐の命を出したのだ!知っているだろう?」
「知りません」
「ふふふ・・・まあ、いいだろう。そこでだ。綾、お前に聞くぞ。董卓は『玉印』をどこに隠しておるのだ?」
「『玉印』なんて知りません!本当です!私はまつりごとに関しては一切聞かされてません」
「ほう、そうなのか?お前は董卓第一の側近、呂布の恋人と聞いておる。さらに」
「・・・・・・」
「お前は歌や踊りに卓越した才があると聞く。そのため、董卓からも好かれヤツの宴席には度々呼ばれ舞っておるとも聞いておる」
「・・・・・・」
「本当は知っておるんだろう?正直に吐け。正直に吐けば、お前の命は助けてやるし、董卓打倒の暁には、私の兄者である大賢良師様の側女に抜擢してやっても良い。どうだ?」
「そんなことを言われても、知らないものは知らないのです!」
「ふふふ、嘘はよくないぞ」

 張宝はそういいながらニタリと淫靡な笑みを浮かべた。

「では、お前の身体に尋ねることにするか」
「!!」

 囁くような小声であったが、綾を威圧するには十分過ぎる言葉であった。
 綾の心は一瞬凍てついてしまった。
 一体自分にどのような蹂躙を加えようと言うのか。
 拘束された不自由な身に・・・。



第17話

「お前は確か用を足そうとしていたな?」
「・・・・・・」

 用を足すとか足さないとか、そんな女性の秘事などこんな野卑な男達には関係のないことではないか。
 そのようなことを尋ねられることすら、綾としては屈辱であった。
 綾は張宝の質問を無視した。
 答える必要など一切無いからだ。
 反抗的な態度に張宝の表情は少し険しくなった。
 張宝は部下の兵士に命令した。

「おい、このお嬢さんは用を足したいらしい。両手が不自由だし、うまく衣服も脱げないだろう。用便を手伝ってやれ」
「はい、わかりました、地公将軍閣下」

 瞬間、綾の表情が青ざめた。
 会話だけの辱めだけでなく、まさか実行してこよとは。
 2人の兵士が綾の両側に回りこんだ。
 そして二の腕をむんずと掴んだ。

「きゃあ~~~!やめて~~~!な、何をしようと言うのですか!?嫌です!絶対に嫌です!」
「将軍閣下の命令だよ。さあ、大人しく俺達に任せるんだ」
「いや!いや!そんなこと嫌です~~~!」

 そんな様子を張宝は舌なめずりをしながら見つめていた。
 両側の男達は綾の下半身が露出するように衣服を脱がし始めた。

「きゃあ~~~~~~!いやいやいやあ~~~~~~!!」

 綾の叫び声は薄暗い牢獄に響き渡った。
 抵抗空しく、綾の雪のように白い肌が次第に露出していく。
 まもなく上着だけを残して下半身を覆う衣服は全て剥ぎ取られた。
 必死の抵抗を試みはするが男達の力には勝てず、便器のある方向へと引き摺られて行った。



第18話

 兵士の1人が便器の蓋を開けた。
 顔をしかめたくなるような腐臭が鼻腔を突く。

「く、くさい!」

 張宝は吐き捨てるように言った。
 囚人用のそれは、張宝が普段使用しているものとは比べ物にならないほど、不衛生で管理も行き届いていなかった。
 張宝はさらに顔を歪めながら部下に命令を下した。

「おい、綾を仕置き部屋に連れて行け」
「はい、承知しました」

 仕置き部屋と聞いた瞬間、綾ははっとした。
 董卓が持つ玉印の在り処を知るために、自分にどのような仕置きをしようというのだろうか。
 綾は青ざめながらも、ほのかに死を決意し始めていた。
 現実に綾は玉印の在り処を知らなかった。
 しかし綾が知っていると思い込んでいる彼らは、綾が白状するまであらゆる加虐を行なってくるだろう。

 綾は瞳を閉じて呂布を想った。
 凛々しい表情の呂布が瞼の向こうに浮かんでは消えて行った。

 仕置き部屋は明るい部屋とは言えなかったが、牢獄よりはかなり明るい。
 しかしその明るさが反って綾を恐怖の渦へと導いていった。
 部屋内部に配備されている見るからに恐ろしい拷問具が綾の目に飛び込んできた。

 綾と両脇から綾を抱える兵士達に続いて張宝が入ってきた。
 そして第一声、破廉恥な命令をくだした。

「先ずは先程の続きからだ」
「はい、承知しました」
「早くさせてやらないと漏らしてしまうかも知れないぞ。ぐふふ」
「全くで。では早速この明るい部屋でさせてやりましょう。ここなら臭くもありませんし」
「先程の匂いには参ったぞ。鼻が潰れるかと思った。では直ぐにさせてやれ」
「はい、承知しました」



第19話

 兵士は張宝に一礼をした後、綾とは反対方向に行き、机上の瓶と湯呑み茶碗を手にし綾の近くまで持ってきた。
 瓶を傾け茶碗に淡い緑色の液体がトクトクと注がれた。
 兵士は綾の口元に茶碗を近づけ飲むよう勧めた。

「おい、これを飲むんだ」

 茶のようにも見えるがよく見ると茶碗の底に沈殿しているのは茶の葉ではなかった。

「これは何ですか」
「薬草がたっぷりと入った茶だ。さあ、飲め」
「薬草って・・・?」
「へへへ、これはなあ、小便が直ぐにしたくなる薬草が混じった茶だ。毒ではない。安心しろ」

 安心しろと言われても安心などできるはずがない。
 それに兵士のいうとおりもしも離尿剤だとしたら、飲めば大変な事になる。
 今はそれでなくても男たちの目前ということもあって、尿意を懸命に堪えていると言うのに。

 しかし兵士は容赦なく、両手を縛られ無抵抗な綾に薬液を飲せてきた。

「さあ、たっぷりと飲むんだ」
「ゲボッ!うぐっ・・・ゴホンゴホンゴホン!ううっ・・・(ゴクンゴクンゴクン)」

 飲みきれなかった薬液は口から溢れだし、美しい衣装の胸元を濡らした。

「ひ、ひどい・・・」

 綾はかなり苦しかったのだろう、涙目で兵士を睨みつけた。
 兵士は綾から視線を逸らしヘラヘラと笑っていた。

「おい、皆の者を呼べ」

 張宝は他の兵士達も仕置き部屋に集まるよう命じた。
 まもなくゾロゾロと男達が部屋に集まって来た。
 数えて見ると14~15人は優にいた。

「なんだ、なんだ、いいものを見せてやるって何を見せてくれるのだ?」
「おおっ!例の美しい女はこの部屋に連れ込まれていたのか。デヘヘ~」
「なるほど大体読めましたぞ。将軍閣下、お招きいただきありがとうございます。私どもも遠慮なくお相伴に預かります」
「おお、おお、皆の者、よく来た。ここに囚われている女はあの憎き呂布の恋人なのだ。名を綾という」

 その瞬間、場内からどよめきが漏れた。

「今から三国一の麗人と噂の高い綾女がご開帳する。存分に見てやれ。がっはっはっはっは~。しっかりと目に焼きつけておくが良い。それから、まだ明かせぬがもうひとつ素晴らしい余興が控えておる。楽しみにしていろ。ふふふ・・・」



第20話

 天井鴨居に縄が掛けられ、垂れ下がった端は綾の両手に巻きつけられた。
 2人の兵士が腰を据えて縄尻を強く引いた。

「ううっ・・・」

 天井から垂れ下がった縄がピンと張り詰め、綾の両手が真上に吊るし上げられた。
 綾の口から苦しげな声が漏れた。
 何人かの兵士が綾を取り囲み、乱暴に衣装を脱がせていく。
 脱がすというよりは引き裂くといった方が適切かも知れない。

「いやっ!やめてっ!脱がさないで!」

 見物している男たちは「早く脱がせろ!」とか「やっちまえ!」等とはやし立て、実に騒がしい。
 瞬く間に衣装は剥ぎ取られ、綾は生まれたままの姿を晒してしまった。
 量感のある乳房は動くたびにユッサユッサと揺れ、引締まった腰と下腹部の黒い繁りが実に悩ましく映る。
 乳白色の餅肌がいっそう艶かしさを醸し出す。

「ふふふ、さすが思ったとおりに美しい肌をしておるわ。よし、脚を拡げろ!」
「はい!将軍!」
「承知しました!」

 綾の両横にいた兵士はそれぞれ、綾の足首をしっかりと握り一気に持ち上げた。

「やめて~~~!」

 綾は精一杯脚に力を込め抵抗を試みたが、鍛えられた兵士の腕力に敵うはずがなかった。
 見物人の視線は黒い繁りの少し下に注がれた。
 女の証である薄紅色の亀裂は開脚によってパックリと口を開け、その内部の桃色の肉襞まで晒してしまった。

 場内は一瞬静まり返り、男達は固唾を飲んで見守った。
 中には綾に近づいて覗き込んでいる男もいて、周りの男達の失笑を買った。

「おい、そこを退け!見えないじゃないか!」

 綾の顔が真っ赤になっている。
 にわかに苦悶の表情を浮かべ、額には大粒の汗を滲ませている。
 吊り下げられる苦しさよりも、先程の薬による激しい尿意が綾を襲った。











image









自作小説トップ
トップページ



inserted by FC2 system