第2話「恐怖の密室」
誰かの悪戯かも知れないが、偶然にしては状況があまりにも合致し過ぎている。
「きゃぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~!!」
恐怖に駆られたありさは狼狽し悲鳴を上げた。
ドアのノブをガチャガチャと廻し脱出を試みる。
「ここから出れないなんて、いやだぁぁぁぁぁ~~~~~~!! お願い! 開いてよぉ~~~!!」
すると……
カチャリ……カタン……
と音を立て、容易に開いた。
「なぁんだ……開いたじゃないの。もう驚かさないでよぉ」
こういう時ホラー映画等であれば開かないものだ。
ありさはホッと安堵のため息をついた。
「きっとどこかのありさちゃんが嫌われて落書きされたんだわ……それにしても同じ名前だなんて……もう、びっくりしたじゃん」
ぶつぶつと独り言をつぶやきながら、トイレを出て洗面所の鏡を見たありさは愕然とした。
「えっ!? な、なにっ!! これって!!」
洗面所の3枚の鏡には、赤い文字で卑猥な言葉が書きなぐられていた。
左側の鏡には
中央の鏡には
右側の鏡には
文字は今書かれたばかりのようで、まだスプレーが生々しく垂れている。
赤いスプレー垂れが血を連想させ、いっそう不気味さを醸しだす。
「だれ? だれが書いたの……? やだぁ……嫌だよおおおお~~~~~~~~~~~~~!!」
ありさは悲鳴を上げながら便所の出口へと駆け出した。
「えっ……? うそっ……!?」
公衆便所に入った時は、確か戸が開いていたのに、今は閉まっている。
「そんなぁ!!」
戸は引き戸になっている。
ありさは戸を引いてみた。
だが開かない。
鍵が掛かっているようだ。
ガッガッ……
力尽くで開こうとした。
「開いてよおおおお~~~~~~!!」
ありさは半べそをかいている。
ガッガッガッ……ガッガッガッ……
力を込めて引いてみたが、戸は無情にも開くことはなかった。
「あぁ、どうしよう……ここから出れないよぉ……」
さきほど目にしたいくつかの落書きが頭に浮かんできて、ありさは恐怖を覚えた。
ガンガンガン!! ガンガンガン!!
「だれか助けてええええ~!! ここから出してよおおおお~!!」
ガンガンガン!! ガンガンガン!!
いくら叩いても扉はびくともしない。
金属性素材が持つ冷ややかな感触がありさの手に伝わってくるだけであった。
「あぁ、弱ったなあ……こんな所に閉じ込められるなんて、とても耐えられないよおおおお……」
ありさはがっくりと肩を落とし悲嘆に暮れた。
「他に出口はないし、困ったなぁ……それにだんだん冷えてきたし……あぁ……公衆便所に寄らなければよかったぁ……」
口を突いて出るのは愚痴ばかり。
ありさは途方に暮れた。