第27話  “シーでローター スイッチオン”

 シャイは思いを巡らせていた。
 ローターのスイッチを押すのはいつどのタイミングがよいかと。
 絶対に作動させてはいけないのは、ありさの飲食中と洗面所利用中だ。
 それ以外いつ作動させても構わないのだが、どうしてやるのがありさにとってベターだろうかと。

「シャイさん?どうしたの?☆★☆」
「うん……?うん、実はね、噂の『センター・オブ・ジ・アース』に乗るので少し緊張してるんだ」
「そうなの?乗ってる最中に大声で叫んだら恐さがマシになるよ☆★☆」
「そうなんだ。でもどうして?」
「大声を出すと自然と深呼吸することになり、その結果、体内に酸素が沢山取り込まれるので『ジェットコースターが恐い』と言うストレスから解放されるんだって☆★☆」
「へ~、じゃあ深呼吸をしようっと。ありさちゃんって物知りだね」
「事務所の女の子からの受け売りだよ~♪ありさが物知りなはずないじゃないの。あははは~☆★☆」

 ありさは意識しないようにしているが、やはり歩きかたがぎこちない。
 一歩進むたびにローターがクリトリスに当たり刺激する。
 まだ一度も振動はしていないが繊細な個所なのでつい気になるのだろう。

 そんなありさに早くも一回目の衝撃が襲来する。
 メディテレーニアンハーバーからミステリアスアイランドに向かう途中の段々畑が見える辺りで突然シャイが道に屈みこんだ。
 靴紐が解けたので締め直しているようだ。
 ありさは数歩先に進んでしまっている。

「ありさちゃん、ゆっくり歩いてて。紐を直したらすぐに行くから」
「いいよ、待ってるから。ゆっくり直して☆★☆」

 三メートルほど離れた場所でありさが振り向いたその時だった。

(ヴィ~~~ヴィ~~~)

 静かな振動がありさのショーツ内に響き渡った。
 あろうことかディズニーシーの園内で、多くの人がいる公衆の場所で。

「あぁ………え?……あっ……んあ…あぁ……あぁぁ……んんっ……★☆★」

 声を抑えようとしているが、かすかに声が漏れてしまう。
 腰を引き足を震わせその場で立ち往生するありさ。
 だけどスカートの上から見ただけでは何が起こっているのか他人からは分からない。

「やっ……あぁ……んん……や……ああっ……★☆★」

 野外ローターは初めなのでシャイは強さを『弱』に設定していた。
 それでもありさが昨夜ベッドの時よりも強く感じるのは何故だろうか。
 今ありさのスカートの中で、ショーツのポケットに忍ばせたローターがクリトリスを刺激していることを知っているのは、ありさとシャイだけだ。
 そんな秘密めいた状況が刺激を増幅させるのかも知れない。

(あぁぁぁ~……すごく気持ちいいよぉ……声を出したいよぉ……でもこんな場所でこんな恥ずかしいことをしていいのかなぁ……☆★☆)

 その時だった。
 ありさの真横を通ったカップルが立ち止まって怪訝そうな表情で彼女を見つめている。
 急病人とでも思ったのか、カップルの女性がありさのそばにやってきた。
 ミニーのリボンカチューシャを頭につけデニムのショートパンツを穿いた二十歳前後の女の子だ。

「あのぅ…だいじょうぶですか?」
「え?……あっ、はい……★☆★」

 危ういと感じたシャイは次の瞬間ローターのスイッチを切ってしまった。

「ふぅ……★☆★」
「……?」
「もう……もうだいじょうぶです……★☆★」
「今日は朝からかなり気温が上がっているので、ちょっと休まれた方がいいですよ」
「ありがとうございます……★☆★」

 ありさが熱中症にかかったと思って気遣ってくれたのだろう。
 心優しいカップルはまもなく去っていった。

「マジで心配してくれてたね」
「うん、やさしい人たちだね。早めにローター切ったんだね?☆★
「うん、あの状況だと切らざるを得ないよね。一回目はおしまい」
「な~んだ☆★☆」
「な~んだ、ってな~んだ。ありさちゃん、ローター期待してたのか?」
「あははは~、思ったより短かったからね」
「その分二回目は長めにしようかな?」
「きゃっ。次はいつかな?☆★☆」
「それはその時のお楽しみ~」

◇◇◇

 人気のコーナーなので長蛇の列を覚悟していたが、案外早くありさたちの順番がやってきた。
 ついに神秘に満ちた地底世界の探検が始まる。
 ありさたちは謎の天才科学者ネモ船長が開発した地底走行車に乗り込む。
 縦三列、横二人の六人乗りで、ありさたちは一番後ろだった。
 ありさが先に乗り込み続いてシャイが手前に乗り込むと、走行車はまもなく動き出した。
「水晶の洞窟」や「発光生物のトンネル」をゆっくりと進み、次に現れたのが様々な生き物が棲む「巨大キノコの森」であった。

「いやぁ~ん、エッチ~♪☆★☆」
「まだ何もしてないんだけど」
「違うよ。あの巨大キノコ形がすごくエロいの☆★☆」
「巨大キノコを見ただけでそんなことを想像するありさちゃんの方がよっぽどエロいよ」

 ありさたちがそんな和やかな会話をしていると、突然地震のような大きな揺れが二人を襲った。

『火山活動発生!火山活動発生!』

 アナウンスとともにサイレンが鳴り響き、何かが崩れる轟音がとどろいた。
 ありさたちを乗せた走行車は軌道を外れて未知の地底奥深くへ迷い込んでいく。

「きゃぁ~~~~~!」
「うわ~~~~~っ!」
「どうなるんだ!」
「恐い!」

 走行車に乗っている六人が口々に叫んだとき、突然ローターが振動を開始した。

(ヴィ~~~~~ヴィ~~~~~)

「え?………こんな時に!?……やんっ!……あんっ!…あぁ……だめっ!……んあんっ!……★☆★」

 ありさがいくら大きな声で喘いでも、場内の轟音とほかのゲストたちの絶叫にかき消されてしまう。

「ぃやん~!だめぇ~!そこだめぇ~~~!あぁぁぁぁ~~~~~!★☆★」


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