第1話 “ディズニーシー”

「シャイさ~ん☆★☆本当にありさに会いに来てくれるの~?☆★☆」
「うん、何とか休暇が取れそうだ。この前はありさちゃんが大阪に来てくれたから、今度は僕が横浜に行くよ」
「嬉しいよ~☆★☆いつ来るの~?☆★☆」
「来週の金曜から日曜に掛けて行こうと思うんだ。突然だけどどうかな?」
「きゃ~~~!☆★☆ありさ、その日空いてるよ~☆★☆というかシャイさんが来るんだったら空いてなくても空けるよ~☆★☆」
「嬉しいことを言ってくれるけど、仕事は大切にしなくちゃダメだよ。じゃあ日程はそれで決まりだね」
「でね、横浜もいいんだけどね、できればディズニーへ行きたいな~☆★☆」
「ディズニーってランドの方?それともディズニーシーかな?」
「ディズニーランドはありさ何度も行ってるの☆★☆シーはねえ、女の子同士でしか行ったことが無いの☆★☆だから男の人と行ってみたいの~☆★☆」
「男の人と?じゃあ僕以外の男でもいいってことかな?」
「そうじゃないよ~☆★☆いっしょに行きたいのはシャイさんだけだよ~☆★☆当たり前じゃないの~☆★☆」
「ははははは~、ごめんね。ちょっと意地悪を言いたくなって」
「もう~、シャイさん時々意地悪言うんだから~☆★☆やっぱりドSなのかな~?☆★☆」
「そうかも知れないよ。覚悟しろ!ビシッバシッ!」
「きゅあ~~~~~~!☆★☆痛いのやだよ~~~~~~!☆★☆」
「ははははは~、電話なのに迫真の演技だね。芝居の練習もやってるの?」
「ううん、ありさは不器用だからモデル以外はできないよ~☆★☆でも時々冗談で事務所の子とコントの真似事やってるの~☆★☆」
「へ~そうなんだ、一度見てみたいな~。それはそうと、僕はディズニーシーは初めてなんだ。この前のUSJのようにエスコートしてあげられないけど構わない?」
「大丈夫だよ~☆★☆東京や千葉はありさに任せておいて☆★☆」
「うん、案内はありさちゃんに任すとして、早速ホテルを予約しなくちゃ。どこか泊まりたい所はある?」
「ありさが泊まりたいのはねえ、夢にまで出てきたホテルなの~☆★☆」
「へ~、夢にまで出てきたんだ。そこはありさちゃんの憧れのホテルなの?」
「うん、超有名だし友達もすごくいいよって言ってたけど、ありさまだ泊まったこと無いの☆★☆いつかシャイさんと泊まりたいなあって思っていたの☆★☆」
「それって何てホテル?」
「え~とね~、名前はね~、ホテル・ミラホスタって言うの☆★☆」

 交際が始まってからすでに二か月が過ぎたが、その間二人が会ったのはたった一回だけと言う寂しさであった。
 居住地がありさが横浜、シャイが大阪と物理的に遠く離れているうえに、それぞれが多忙を極めていることも大きな要因であった。
 日帰りで会うならばもう少しは時間をやりくりできたのだろうが、たまにしか会えないこともあり会う時はせめて一泊ぐらいは……と言う思いが二人にあった。

 二人の出会いはふとしたことから始まった。
 ある日ありさがネットの世界をさまよっていた時、偶然たどり着いたのがシャイの詩のサイトであった。
 ありさは彼が描く独創的な官能詩に惹かれ、夜ごとショーツを濡らし、次第に彼の世界にのめり込んでいった。
 いつも多くの訪問者でにぎわう掲示板に、初めは躊躇していたありさであったが、ある日思い切って投稿をしたのだった。
 内容は平凡で他愛無いものであったが、文章が「全文仮名使い」であるうえに、語尾に「☆印」を多用した独特の文体が多くの読者に強烈な衝撃を与えた。
 ところが奇妙なことに、シャイに送るメールは実にこなれた文章を書き、そのギャップがシャイに強く印象づけたのだった。

(ふむ?掲示板だと軽薄な印象なのにメールだと利発な子じゃないか。彼女は掲示板だとわざと『おバカキャラ』を演じているみたいだ。どうしてかな……?)

 多くの読者は度々掲示板を訪れるありさを「可愛いけど少しおバカな子」と捉えた。
 それはありさが望む処だった。
 やがてありさもシャイの影響で自身も官能詩を書くようになり、彼にその評価を仰いだ。
 詩の添削にはメールではなく、同時進行で会話ができるチャットかメッセンジャーを利用した。
 チャットと言う代物はツーショットで行うと、お互いが理解でき急速に親密になっていく。
 その後、ネットの世界限定だが二人の交際はさらに深まり、まもなくありさがリアルに大阪のUSJを訪れた。

(大阪でのお話はこちら)『ありさ USJに行こう♪』
http://shy8.jp/novel/arisa/usj/cover.html

 そしてついにシャイの東京行きが実現することとなった。
 二人は六月の第一週末に会うつもりであった。
 ところが急遽シャイが仕事で詰まり、次の第二週末もありさに友人の結婚式出席の予定があるため、やむを得ず延期することになった。

「じゃあいっそのこと一か月先になるけど七月に誕生日のお祝いをディズニーシーでしようよ」
「え~~~!?ありさの誕生日憶えてくれてたの~?☆★☆きゃぁ~~~~~☆★☆」
「一度聞いたら忘れるはずないじゃないか」
「嬉しいよ~☆★☆じゃあ七月六日で決まりね。ちょうど週末だし☆★☆ラッキ~~~♪☆★☆」

 結局ありさたちは七月六日の金曜日から七月八日の日曜日に掛けて二泊三日で会うことになった。


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