
第29話「碓氷軽井沢インターチェンジ」
早乙女衣葡と響生悠太が出社するとすぐに社長から直々に軽井沢への緊急出張が告げられた。
「出社して早速で悪いのだが、すぐに軽井沢に向かってくれないか。俊介たちに会って彼らの無事を確認してきてもらいたいんだ。仕事ではなく私事で大変申し訳ないのだが」
あまりに唐突な出張命令に戸惑いを隠せない衣葡と悠太。
ただ、出張先が軽井沢だと聞き、衣葡はありさ夫妻の関連だろうと閃いた。
というのも、ありさは元々同社の社員であり、彼女が俊介と結婚退職した後も衣葡とは親交が深く、衣葡はありさから軽井沢旅行の話は聞かされていた。
「私事ということもあり会社から出張費用を出せないので、これを使ってくれないか」
そう言いながら社長はふたりにそれぞれポケットマネー十万円を手渡した。
「これだけあれば足りるだろう。俊介たちをよろしく頼みます」
社長は深々と頭を下げた。
衣葡は社長にすぐに頭を上げるよう頼んだ。そして明るい表情で語った。
「ふたりはきっと元気ですよ。何か事情があって連絡できないのだと思います。私たちがそれを確かめて必ず社長に連絡をしますので、あまり心配をなさらないで待っててくださいね」
「自動車の方が機動力があって何かと便利だと思うので、会社では自動車出張は禁止ですが、今回は僕の自動車で行くことを認めてもらえませんか?」
「もちろん認めます。よろしくお願いします。くれぐれも事故には気を付けてね」
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自動車は渋滞もなく、上信越自動車道を西に進んでいた。
碓氷軽井沢インターチェンジまではもうすぐだ。
碓氷軽井沢インターチェンジを下りれば、俊介たちの別荘がある旧軽井沢まで二十分程度で到着する。
「響生君はありさちゃんと同期なのね?」
「はい、同期入社です」
「彼女は同期の中でも特に目立っていたでしょう?」
「はい、美人だし明るいしそれによく気が利くので同期のマドンナ的存在でしたね。でもすぐに車井原課長と結婚して辞めちゃったから皆ショック受けてましたよ」
「皆って言ってるけど、響生君が一番ショックだったのでは?」
「あちゃ、分かりますか?」
「あは、分かるわよ。顔にそう描いてあるもの」
「早乙女先輩には嘘は付けないですね。なんでもお見通しですね。ところで早乙女先輩はありさちゃんとどうして仲良しになったのですか?」
「ありさちゃんはすごく性格が良い子だし人懐っこいし、私が通ってるヨガ教室に誘ったらすっかり填まっちゃって。休みの日も彼女の家に遊びに行ったりして、歳は私より三つ下だけど親友といった方がいいかな」
「そんなに仲良しなら尚更心配ですね、連絡取れないのは……」
「スマホがつながらないのって、どんな場合が考えられるのかしら」
「そうですね、スマホで連絡がとれない地域は、電波が届きにくい山間部や地下、災害時の被災地などといわれています」
「でも軽井沢は山間部だけどむしろ拓けた都会だし、電波が届きにくいとは考えられないのよね。昨日今日軽井沢周辺で災害があったなんてニュースはないし……。それにね、もしスマホがつながらないとしても、お父さんたちが心配しているのを分かっているから、コンビニ等のお店に行ってでも連絡をしてくると思うの。そういう子なのよ、ありさちゃんって」
熱く語る衣葡に、悠太は並々ならぬありさへの信頼を感じたのだった。
「とにかくふたりが無事であることを祈りましょう」
「そうね、理由はともあれふたりが無事ならいいわ」
「碓氷軽井沢インターチェンジはもうすぐです」
「あら、すごい断崖絶壁が見えてきたわ」
「あれは奥妙義の高岩ですね、高速道路ができるまでは人目につかない秘峰だったそうです」
「響生君って物知りね」
「さあ、インターチェンジを下りますよ」
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翌日も男たちの精力は一向に衰えを見せず、ありさは寝室で男たちから強制的な辱めを受けつづけた。
正午になるとさすがに男たちも空腹には勝てず、ありさに食事を作れと要求してきた。
有り合わせものでよいということだったので、ありさは炒飯を作ることにした。
炊飯器にスイッチを入れると、長ネギを細かく切り刻んだ。やはり包丁の使用は許されなかったので、料理バサミを使わざるを得なかった。
溶き卵、醤油、鶏ガラスープの素、塩コショウ、ごま油の準備もできている。
家庭用ガスコンロは中華レンジよりも火力が弱いので、ご飯の量を減らして炒飯を作る必要がある。
それでも五人分となると一度に作ることができないので、二度に分けて作ることにした。
裸エプロンだと寒いと訴えたのでキャミソールとデニムミニスカートの着用が許された。ただし下着の着用は許されずノーブラ、ノーパン姿で料理台の前に立たなければならない。
「いい匂いがするじゃねえか。調理中って触られたら濡れるのか? どれ……」
「お願いです。危ないからやめてください」
時折、背後から暇を持て余した男たちがスカートの中に手を入れてくるが、厳しく𠮟ることができないのが歯痒い。
それでも作業中は危険なので、怒りを買わないように丁重に断るありさであった。
