

第12話「不穏な空気に包まれた食卓」
キウリを抽送のさなか、突如俊介の猛突進に遭い行為を遮られてしまった殿井。
「チェッ、とんだ邪魔が入りやがったな。キウリが中で折れても知らねえからな」
「それはそうと、キウリだと若奥さん全然よがらないじゃん」
「おい、キウリ気持ちいいだろう?」
「……」
返事が返ってこなかった。下劣な質問に対しまともに返すに気になれないのだろう。
返事がないことに殿井はいらだつ。
「おい、どうなんだ? ありさ」
「……全然よくありません……」
ありさは冷淡に答えた。
不機嫌になるかと思われたが、意外にも冷静に、
「細いせいかな? このキウリ直径3センチぐらいしかねえからなあ」
「若奥さんは太いのが好みのようだな」
「がはははは~、違いねえや。やっぱり太いナマチンポに勝るモノはねえよな~」
無言でうつむくありさ。
キウリ責めから解放されたありさは、ようやく調理に専念することができた。
アヒージョの煮込みの準備を整えると、主食に取りかかった。
俊介のリクエストでもあるドライカレーは、野菜とひき肉を炒めるだけで作れる簡単な料理だ。
ありさは口惜しかった。調理をしながら唇を嚙みしめる。
(こんな男たちのために、どうして料理を作らなければならないの……この避暑地で俊介と二人だけで過ごすはずだったのに、まさかこんなことになるなんて……)
ダイニングを兼ねるキッチンテーブルで食事をとることになった。
招かざる訪問者たちとともに囲む食卓は異様であり、不穏な空気に包まれている。
男たちはビールで喉を潤すと、かなり空腹だったようでむさぼるように食らいついた。
椅子に拘束されてはいたが俊介も、ありさとともに食事をすることが許された。
ただし俊介には沈黙が要求された。彼らに許可なく発言した場合はありさに罰を与えるという恫喝がなされた。俊介の発言を封じた理由は、ありさとの逃亡企てを阻止するためであった。
食事中、富成が奇妙なことをありさに尋ねてきた。
「ローションは持ってきてるのか?」
「ローションですか? 化粧水ならありますが」
「化粧水じゃなくて、ラブローションだよ」
「そんなものありません」
「じゃあ片栗粉はあるか?」
「え……? 片栗粉ですか? 確か台所の棚にあったと思いますが、いったい何を?」
富成はうんうんとうなづくと、ありさの前からスッと姿を消した。
夕食が終わり、ありさが片付けをしようと立ち上がった時、男たちはそれを阻んだ。
「洗い物はあとからでいいじゃねえか。ちょっとだけ食後のトークを楽しもうじゃねえか」
「はい、分かりました……」
席に留まったありさに、いきなり殿井が赤裸々な質問を浴びせてきた。
「おまえたち夫婦は毎晩セックスしてるんだろう?」
「そんなこと答えられません……」
殿井がふてくされた表情に変わる。
「なんだと? 俺の質問には必ず答えろ! 素直に答えなければ旦那が痛い目に遭うぞ!」
殿井は拳骨を自身のてのひらに叩く仕草を示し威嚇した。
ありさとしては答えるしかない。
「毎晩してません……」
「最近したのはいつだ?」
「……4日前です……」
あくまで夫婦の秘め事であり、他人に語るべき内容ではない。だけど無視をするわけにもいかない。
消え入りそうな声で答えるありさに苦渋の色がにじむ。
さらに、矢継ぎ早に質問をしてくる殿井。
「初体験はいくつだ?」
「そんなこと言えません……」
「旦那にもちゃんと聞こえるように大きな声で答えろ」
「十七歳です……」
「声が小さいぞ!」
「十七歳です」
「相手は同級生か? 先公か?」
「……同級生です」
「結婚して何年目だ?」
「2年目です」
「その間、他の男とセックスをしたことがあるか?」
「してません」
「嘘は言うなよ。本当か?」
「本当です」
「どんな体位が好きなのだ?」
「そんなこと……答えたくない……」
「答えるんだ」
「座位です……」
「座って抱き合ってやるやつか?」
「そうです」
「セックスするといつもイクのか?」
「……その時によります……」
「一番感じる場所はどこだ?」
「……」
「答えねえか!」
「アソコです」
「アソコじゃ分からん! ちゃんと答えろ!」
「ち、膣です……」
「クリトリスじゃねえのか?」
「どちらも同じぐらい感じます……」
「結婚後もオナニーをしているのか?」
「そんな恥ずかしいこと……」
「旦那の前でちゃんと答えろ。旦那を痛い目に遭わせたいのか!」
「こ、答えます……したことがあります……ああ、恥ずかしい……」
「何回?」
「憶えていません。数回だと思います……お願いです、もうこんな質問は許してください」
ありさは羞恥と屈辱に耐えきれず、涙声になっていた。
「それなら旦那と俺たちの前で、パンツを脱いでオナニーしてみろ。これを使ってな」
殿井が取り出したのは、先程富成が寝室で見つけた白いディルド型バイブレーターであった。
俊介が旅行前にこっそりと購入し、ありさとの愛の営みのために準備していた代物である。
殿井がスイッチを入れると、バイブレーターがクネクネと卑猥な動きを見せた。
「せっかく旦那が買ってくれたのに、使わない法はねえだろう? さあ俺たちにも見せてくれ」
ありさがためらっていると、殿井がバイブレーターをありさの膝に放り投げてきた。
「さあ早く」
「できません」
「できない? 旦那がどうなってもいいのかな?」
殿井は冷酷な微笑を浮かべながら俊介の首に縄をかけた。
(いけない! 彼は本気だわっ!)
ありさの全身に悪寒が走った。
