

第2話「むしり取られた白いワンピース」
別荘は鉄筋コンクリート造で二階建てになっている。南側が正面玄関で開放的なテラスがある。また北側は庭に面して半六角形の張り出し窓があり部屋は洋室になっている。洋室の隣には台所があり勝手口が設置されている。
その張り出し窓のガラスが1枚割れたのだ。
「割れたのはどこですか?」
「あの窓だよ」
俊介は割れた箇所を指し示した。
「割れた箇所の写真を撮っても構いませんか?」
弁償の関係で証拠写真を撮っておきたいのだろうと、俊介は推察した。
高身長の男はスマホで撮影しようとしたが、垣根があって思うように撮れないようだ。
「ここからだとうまく撮れないので建物の内側から撮らせてくれませんか?」
「内側から? うん……分かった。じゃあ、着いて来て」
俊介とありさは、やむを得ず男たち建物内に案内することにした。
勝手口からあわてて飛び出してきた際に鍵をかけていなかったので、俊介はなんのためらいもなく扉を開いた。
次の瞬間、俊介は思わず絶句してしまった。
ありさも唖然としている。
「おまえは……」
俊介が「おまえは誰だ?」と問いかけようとしたが、最後まで声にならなかった。
あろうことか、扉を開けたその場所に、一人の見知らぬ男が不敵な微笑みを浮かべて立っていたのだ。
いったいいつの間に入ったのか。きっと俊介たちが二人の男たちに抗議している間に、こっそり忍び込んだに違いない。
見知らぬ男は、
「皆さん、お帰りなさい~」
と調子の外れたすっとんきょうな声をあげた。
「おまえは誰だ!? ここは僕たちの別荘だぞ! 早くここから出ていけ!」
さすがに俊介は腹立たしくなり、怒りを爆発させてしまった。
俊介が見知らぬ男を追い出そうと、胸ぐらをつかまえようとした時、突然男のパンチが俊介の顔面を捉える。
一撃で転倒する俊介。
「あっ、俊介さんっ!」
ありさは悲鳴をあげた。
うずくまっている俊介の元に駆け寄った。
「俺に絡まないほうがいいよ。一応これでもボクシング部なもんで」
ありさの背後からキャッチボールの男たちが声をかけた。
「おい、殴るのはやめておけ」
「先にこいつから突っかかって来やがったんだ。これでも手加減してやったんだから」
話しぶりから、三人が仲間であることがすぐに分かった。
かなりパンチが効いたのか、顔を押さえうずくまる俊介。
そんな俊介にそっと寄り添うありさの健気な姿を見て急に嫉妬を感じたのか、それとも急に劣情を催したのか、高身長の男がボクシング男に目配せをした。
ボクシング男が舌なめずりをしながら淫靡な笑みを浮かべている。
「へへへ、奥さん超イケてるじゃん。おい、みんな、やっちまおうよ」
ボクシング男の呼びかけに、他の二人も呼応する。
「おう、こんな豪華な別荘で贅沢してやがる金持ち野郎にお仕置きを与えてやれ!」
男たちがありさを挟んで、いきなり襲いかかってきた。
「い、いや、あなたたち、やめて!」
「うるせえ、おとなしくしろ」
高身長の男が仲間たちに指示を送る。
「勝手口の扉にカーテンがねえから、ここだと外から見られるぞ。奥の部屋に連れていけ」
「やめろ! 妻に手を出すと許さないぞ!」
「何をえらそうに」
俊介が阻止しようとしたが、ふたたびボクシング男がパンチを繰り出した。
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ワンピース姿のありさはたちまち押さえつけられ、奥の居間へと連れ込まれていた。
男たちの淫らな視線が、衣服の上からではあるが、ありさの全身に突き刺さる。
品定めをする男たちの目は野獣のようにギラギラと輝いている。
高身長の男とボクシング男の会話が弾む。
「へへへ、いい尻してやがるぜ。オッパイはふつうサイズだが揉み応えがよさそうだな」
「この女は結構俺の好みだよ。なあ、富成、おまえはどうなんだ? タイプか?」
「うん、いいと思う」
自己主張をほとんどせず何事にも控えめな富成。そんな彼を冷やかすボクシング男。
「ぷっ、感想うすいなあ」
「分かってねえな。富成の一言は、気に入ってる証拠だぜ」
男たちはあらかじめ用意していた縄を取り出し、瞬く間に俊介を縛り上げてしまった。
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後手縛りにされた俊介の目の前で、男たちはこれ見よがしにありさのワンピースや下着をむしり取った。
「ほう……」
「こりゃすげえ……」
「……!」
しなやかな裸身があらわになり、男たちの熱い視線が釘付けになる。
その白い肌はきめが細かく、一点の染みもなく、息を飲むほどに美しかった。
男たちは全員大学生で、高身長の男が殿井、ボクシング男が崎野、小柄な男が富成といった。
三人ともTシャツとデニムパンツ姿だった。
ガラスをボールで割ったのも、もし別荘に人がいなければ、中に入り込んで別荘荒らしをするつもりだったらしく、学生というよりむしろチンピラのような連中といえた。
「あなたたち、こんなこと、やめて。お願い、帰って」
裸身を羞恥と屈辱に染めつつ、ありさは哀願した。
男たちは飢えた野獣さながらのギラつく眼(まなこ)で、ありさの裸身を舐めまわすようにみつめた。
