第一話「五両の代償」

 その昔『火事と喧嘩は江戸の華』と言われるほど、江戸の町は火事が多く時々大火があった。
 燃えやすい木造家屋が連なる家々にいったん火がつくと、なかなか鎮火しない。
 現代のような科学的な消防技術がなかった江戸の『火消し』は、火元より風下の家々を壊して延焼を防ぎ、火災の被害をくいとめる破壊消防が基本だった。
 水で消したくても桶で汲んだ水ぐらいしかなく、大火に対しては焼け石に水に過ぎなかったわけだから、破壊活動もやむを得なかったのだ。
 そのため、長鳶口(ながとびぐち)と呼ばれる草刈りの鎌を大きくしたような道具や、大のこぎりなどを使いこなせる鳶職(とびしょく)などの専門家が火消しの隊員となっていた。

 エ~ンヤ~ サ~ エ~
 よ~~~お~~ん~やりよ~ぉ~
 え~~ぇぇょお~ぉ~ぉ~
 木遣りでひきあげる有馬火消し。

「兄ぃ、お勤めご苦労様で」
「おうっ新八、首尾はどうだったい?」
「へい、火事場のドサクサに例の野々宮屋の一人娘をとっつかまえて、いつもの土蔵に縛っておきやした」
「世話かけたなぁ」
「えへっ、あんな器量のいい、身体もよさそうな生娘をこれから素っ裸にひん剥いて、ヒイヒイ色責めたぁ、兄ぃも罪作りな男だねぇ」

◇◇◇

(ガラッ!)

 土蔵の戸が開けられた。

「待たせたなあ、ありさ」
「帰してください。家へ帰してっ!」
「やかましいっ!まずは着てる物を脱いで、後ろに手を回すんでえ」
「な、何をする気ですかっ」
「ぶつくさぬかさず脱ぐんだよっ」

 源太はありさの帯を解き、着物を剥ぎとる。
 そして何人の女を泣かせたか知れぬ垢の染みついた縄で、白く、ほっそりとした身体を縛った。

「い、いやっ、縛るなんて。私は何も悪いことはっ!」
「やったんだよ、てめぇの親父がよう。おいらの造ったこの銭差(ぜにざし)を買わねえとぬかしゃあがった。たったの五両でいいと言ったのによう」
「そ、それが五両!?」
「おうよ。芝の増上寺を護る大名火消しの纏(まとい)持ちが心を込めて作ったこの銭差しをよう。五両たぁ安いもんだぜ。これでもおいらは元れっきとした旗本だぜ」

 銭差とは、銭の孔にさし通し、一束とする細い縄のことである。
 当時、大名火消しや定火消しと称する侍の消防隊員には、旗本の次男坊、三男坊が多かった。
 長男に生まれなかったため、家を継げず、一生低い禄高で過ごさなければならない抑圧された気持ちが、彼らを火事場の戦へと駆り立てた。
 連中は、遊ぶ金欲しさに町屋に行き、火事があった時は護ってやるかわりにこれを買えと、頼まれもしない銭差を造ってはバカ高い値段で売りつけたのである。
 そんな男の一人を野々宮屋は怒らせてしまったのだ。

「さあて、買い手がなきゃ使い道がねえ。ど~ら、ちいっと縄で盛り上がった大きな乳の先っぽを見せてみねえな」
「い、いやっ」
「生娘のわりにゃ、大きな乳首だ。色好みになるぜお前は。お~お、立ってきたぜ、とび出て来たぜ。吸ってくださいと言わんばかりによう」

◇◇◇

 乳首を銭差でくくり、

「こういう使い方もあるんだぜぇ、ペロペロ、ペロペロ」

 両乳首を左右上下、あるいはグルグルと回しながら舐めたおす源太。

「もういい加減にして!」
「ほうっ、野々宮屋の娘だけに威勢がいいや。あわてるねぇ。本番はこれからだぜ」
「こ、こんなことをして、あ、あ~あ……ただでは済み……ません……よ。ううっ……」
「親父が出張って来るとでも言うのけえ。だがよ、今日の火事でまる焼けよう。大身代にしちゃあ、あっけねえ最期だねえ」
「ええっ!おとっつぁんが……」

 だが、野々宮屋が死んだと言うのはまっかな嘘だった。

◇◇◇

「そうよ。だから今日は、しっぽり濡れて何もかも忘れさせてやろうってんだ」

 乳首をひっぱり、板の上に固定し身動きできないようにして、サッとありさの唇をうばう。

「ううっ。あぐっ。ああ~」

 ゆっくり、執拗に唇を吸い、ねっとりと唾液をねばらせ、ありさの口へ何度もそそぐ。
 片手はあごをつかみ、片手は乳首をもてあそぶ。

「どうでえ、おいらの唾はうめえだろう?」

◇◇◇

「今度はこいつだ。どうでぇ、鳶口のとがりのチクチクは、気持ちがいいだろう?それっ、それっ」
「ひ~っ!ひ、ひ、あっ、あうっ!」

 強く刺しては、弱く小刻みにチクチクと乳房全体と、乳首にしつこい動きをくり返す鳶口に、ありさは夢の世界と現実の世界を往来する。

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(備考)
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鳶口(とびぐち)とは
トビの嘴(くちばし)のような形状の鉄製の穂先を長い柄の先に取り付けた道具。
丸太や原木など木材の移動・運搬・積み上げや、木造の建築物の解体や移動(曳き屋)に使用される。
古くは鳶職を中心に組織された町火消の消防作業に使われた。
このため鳶職という名が冠されたともいわれている。
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野々宮ありさ














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