官能舞妓物語






高瀬舟(高瀬川にて)

第七章 芋折檻

 それから二日後の夜、ありさは傷心も癒えないままお座敷にあがった。
 相手はもちろん丸岩である。
 ありさと俊介の一件を女将はひたすら隠していたのだが、いつのまにか露呈してしまった。
 織田錦の男衆のひとりに松吉という如才がない男がいた。
 丸岩は従来から疑り深い性格であったため、公私共に、常に情報網を張り巡らせていた。
 織田錦においては、この松吉という男が丸岩の“連絡係”の役目を担っていた。

 丸岩は自分の目の届かないところでの、ありさの行動の一部始終を連絡するよう、松吉に指示をしていた。
 そんなこともあって、ありさの俊介に関する一件はすでに丸岩の耳に達していたのであった。

 宴もそこそこに切り上げた丸岩は、その夜もありさを褥に誘った。
 丸岩は寝床の中でありさの身体に触れながらつぶやいた。

「ふっふっふ……、ありさ、今晩はお前にたっぷりとお仕置きしたるさかいな。覚悟しときや」
「え? なんでどすか?」
「呆けたらあかんで。お前が学生と付合うてることぐらい、とっくに知っとるんやで。わしを騙しくさって、この女狐が!」
「そんなこといったい誰から……」
「誰からでもええがな。その学生にここをいじられたんか? ひっひっひ、こういう風にな~」

 丸岩はありさの襦袢の裾から手を入れ、早くもまだ濡れてもいない割れ目を嬲り始めた。

「そんなぁ……そんなことしてまへん……」
「ひっひっひ、嘘ゆ~たらあかんで。何でも学生の下宿に入り浸りやったそうやな~? それやったら、ここをこないに触られたくらいやないな?もっとええことしたんやろ?」
「してしまへん……」
「嘘ゆ~たらあかん。ここに大きいもんを入れられたんやろ?ちゃうんか? どや? わしのとどっちが大きかった?」
「そんなん知りまへん……」
「どうしても知らんゆ~んやな? 正直に白状したら堪忍したろて思てたけど、嘘つくんやったら、やっぱりお仕置きをせんとあかんわ」

 丸岩はそう言いながら、布団からありさを引きずり出して、ズルズルと床の間まで連れていった。

「いや~! 何しはるんどすか!? 堪忍しておくれやす~!」
「何をて、決まってるやないか? お仕置きや、お仕置き」

 丸岩は嫌がるありさを予め用意していた麻縄で、床の間の柱に立位のまま縛り付けてしまった。
 さらに日本手拭いで猿ぐつわまで噛ませて口を封じてしまった。

「ううっ! ううう!」

「あんまり大声出されて、女中がびっくりして飛んで来ても困るさかいな~。ひっひっひ……」

 柱に後手縛りでしかも猿ぐつわと、戒めを施されてしまったありさが自由にできるのは、むっちりとした二本の足だけであった。
 丸岩はありさを縛ったままにしておいて、押し入れから奇妙な道具を持ち出して来た。
 どうも、台所で使う『すり鉢』と『すりこぎ』のようだ。
 そして包装紙から、こげ茶色の『芋』らしきものを取り出して来た。
 声の出せないありさは、目を丸くしてその得体の知れないものを見つめた。

(あれは芋みたいやけど、一体どうするつもりやろか……)

 丸岩はこの後、驚いたことに、すり鉢に芋らしきものを入れて、すりこぎで潰し始めたのだ。
 ある程度潰れると、今度はグルグルと掻き混ぜた。
 まさかこんな座敷で料理を作るわけもなかろうに、丸岩は一体何をしようと言うのだろうか。
 充分にとろみが出るまで混ざった頃、丸岩はニタリと嫌らしい笑みを浮かべた。

「ふっふっふ……、ありさ、これ何か解かるか?これは山芋や。食べたことあるやろ? 山芋はな、滋養強壮の食べもんとして昔から有名やけど、他にも女の淫薬としても有名なんやで。知らんかったやろ?今からたんと食べさせたるさかい、楽しみにしときや、ひっひっひ~。ああ、もちろん、下の方のお口に食べさせたるさかいな。ぐっふっふっふ……」

 丸岩はそういいながら、すり鉢を持って、ありさのそばににじり寄った。

(うぐうぐうぐっ!)

 顔を横に振り拒絶の態度を示すありさではあったが、身体を拘束されてしまった今逃れる術はなかった。
 丸岩はすり鉢から山芋を指でひとすくいし、ありさの顔に近づけた。

「ひっひっひ、ありさ、お前のアソコにこれをたっぷりと塗ったるさかいな。どうなるか楽しみにしときや。あ、そやそや、その腰巻きちょっとじゃまやさかい、取ってしもたるわ。ぐっふっふ……」

 ありさの腰を包む布地はパラリと床に落ちて、着衣は肌襦袢だけとなってしまった。
 しかし下半身を覆うものはすでに何もなく、無防備な状態で丸岩の異常な欲望の前に晒されてしまった。
 必死に膝を閉じ合せ、抵抗を試みるありさであったが、男の力には抗うべくもなく、その侵入を許すことになってしまった。
 丸岩の指はありさの真直ぐに伸びた一本道のような亀裂に触れた。

「ぐふふふ……」
「ううっ!」

 丸岩はニヤニヤと卑猥な笑みを浮かべながら、丁寧に陰唇部分へ塗り始めた。
 続いて、実の包皮を開いて剥き出しにし、実に擦りつけるように塗り込めた。

「さてさて、ほんなら、次はこのかいらしい穴の中も、たっぷりと塗ったるさかいな。ぐひひひ……」

 山芋が滴る指は、ついに裂け目の奥深くにも侵入を開始した。
 内部の襞のある部分はその感触を楽しむかのように、特に念入りに摩擦を加えたのだった。

「ううっ、ううっ……ううっ……」

 秘所が焼けるようにカーッっと熱くなって来た。
 そして次第に激しい痒みがありさを襲い始めていた。
 額からは大量の唐辛子でも食べたかのように、大粒の汗が吹き出していた。

「ぐっふっふ……どうや? 痒いんちゃうんか?」

 ありさは苦悶に歪んだ顔を縦に振った。

「せやけど、しばらくはそのまま我慢してもらおか。よその男を咥え込んだ罰(ばち)やさかい、それぐらいは辛抱してもらわんとあかんわなぁ」
「ぐっ……ううう……」

 丸岩は底意地の悪さを露骨にありさにぶつけたのだった。

 とにかく痒くて堪らない……そして熱い……

(ああ、辛い……)

 ありさは身を捩じらせて、ムズ痒さと懸命に戦ったのだった。

 しかし時間が経つに連れ、我慢も限界に近づいていた。
 狂いそうなほど痒い。

「うぐうぐうぐ~っ!」

 ありさは猿轡を噛まされて叫べない苦しさを、態度で現すしかなかった。
 身体からは大量の脂汗を流し、腰を精一杯に捩り出した。
 ありさの股間からは、おびただしい愛液が山芋と交じり合って太股がボトボトになるほど流れ出していた。

「どや?ぼちぼち掻いて欲しいんとちゃうんか?」

 最初その言葉にも顔を背けて無視をしていたありさであったが、ついに耐えかねて屈服の態度を表わしたのだった。

「ふふふ、首を縦に振ったな? ふっふっふっ、そうかそうか。そんなに痒いんか? よっしゃ、ほな、ぼちぼちええもん咥えさせたるわ。ぐっひっひ……」

 丸岩は横に置いていた木箱から、奇妙な形の道具を取出した。
 ありさはそれを見た瞬間、顔が青ざめてしまった。
 それもそのはず、丸岩の取出した道具というのは、江戸時代から伝わる木製の「張形」で、周囲が異常に太く、一般男子のそれよりもふた周りぐらいは大きい代物であった。

「ありさ、ほんとやったら、わしのもん咥えさせたるとこなんやけどな、わしまでかいなるのんかなわんさかいに、代わりにこの太いもんでしっかり擦ったるわ。気持ちええで……ぐひひひ……」

 本来のありさならば、そのおぞましい形状の異物を脚で蹴ってでも拒絶していたところであろうが、今はそんなことができる状態ではない。
 何でもいい、とにかく身体の痒みを鎮めるものが欲しい。
 そんな思いから、ありさは屈辱に身を焦がしながら、丸岩の差し出す淫猥な異物を受け入れたのであった。

「うう、うぐぐ……うううっ!」

 激しい身体の火照りと痒みのせいで、愛液と山芋の混じり合ったものはおびただしく溢れ太股まで伝っている。
 丸岩は舐めるような目つきでありさの苦悶の表情を楽しみながら、太い張形をゆっくりと沈めて行った。

(ズニュ……ズズズ……)

「ううっ~~~!」

 丸岩は張形を深く押込んだあと、手を休めてしまった。
 痒みを止めるために、不本意ながら丸岩の手を借りなければならないというのに。
 丸岩は不敵に笑った。

「ふっふっふ、わしの役目はここまでや。痒みを止めたかったら、自分で腰をくねらしてごりごりと擦りつけることやな。ふあっはっはっは~!」

 何という底意地の悪い仕打ちであろうか。
 空腹の者にご馳走をちらつかせておいて、『お預け』と言っているようなものだ。

「くうっ……うっ……ううう……」
「痒いか? ふふふ……、はよ、腰を動かさな狂うてしまうんちゃうか? はっはっは~!」

 ありさは脂汗を流しながら必死に耐えてはいたものの、肉体的にすでに限界に達していた。
 挿し込まれた張形に自ら腰を振りながら貪るように食らいついたのだった。

「う~っ、う~っ、ううう~っ!」
「はっはっは~! とうとう腰を振り出したか。よっしゃよっしゃ、それでええのや。もう二度と浮気なんかしたらあかんのやで? ええなぁ」

 丸岩は凄みながら、ありさの顎を指で摘むように持ち上げた。
 そして止まっていた張形の反復運動を再開させた。
 ありさは身体を弓なりに反らせ、いつしか快楽の園をさまよい始めていた。

「がっはっは~、なんぼ拒んでも、女の性ちゅうもんは哀しいもんやなあ~。わっはっはっは~」
「うぐ……ううう……ううっ!」
「ありさ、お前はわしのもんや。他の男には指一本触れさせへん。これでよう解ったなぁ? ふっふっふ……」

 人前では滅多に涙を見せないありさではあったが、ひとり床に就くといつも泣いていた。

「俊介はん、会いとおすぅ……、あんさんに会いとおすぅ……」

 いくらさだめとは言っても、好きな男と引き離されて、嫌いな男に添わねばならないことがとても悲しかった。
 自分にさだめられた籠の鳥のような身の上を呪わしくさえ思った。






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