第5話

「ありさちゃんさぁ、他人から何のバイトをしてるの?って聞かれて答えられる?」
「いえ、それはちょっと……」
「無理だろう?君だってよくないことをしてるって十分分かってるわけだ」
「は、はい、それは……」
「まともなバイトを探すんだったら、僕もいっしょに探してあげるよ。だから援交はすぐにやめろよ。ねぇ?ありさちゃん」
「はい…分かりました……。色々とありがとうございました……」
「あっ、ヨーグルトシェイク飲まなきゃ。ぬるくなっちゃうよ」
「あ、そうだった!忘れてた~」
「はははははは~」

 帰り際、車井山さんは名刺をくれた。
 それは会社の名刺だったけど、裏に手書きで携帯番号が書かれていた。

「困ったことがあったらいつでも電話してきて。つながらなきゃメールでも構わないから。じゃあね」
「はい、分かりました。どうもありがとうございました……」

 車井山さんが人通りの中に姿を消すと、急に疲れが押し寄せてきた気がした。
 あああ、肩が凝ったぁ……。
 ヨーグルトシェイクをご馳走してもらったけど、余計に喉が渇いちゃった感じ~。
 でも、車井山さんがいうとおりだろうな。
 やっぱり私、間違ってる……。
 早く援交やめなくちゃ。
 でもあと1回、あと1回だけ、援交させて……。お願いだから。
 あと3万円稼げたら、キッパリとやめるから。
 必ずふつうのバイトを探すから。
 誰に話すわけではなかったが、私は一人つぶやいた。

 最後の1回、私はまたテレクラを利用することにした。
 一人の男性が今夜7時にホテルで会いたいといって来た。
 先日のおじさんよりもずっと若い人のようだ。

(あと1回だけやったら必ずやめてやるぅ)

 私は自分にそう言い聞かせた。

 ◇ ◇ ◇

 午後7時、待ち合わせのラブホに向った。
 どんな人か分からないからすごくドキドキする。
 私は教えられた部屋の前に立ち止まり、思い切ってドアのノブを廻した。
 鍵は掛かっていない。
 ドアを開けてみた。

(あれ?真っ暗じゃん……)

「あのぅ、すみません……電気点けてくれませんか?」

 そういいながら2、3歩進むと、突然部屋が明るくなった。
 急に明るくなったため、私は一瞬視点が定まらなくて呆然とした。
 次の瞬間、前後から指を鳴らす音と男性の声がした。

「ひょ~!こりゃあ大当たりだぜ!予想とは違ってすっげいマブイじゃんか!がっはっはっは~!」
「全くだぜ!どうせ援交するような女だし、すれっからしのブスだと思ってたのにさ」
「オレこの女見た途端ギンギンに勃ってしまったぜ~!がっははは~!おい、早速脱いでもらおうか?オレかなりご無沙汰で女にはチョー飢えてるんだよ~!」

 男が前後に二人いる。前がノッポで後がデブ。どちらもガラの悪そうなチンピラ風だ。
 私はここに来てしまったことを深く後悔したが、もう後の祭りだ。

(とにかくここから逃げなくては……)

 恐怖で足がガタガタ震えていたけど、私は懸命にドアのノブに向かって駆けた。
 ドアまでたどり着きノブを廻そうとした瞬間、大きな手が私の肩を掴んだ。

「お嬢ちゃん、どこへ行くつもりかな?あんたの行先はそっちじゃねえんだけど」

 ノッポの方がそういいながら私の背中を突いて部屋の中央へ押し戻し、ドアの鍵を掛けてしまった。

「妙な気を起こすんじゃねえよ。あんたの行先はあのベッドだ。もうあんたは俺たちと契約したんだから、約束は守ってもらわねえとな~。さあ、こっちへ来な!」

 強引に手首をつかまれ、私は引きづられていった。

「お願い、やめて!」
「つべこべいうんじゃねえ~!」

 私はベッドまで引きずられ、そのまま仰向けに押し倒されてしまった。
 その弾みでプリーツスカートがめくれ上がり下着が露出した。

「キャ~~~~~!やめて~~~~~!!」
「おい!でかい声を出すんじゃねえよ!」

(パシンッ!)

「いたっ!」

 突然私の頬に平手が飛んできた。

「乱暴しないでっ!」
「殴られたくなけりゃ大人しくしろ!」
「……」

 私がひるんだ隙に、前後から男たちが一気に飛び掛ってきた。
 野獣と化した男たち相手に、非力な女の力ではひとたまりもなかった。

「きゃぁ~~~~~~~!!」
「えっへっへ、どれどれ。きれいなアンヨの奥はどうなっているのかな?さあて、早速見せてもらおうか」
「いや~~~~~ん!!」

 手を振り上げて抵抗を試みたが、腕を逆手に取られグイグイとねじ上げられてしまった。

「いたいっ!!」

 デブの方が前に廻りこみ、ばたつかせる私の脚を押さえつけ、スカートを腰の辺りまで一気にまくり上げてしまった。

「きゃぁ~~~!やめて~~~!!」

 宙に浮いた脚でデブの方を蹴ろうとしたが軽くかわされ、逆に怒らせる結果となってしまった。

「おい、大人しくしろ!」

(パチン!)

 肉厚な手がまたしても私の頬にさく裂した。

「きゃっ!」

 二度までも顔を張られた私は、急に怖気づいてしまった。
 だって女の子は顔を傷つけられるって、たぶんだけど男性以上にダメージが大きいものなの。
 スカートはまるでパラシュートのようにまくり上げられ、パンティが丸見えになってしまった。


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