

第1話「暴走族ブルースネイク」
「ありさ、彼らと会うのはもうやめた方がいいと思うよ。何か悪い予感がするんだ……」
そこには、ベッドに腰を掛けて思案するありさを、不安そうに見つめる雅治の姿があった。
「だいじょうぶだよ。心配しないくても。あいつらはワルだけどさぁ、すぐに分かってくれるよ」
ありさはこの世界ではかなり名の通った暴走族『ブルースネイク』に所属していた。
格式を重んじる家庭に嫌気が差し、家を飛び出した後、アルバイトで食いつなぎ細々とした生活を送っていた。
やがて知合った友人から誘われるがままに入ったのが『ブルースネイク』であった。
『ブルースネイク』には80名の男性構成員以外に、20名の女性構成員がいたが、メンバーの中でもありさの喧嘩の強さは群を抜き持ち前の器量は際立っていた。
長い髪をなびかせバイクで疾走する姿は野性味に溢れ、20歳とは思えないほど大人っぽく、仲間の男たちからは常に熱い視線を浴びていた。
言い寄ってくる男は数知れなかったが、ありさが彼らに靡くことは一度もなかった。それでもしつこく迫ってきて押し倒してきた男には遠慮なくパンチを繰り出した。彼女が以前少林寺拳法を習っていたこともあり、並みの男では到底敵うはずもなかったのだ。
そんな激しい一面はあったものの、思いやりがあり後輩たちの面倒見もよかったことから、リーダーや仲間たちから厚い信頼を得、大いに慕われていた。
そんなありさも、いつの頃からか、密かに1人の男性に心を寄せていた。
男性は車井山雅治といった。
本来互いに住む世界が違うことから、出会うことなど無かったはずだが、仲間の女性とたまに行く盛り場のバーで偶然出会い、その後二人の仲は急速に深まった。
初めて雅治と出会った夜、ありさは友人のマミと2人で酒を飲んでいた。
だがマミが悪酔いし、急性アルコール中毒症を起こしてしまった。
狼狽するありさを見て、近くのテーブルにいた雅治が直ぐに救急車を呼び、ありさとともに病院まで同行した。
ありさとしては彼が同行してくれたことがとても心強かった。
その時からありさと雅治の交際が始まったのであった。
当初、ありさは自分が暴走族『ブルースネイク』の一員であることを秘密にしていたが、彼を真剣に愛するようになり、悩んだすえ意を決して正直に打ち明けたのだった。
雅治は驚きはしたが、実はありさと付き合っているうちに、世間の女性たちとはどこか違うものを感じていた。
その後、雅治からは度々「君自身のためにも早く脱退すべきだ」と諭され、ありさは悩んだ挙句、ついに脱会することを決意した。
だが、彼女にとってそれは大きな試練であった。
彼らには彼らの厳しい掟があり、容易に脱会できるはずがなかった。
ありさとしては脱会の代償として、私刑などの洗礼を浴びることを覚悟しなければならなかったのだ。