起床が遅かったので朝食が遅れてしまった。
 でも昼にはまだ早すぎる。
 ホテルウェ〇ティンでブランチをとることにした。
 しずかは小さな口を開いてサンドイッチを食べている。
 僕はしずかの口元を見つめた。

(昨夜はあの小さな口で頬張ってたんだ……)

「どうしたの?Shyは食べないの?」
「うん、食べるよ。君がきれいすぎるからつい見惚れていたんだ」
「まあ、上手を言って」

 しずかはクスッと笑うと、テーブルに置かれたアイスティーに手を伸ばしストローに口を付けた。
 僕もしずかに合わすかのようにホットコーヒーを一口飲んだ。
 僕の視線はしずかのすらりと伸びた脚に向いていた。

(いつ見ても美しい脚してるなあ)

 さらに見えそうで見えないスカートの奥に妄想を拡大した。
 細いけど付くところにはほどよく肉の付いたムッチリとしたあの腰つきは妙に男をそそる。
 ゆうべ寝不足になるぐらいもつれあったのに、再び身体の芯が燃え始めるのを感じた。
 シーツの上で悶えるしずかの姿が瞼に浮かんできた。
 僕の指と舌で、狂おしいほどに切ない声を奏でた女。
 僕の上でまるで踊り子のように見事に舞った女。
 そんなしずかを堪らなくいとおしく思った。

 僕の視線に気づいたしずかが怪訝か表情を浮かべてる。

「ねぇ、Shy……?どこを見ているの?や~だ……さっきから私の腰のあたりばかり見てるぅ……」
「うん。そうなんだ。君の脚や腰を見ていたらまたムラムラとしてきた」
「もう、元気な人ね~」

 しずかはクスクス笑った。

 ホテルの隣に空中庭園がある。
 40階まで上がると屋外に出られる庭園があるのだ。
 今日は幸い風がない。
 ふたりはシースルーエレベーターに乗って、コンパニオンに案内に従って最上階に昇った。
 360度広がるパノラマ。
 地上170mからガラスなしに街全域を見渡せる。
 僕たちは方面ごとに話題を転じてわずかな時間を楽しんだ。

「あの山のずっとずっと向うに君が住む街があるんだよ」
「そうなんだ。どのくらい距離があるのかな?」

 景色を見終えると、ビルとビルの間を空中に浮いたようなシースルー・エスカレーターで下っていく。
 まるで虹の橋を渡っているような感覚におそわれる。
 長さが45メートルあってスリル満点だ。
 幸いなことに前後に人影がない。
 それをいいことに突然しずかの唇を奪う。
 しずかは驚きもせず、僕の唇を受け入れてくれた。
 ライトキスだったし時間もわずかだった。
 ディープキスは今夜ゆっくりと楽しめばよいのだから。
 39階からエレベーターに乗って1階まで降りる。
 エレベーターガールが愛想よく微笑んでいる。
 しずかが何やらあわててる。

「あ、Shy、口紅が……」






















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