六本木で出会ったすごい女
Shyrock作
ヤマちゃん(27才)からの相談話に乗るために居酒屋で酒を酌み交わした。
それでも話が終らなかったため、六本木のとあるBARへ行くことになった。
時間がすでに午後9時を回っていたのでそれなりの賑わいを見せていた。
僕達はカウンターに腰を掛けていたが、背後の四人掛け席に二人連れの女性がいた。
一人は黒髪ロングでもう一人はショートボブだ。
タバコを燻らせて気だるそうな感じで話し込んでいる。
かなり派出目ではあるが外面は結構いい線いってる。
それを名うてのプレイボーイのヤマちゃんが見逃すはずがない。
「ねえ、Shyさん、結構イケてますね。誘ってみますか」
僕は笑って首を縦に振った。
強引な男だ。やめろと言ってもたぶん聞かないだろう。
あ、でも、ヤマちゃんは確か彼女との結婚の相談じゃなかったのか?
と思ったその頃、すでに二人の女性に声をかけていた。
「もしよかったらそちらの席に行ってもいいかな?僕達も二人なんだけど」
彼女たちに驚いた様子はなく、快く肯いてくれた。
僕たちは四人掛けの席に移動した。
酒がかなり進み、話題はやっぱり恋の話で盛り上がった。
人生初デートの話から、ちょっぴり憧れている禁断の恋の話まで。
さらに進んで恋人へのプレゼントの話題になったとき、ロングの子が興味ある話を始めた。
「私は彼以外に4人ボーイフレンドがいるの。ちょうど1ヵ月前誕生日だったんだけど彼らは私にプレゼントをくれたの。プレゼントはルイ〇ィトンのバッグが欲しいってそれぞれにおねだりをしてたの。で、結局4人に同じものを買ってもらったの。つまりバッグが5つあったの。そのうち4つは質屋さんに持って行ったの。高く買ってくれたよ。1つだけは使って彼らとデートするときに『バッグありがとう!』って見せるの。すると皆、満足そうな顔をしてた。私って利口でしょう?」
と、ここまで話が進んだときに、ヤマちゃんの表情がみるみるうちに変わった。
「Shyさん。もう帰りましょう。こんな女の子たちと飲んでても楽しくないですよ」
とプンプン。
もう1人のショートボブの子が代わりに詫びたが、それでもヤマちゃんの怒りは収まらない。
僕も事態収拾に努めたが、場の空気を回復することができず、やむを得ずレジーへと向かった。
ようやくロングの子も酒が廻っていたとは言え、自分が何を言ったのか理解したようで謝り始めた。
だけど時は遅かった。
酒は気分で飲むもの。
気分の悪い酒は飲んでも美味しくない。
レジーで支払いを済ませた僕たちは、女性たちに振り返りもしないで店を後にした。
初夏とは言っても夜が更けるとまだまだ肌寒い。
風も冷たく感じる。
「Shyさん、飲み直しましょうか?」
「そうしよう。口直ししたい気分だ」
夜風を背にして男2人が夜更けの街に消えて行った。
終
エッセイ集
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