Shyrock作 久しぶりに会うしずかとは神戸メディテラスの前で待ち合わせをした。 青いペイズリー柄のワンピースで現れたしずかの笑顔がまぶしい。 夏を感じさせながら、秋の香りも漂い、季節の谷間にぴったりのファッションと言える。 「待たせてごめんね~」 「僕も今来たところだよ」 トアロードを少し北へ上がり西に折れた。 そのあたりはトア・ウエストと呼ばれている。落ち着いた感じのトアロードとは異なり、ストリートな雰囲気があってかわいい雑貨店やしゃれたカフェが建ち並んでいる。 その中で明るいオープンテラスのあるカフェを選んだ。 しばらくすると店員が注文を取りにきた。 「僕はコーヒーにするよ。しずかは?」 「わっ、チョコレートパフェがある!珍しいなあ~、わたしこれにする」 「コーヒーとチョコレートパフェですね?」 店員が注文を確認して去っていくと、僕はしずかに尋ねた。 「パフェって珍しいの?」 「少しレトロなお店だったらあると思うけど、今時のカフェだとあまり見ないね」 「レトロと言えばこの前会社の仲間と大正ロマン風の居酒屋へ行ったよ。最近レトロな店って結構流行ってるね」 「古き良い時代へのノスタルジアかな?」 「日本人って過ぎ去った時代を懐かしむ傾向があるんじゃないかな」 「でもそれってその人の年齢にもよるんじゃないの?」 「そうかも知れないね」 「ところでShyって甘いものが好きなのに、パフェは食べないの?」 「いや、嫌いじゃないけど、久しぶりに会った女性の前で男がパフェをパクつくのはいかがなものかと?女性が食べるのは全然オーケーだけどね」 「ふ~ん、そう言うことか。ねえShy?パフェって名前の意味を知ってる?」 「いや、知らないよ。フランス語かなとは思うけど」 「うん、そうだよ。もともと1920年頃にフランスで作られたフルーツムースのことなの。後に、作る時間を短縮するために、アイスクリームを使って作るようになったの。これが、ムースを使ったものに比べても引けをとらず『完全である』ということからついた名前なの。語源はフランス語の『パルフェ』で『完全な』という意味なのよ」 「へえ~、そうなんだ。よく知ってるね~」 「へっへ~、実は最近読んだ女性雑誌に書いてあったの」 「そうなんだ。完璧なお菓子ってことだよね?すごく自信に満ちた名前だね」 「うん、確かにパフェって色々トッピングされてて豪華だものね」 「それじゃ、しずかは『パフェガール』か?」 「お?久しぶりに来たか?Shyの褒め殺し!私がパフェガールだって?ふむふむ、そんな風に言われたら悪い気分はしないな~、お世辞でも嬉しいよ~!でも今一番その言葉に近いのは、桐山美玲さんじゃないかな?」 「いやいや、僕にとってはしずかだよ。そのパフェなボディを今から覗いて見たいな~」 「もう、Shyったらエッチ~。話をすぐにそっちの方へ持って行くんだから」 そうつぶやきながらも、しずかはスプーンを口に運ぶ手を休めない。 女性が美味しそうに食べているシーンは見ていて楽しいものだ。 なおも幸せそうにパフェを食べているしずかの口元を見つめていた。 何かやけに艶めかしく見えてくる。 ごくりと飲み込む喉元の動きまでが何だかエロティックだ。 さらに視線は下へと降りていく。 ワンピースの胸元辺りに視線は止まった。 「まだ会ったばかりなのに、シズカパフェが食べたくなって来た」 「うふ、今日のトッピングは可愛いよ~。じゃあすぐ行く?」 「行く行く」 店を出るとかなりの温度差があり、クーラーで冷えた身体に生暖かい風が襲いかかって来た。 終 |