Shyrock作


 神戸の元町で、信号が青に変わるのを待っていた。
 すると僕の隣に少し派手な女子高生がやって来て、頻りにこちらを見ているではないか。

 なんだなんだ?
 何故か最近二十歳前後の子からよく持てるな。でもちょっと若過ぎてやばいんじゃないか?
 それにしても40近くなって女子高生から好かれるなんてちょっと考えられないなあ。
 もしかしてこの子はファザコンか?
 などと勝手な独り言を心の中でつぶやいた。

 するといきなり、

「なあ、お茶おごってくれへん?」

 僕は驚いて女の子の顔を見つめた。
 少々派手ではあるが、何と可愛い子じゃないか。
 上はネイビーカラーのブレザーで、下はタータンチェックのスカートを穿いている。
 驚くほど丈が短い。

(生脚が初々しいな~)

 ミニスカートからすらりと伸びる脚はきれいで、紺色のハイソックスがやけに眩しく映る。
 唖然としていた僕はやっとのことで我に返った。

「お茶が飲みたいって?」

 女子高生は答えた。

「うん、お茶おごってくれへん?ついでにな……エッチせ~へん?一万円でええわ」

 女子高生は「エッチ」と言う言葉以降はさすがにやばいと思ったのか、僕の耳元に近づき声をひそめた。
 僕はすぐさま言葉を返した。
 普段標準語を使っている僕だが、こう言う時は関西弁で返すに限る。

「君な~、アホとちゃうか。たかだか一万円くらいの金で何で知らん男とやる気になれるんや。自分を粗末にしたらあかんで。そんなアホなことをする暇があったら、彼氏と楽しい時間を過ごしたらどうやねん?」

 女子高生は僕の説教染みた言葉に辟易しているようだ。
 辟易されようが嫌われようが、言うべきことは言わないといけない。

「ほっといて~や!あんたにそんなこと言われる筋合いあらへんわ。お金持ってへんからそんなこと言っと~やろ、ケチ!」

 プンプン怒って女子高生は立ち去っていった。
 と思ったら、何とその子はもう一度戻って来て、

「なあ~、エッチの話は置いといて、お茶だけおごってくれへん?」

(わ~っ!なんだ、この子は!)

 仕方なく近くのバーガーショップに行き、その女子高生にお茶とバーガーを奢ってあげた。
 プンプン怒っていた女子高生の機嫌はいつのまにか治り、エッチに誘ってきたいきさつを語り始めた。
 とにかく小遣いが欲しくてたまらないようだ。

 僕の説教がまた始まった。
 うんざりするだろうと思っていたが、意外なことに、

「ありがとう、よ~分かったわ。うちかて知らん男の人に抱かれるのん嫌やもん。もうやめとくわ。コツコツ、バイトするわ」
「ええ心掛けや。それでええ」
「ところで、お金いらへんからエッチせ~へん?うちな、とにかく気持ちええこと大好きやねん」
「あのな~、たとえ援交での~ても、初対面の男にエッチしよ~なんて言うたらあかんで。相手が変なヤツやったらド偉いことになるで。世の中舐めとったらあかんで」
「うん、分かった。せやけどお茶おごってもろたし、悪いし……」
「お茶ぐらい気にせんでええがな」
「ほな、おっちゃん、ありがと~!ほんならね~~~」
「誰がおっちゃんやねん。おっちゃんと言われるほどまだ歳食うてないで」
「せやけど、うちのパパと同じぐらいちゃうのん?」
「君のお父さん、いくつなん?」
「38歳」
「ドキッ……へえ~お父さん若いんやな~」
「ええ勝負ちゃうん?」
「そやなあ……ええ勝負やわ。ほんならおっちゃん帰るわ」
「あははははは~、自分でおっちゃんて言うてるやん。それじゃね~、バイバイ~!またね~」
「ははは~、『また』ちゅうのは無いで~。元気でな~!」

 女子高生と別れたあと、ふと思った。

(それにしても惜しいことをしたな……あっ、いかんいかん、ミイラ取りがミイラになってどうするんだ)

 女子高生の誘いに乗って行動すれば、若鮎のような肌を拝めていたのだろうが、明らかに犯罪行為だ。
 それだけは絶対にダメだ。

(やばいやばい、やっぱりこれで良かったのだ……)

 これがShyなのだ。
 ん?無理してないかって?いやあ、ははははは~~~(汗)
 
 仕事で神戸に行ったときに実際にあったお話です。

 余談ですが、官能小説『援交ブルース』はこの出来事が元となって生まれました。
























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