Shyrock作





奈々子はポツリと言った。

「エーゲ海に行きたいな・・・」

僕は奈々子のあまりにも唐突な言葉に困惑してしまった。

「遠すぎるよ。そんなに長い休暇は取れないし」
「あはは、違うってばあ。日本のエーゲ海よ。知ってるでしょ?岡山の牛窓(うしまど)。この前雑誌に載ってたの。行きたいな~って思って」
「な~んだ。驚かすなよ~」

二人が選んだサマーバケーションは大阪から山陽自動車道・備前IC、岡山ブルーライン・邑久ICを経て牛窓へ。
やがて赤土の斜面に、約1万本のオリーブが枝を広げ、緑の葉を茂らせている光景が目に飛び込んでくる。
枝先の実が夏の陽差しに輝き秋の収穫を待つ。
見下ろす瀬戸内の青い海。
季節や天候、時間で幾通りにも表情を変える。
“日本のエーゲ海”
いつからか、人はそう呼ぶようになった。

陽が沈むと満天の星が美しく煌く。
日中はさすがに暑いが、陽が暮れると瀬戸内の爽やかな風が吹く。

バルコニーからは穏やかな瀬戸内海が望める。
遠くで船が行き交う。
奈々子の長い栗色の髪が風になびいて、僕の頬をくすぐる。
判ってるくせに、わざと風上に立っている。
また奈々子の悪戯が始まった。

「もう、くすぐったいよ~」
「あはは、ごめん、ごめん」

奈々子の言葉が途切れるか途切れないかのタイミングで、そっとキスをした。
ライトキスのつもりだったのが、いつのまにかディープキス。
舌と舌が絡み合い、いつしかしっかりと抱き寄せている。
木綿のワンピースの上から胸元をまさぐる。
手はゆっくりと奈々子のスカートの中へ。
純白のパンティがチラリと覗く。
やっぱりアンダーはお揃いの木綿。
ワンポイントのピンクの刺繍が愛らしい。

「やだぁ・・・まだ明るいのにぃ・・・」

言葉とは裏腹に奈々子の態度は実に従順だ。

女の「いや」は難解なもの。
言葉とおり「NO」の時もあれば、反対に「YES」の場合だってある。
でも雰囲気でだいたい分かる。
今は「YES」だと確信を持つ。
奈々子のスカートを後からまくりあげる丸いお尻が丸見えになってしまった。
パンティに指を這わせると、奈々子はそっと呟いた。

「ちょっとちょっと、まだ明るいよ~。それに他のバルコニーから見えるかも・・・」

うそ?やっぱり「NO」なの?
女の気持ちはやっぱり分からない。

しかし僕は躊躇しなかった。
クロッチの窪みに指が食い込んだ。

「あぁ・・・ダメぇ・・・」

蒼い海、茜色の空、白い外壁、遥か見える木々の緑・・・
それらの見事なコントラストが、僕の野性を呼び覚ましたのだろうか?
僕は天然に囲まれて野獣に変身していた。

夜の帳(とばり)が静かに降りる頃、その肌寒さにようやく気づいて、奈々子を抱えて部屋に入った。
部屋の灯りは早くも消えて、外の暗闇と同化してしまった。

牛窓・・・もう奈々子とは行けないけど、いつの日かまた行ってみたい素敵なリゾート地である。











奈々子







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