エッセイ『青い一夜』





 僕がまだ学生だった頃の話だ。
 その女とは春先の湿っぽくて、暗い空気の中のそのバーで知り合った。
 青が好きらしい。
 青いハイヒール、青いストッキング、青いスカートとオールブルーで決めている。
 おおっと、バッグまでが青だ。
 一人で退屈そうにウィスキーを飲んでいたから、バーボンを一杯おごってあげた。
 こんな時間に、このバーにいる女は男の温もりが欲しくて来ているはずだ。
 簡単に落ちる。
 一時間後に僕と女はベットにいた。
 女は思ったより慣れている。

 女には小娘のような躊躇がないのが楽だ。
 お互いに一夜限りのパートナーが欲しい。それだけだ。
 誰にでも抱きたい夜、抱かれたい夜はあるものだ。
 女は上着を脱ぐと、透かし模様の上品な青いブラがはちきれそうに前に出っ張っている。
 それに対してウエストは女の曲線を見事に描き、青いショーツにつながっている。
 それもビキニショーツ。足が長いためか、映えて見える。
 モデルでも十分通用しそうだ。

 ディオールらしき香りをプンとさせるのが、上品な女の汗とよく似合う。
 女が動くと、香りの形も動いた。
 こんないい女を抱けるとは今日は運がいい。
 吸いつきそうな柔らかな肌で僕の愛撫を静かに受けていたが、すぐに向きを変えた。
 僕の上に乗って来た。
 髪を片手でさらりと流すと、僕の道具に口を付けた。
 きれいなAV女優のようだ。僕は思わず嘘じゃないかと思ってしまった。
 ちゅうちゅうと音を立てて僕を吸い続ける。
 そんな最中でも上目使いで僕を時々眺めて様子を伺っている。
 僕は女の髪を撫でながら、されるままになっていた。
 吸われる度に、身体中を男の悦びが走り始めた。
 我慢しないと叫んでしまいそうなくらいだ。
 しかし身体は我慢できない。頂点があっと言う間に来た。
「うう~!」僕はうめいた。
 そして、口の中で大量に射精した。

 女はほっとするように言う。

「良かったわあ。あなたのおいしかったわ」

 そしてつけ加えた。

「いつも噛みきりたくなるのよ。今日は食べなくて良かったわ」

 口の中のものをごくりと飲み干すと、いかにも淡々と言う。

「醤油をつけるか、油で炒めるととすごくおいしいって知っている?」

 女はさらに加えた。

「経験で言うと私の好みはレアよ」

 僕は完全に萎えた。

 女はまだ役に立たない僕をすぐに求めてきた。

「ぼうや、もうおねんねの時間?」

 女がさらりと言ってのける。

 腰を振りながら、青いビキニショーツをじわじわ脱ぐ。
 僕を誘惑しようとする。

「欲しくてたまらないのよ」

 青いマニキュアが女を探る。
 僕は思わず見た。
 完全に女の指が身体の中に隠れた。
 でも目は怖い。
 笑っていない。
 ここでひるみたくない。
 ようやく男の権威を取り戻すと、僕は身体を重ねた。
 女は僕をぎゅっと締め付ける。

「ちゃんと入れている?」

 完全に入っているはずだ。
 僕は思いっきりついた。

 しかし「小指でごまかしていない?」と女はさらに締め付けてきた。
 僕は決してスモールサイズではない。
 むしろ相当大きい方だという自信があった。
 なのに何という侮辱……くく、腹の立つ……
 さらに腰を使ってきた。
 女の指が背に回り、そしてアヌスを刺激してきた。

(だめだ、あぁっ、いく~~!)

 僕は放った。

「ぼうや、もうおしまい?」

 女は冷ややかに言うと、ベットを出た。

 女は二十七才くらいだったろうか。
 僕は晩熟ではあったが、その頃は晩熟を挽回するかのように経験を重ねていた。
 だがそんな経験など何の意味も持たない事を思い知らされた。
 逆に言うなら、この女性に全て委ねていれば良かった。

 やがて第三ラウンドが始まった。
 とは言っても、第一ラウンドは彼女の口の中で。

 第二ラウンドは、正常位だが、アヌスを刺激されて発したもの。
 もっとまともにしたい……

 女はベッドから降りて、ベッドに肘を付きバックの姿勢になった。
 尻だけを突き出した格好が何と嫌らしく刺激的だろうか。

 僕は、指で彼女のスリットをこねくり回したとき、彼女の尻も同方向に廻り出した。
 そしてやっとのことで彼女の口から、呻き声が漏れ始めた。
 程よく濡れたのを見計らって、三度肥大した男のモノを突き立てた。
 彼女の肉襞が僕のモノをグングンと吸い込む。
 突いた、激しく突いた。めった突きした。
 テクニックと言う言葉などどこにもなかった。
 荒々しく本能のままにただ真一文字に突くだけの野獣と化していた。
 先ほど二回も発射しているせいで、少し持ちそうだ。
 それでも約五分程度でイッテしまった。
 ああ、情けない……

「ぼうや、早いよ、もっと持たせなきゃ」

 ニヤリと笑った。
 さらに彼女は言った。

「この続きはお風呂でしようか?一晩に何回できるか楽しみだわ」

 僕はこの時、嬉しさよりも何か背筋に寒いものが走ったのを覚えている。
 そう、それは青い花火が頭の中で弾けたような気持ちになった。























エッセイ集

トップページ




inserted by FC2 system